今日、東京のソフトバンク本社は忙しい1日になった。フィンランドのモバイル向けゲーム・メーカー、Supercellの株式を売却することは事前に予想されていたが、ソフトバンク本社の代表取締役、COOを務めるニケシュ・アローラが退任することが発表されたのは驚きだった。アローラは孫正義によってソフトバンクのCEOの後継者に選ばれたものと考えられてきた。
ソフトバンクに加わる以前、Googleの上級副社長を務めた経歴を持ち、 昨年はサンフランシスコで開催されたTechCrunch Disruptで講演したアローラだが、今年に入ってからは匿名のソフトバンク株主グループからの圧力にさらされていた。このグループは「アローラは報酬が高額すぎ、パフォーマンスが低すぎる」としてアローラの解任を求める書簡をソフトバンクに送っていた。
こうした反対はあったものの、アローラの地位は安泰と思われた。昨日、ソフトバンクはアローラについて内部調査を行った結果、株主グループの書簡に述べられた批判には「根拠が認められなかった」と発表していた。 こうした信任を得たにも関わらず、ソフトバンクの役職から退くことが発表された。アローラはインド生まれで、年俸7300万ドル、おそらくは世界でも最高給の企業トップの1人と報じられていた。
ソフトバンクは短い声明を出し、CEO交代の時期に関してファウンダー、現CEOの孫正義とアローラの間で意見の相違があったことが退任の理由であると示唆した。〔日本版:以下は日本文の声明(PDF)から引用〕
当社代表取締役社長の孫正義は、アローラを有力な自身の後継者候補として考えていましたが、数多くのテーマに取り組む中で、当面は当社グループのトップとして指揮を執り続ける意向です。一方で、アローラは、数年のうちに孫に代わって当社グループのトップとして指揮を執りたいとの意向でした。こうした両者の時間軸のずれを踏まえ、アローラは当社の代表取締役及び取締役を任期満了に伴い退任し、次のステップに進むこととなりました。
アローラはソフトバンクのインドにおける大型投資を主導していたようだ。ソフトバンクははOla、Snapdeal、OYO Roomsなどのインド企業に加えて、アメリカのスタートアップにも投資している。こうした投資の責任者であったアローラが退任した後、ソフトバンクの投資戦略がどうなるのか注目される。
最近ソフトバンクはいろいろなな面で転換点を迎えている。Supercellの株式を86億ドル前後で売却、これに加えて別のゲーム企業、ガンホー・オンライン・エンターテインメント株式の大半も売却した。さらに史上初となったAlibaba株式の売却では79億ドルを手にしている。これらの株式売却は孫正義の“SoftBank 2.0”というビジョンに基づくもので、売却代金の大半は既存の負債の返済に充てられるらしい。同グループの負債は3月末日の時点で最高11兆9000億円(1070億ドル)に上っている。負債がこれほど巨額になったのはアメリカのモバイル・キャリヤ、Sprintの買収費用に関連があるとみられる。
今回、アローラはここ2年ほどの行動から大きく方向を変えた。アローラはソフトバンクグループの取締役に就任したのを機に4億8300万ドルのソフトバンク株式を「個人的な賭け」として購入している。
なおアローラ自身がツイートで若干の新たな情報を確認している。それによると、孫正義が(おそらくは)当初アローラとの間で合意した時点よりも長くCEOを務めようとするようになったことが退任の引き金だったもようだ。
マサはさらに5-10年間CEOを続ける。(私はその意思を)尊重する。多くを学べた。詳細な調査の結果、取締役会からクリーンと判定された。新しい段階に進む時期だ。―ニケシュ・アローラ
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)