シリコンバレー御用達のPhilzコーヒー、1500万ドルを調達して全国展開へ


多くのコーヒーショップが自分たちは〈単なる〉コーヒーショップではないと言いたがる。しかし、実際そう言えるのがPhilz Coffeeだ。

Philzは、今やその生地サンフランシスコ・ベイエリアで一種の名物となり、IT業界の多くの製品や提携が、この店の強めのコーヒーを挟んで誕生している。Product Huntのファウンダー、Ryan Hooverによると、サンフランシスコ・シビックセンター付近のPhilzは、彼が会社を立ち上げていた頃の事実上のオフィスだった(そして今も毎日何杯かPhilzを飲んでいる)。Startup GrindカンファレンスにはPhilzが常に待機していて、舞台裏ではPhilzのバリスタが登壇者のためにカスタムメイドの一杯を作る。PhilzはFacebookのメンロパーク本社にまであり、Mark Zuckerbergがリクエストしたと言われている。

このたびPhilzは、その体験をベイエリアのはるか以遠へと拡大すべく、豊富な資金を手にした。Philzは新たに1500万ドルのラウンドを完了したことをTechCrunchに伝えた。

同社のシリーズBとなるこのラウンドは、Summit Partnersのリードで行われ、これでPhilzの調達総額は3000万ドルを超えた。同ラウンドには、他にも華々しい顔ぶれのエンジェル投資家が参加した ― Cowboy Ventures、Crunchfund(情報開示:設立したのはTechCrunchファウンダーのMichael Arrington)、Yahooの会長 Maynard Webb、Facebookの幹部 Mike Schroepfer、元AppleおよびJ.C. Penneyの幹部 Ron Johnson、俳優のジョナ・ヒル、ローレンス・ベンダー、およびジェイミー・ケネディー、ラッパー兼投資家のスヌープ・ドッグらだ。

今週のインタビューで、ファウンダー Phil Jaberの息子で27歳のCEO、Jacob Jaberは本誌に、新たな資金の一部は会社の地理的拡大に使うと語った。Philzは現在サンフランシスコ・ベイエリアの18店舗の他ロサンゼルスにも支店を持つが、州外への進出を計画しており、2015年末までには全米の10箇所以上に開店する予定だ。

Philzにとってその種の拡張は、新しい店を作るだけの話だ。Philzの描く大きな部分は、そのユニークな体験にある。コーヒーは一杯ずつバリスタが手でいれ、客の好みに合わせてミルクや砂糖を加えると、「一口飲んでみて、完璧かどうか教えてください」と言いながらカップを手渡す。Philzのコーヒーは決して最も安くも速くもないが、最も親しみがあり、最もパーソナライズされている。この手のものをスケーリングすることは、ただ山ほど新しい不動産を見つけるのとは訳が違う。

Jaberは挑戦意欲満々だ ― そして多くのIT企業と同じく、成功する成長の鍵は従業員の幸せと自信にあると考えている。「私たちは何か特別なものを持っていると感じています。そしてこの体験をもっと多くの人たちに質を落とすことなく広めたいのです」とJaberは言った。「私はこれを、『スケーラビリティー』ではなく『シェアラビリティー』と呼んでいます。それをやる方法は、会社で最も重要なのはカウンターの後にいる人々と、各店舗を任された店長であると認識することです。私たちは彼らに大きな投資を行い、当事者意識を持つカルチャーを作っています」

その同じ流れで、Philzはビジネスメソッドを確立しており、Jaberが「Philz University」と呼ぶ新入社員やマネージャーのための教育と開発のための集中コースも持っている。「他人であるお客様の日々を良くしたければ、私たち自身が個人として良くなる必要があります。内側も外側もハッピーでなければなりません」とJaberは言う。「スタッフの多くが若く、20代か30代です。私たちは、それらの人たちがここで働いている時もその先も、人生をより充実させる手助けするチャンスを持っています。私たちは長い目でこれを考えています」。

