Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day2