コーヒーショップとしてはやや熱が入り過ぎていると感じるかもしれないが、会社はGoogleの新入社員向け “Noogler” プログラム等、IT業界の慣習にも耳を傾けている。おそらく将来は、元Philzスタッフであることによって、FacebookやGoogleやAppleの出身者がIT業界でしてきたのと同じように、小売や飲食サービス業界におけるある種の専門知識を伝達するようになるかもしれない。

間違いなく、Philz Coffeeには大きな野望があり、今それに見合った大きな資金を得た。何ヶ月か先、シリコンバレー以外の地で成長する姿を見るのが楽しみだ。

そして、通常私は企業が作ったビデオを貼るのは好きではないのだが、これはシェアする価値がある。そこではPhilzの黎明期がファウンダーのPhil Jaberによって語られていると共に、店の特徴である北カリフォルニアの雰囲気が醸しだされている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Philz Coffee、WiFi利用の顧客分析をプライバシー問題により中止

消費者のプライバシーを擁護する側と、広範囲のデータ収集による利益を推進する側との間で起きる争いでは、前者が勝った話を聞くことが多い。そして、昨晩サンフランシスコで起きたことは、まさにそれだった。べイエリアの有名コーヒーショップ、Philz Coffeeは、顧客や通行人の情報を、WiFi経由でEuclid Analytcsの技術を使って収集するのをやめると発表した。

一部のPhilz顧客は、ベイエリアのこの場所で行われている顧客分析について懸念を示していた。携帯電話やタブレットのWiFiをオンにした状態で、Philzに入るか店の前を通過すると、同カフェはEuclidの分析システム使ってそのデバイスを近隣の中で他のデバイスと区別することが可能だ。それがわかれば、店は他のデータと組み合わせて何らかの結果を導くことができる。例えば、店の近くや中にいた時間や、どこに立っていたかも。

TechCrunchのSarah Perezが、昨年1月に、このテクノロジーのしくみを解説している。

これまで小売店は、お客の来店退店をチェックするために、ドアの開閉チェッカーや、頭上からの光線ビーム、ビデオカメラなど、いろんな方法を使っていた。でもEuclidの考え方は違う。お客のスマートフォンのWiFi信号をパッシブに検出して、とくにそのスマホのMACアドレスを見る。MACアドレスは完全にユニークだから、客数を数えるとき重複カウントを防げる(MACアドレスから個人情報にさかのぼることは不可能)。また、同社との契約要件としてユーザであるお店はお客に、店内ポスターなどで、携帯のWiFi信号傍受をオプトアウトできることを、告知しなければならない。

この情報収集におけるプライバシーに関する最大の懸念は、ユニークなデバイスIDがリアルまたはオンラインの個人とひも付けされ、企業は人々がいつ何をするかを知り、広告のターゲティングに使う等利用を拡大する可能性があるからだ。

これは、この分野の数多くのサービスに対する正当な懸念だ。例えば、D-Linkはレストランやスモールビジネスが、顧客がFacebookアカウントでチェックインすることの引き換えに無料WiFiを提供できるルーターを販売している。

Euclidのリリース文(PDF)によると、同社の分析プラットフォームはデータを匿名化しており、様々な場所毎の一般的振舞いを見ることによって、サービスを向上することを目的としている。

Euclid CEO Will Smithは、San Francisco AppealのMax Cherneyに送った声明にこう書いている。

われわれもまた買い物客なので、店が買い物体験を最適化すると同時に、消費者としても誇れる優れた製品を作りたかった。このテクノロジーは、当初からプライバシーを念頭において開発したものであり、われわれが収集した情報から個人を特定することは一切できない。

Philzがこれほど早くEuclidを捨てたことは、小売分析分野への参入を考えている人々にとって警告となるだろう。データが匿名化されていたり水面化でスムーズに集められているというだけで、顧客が情報収集を拒絶しないと決めつけることはできない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook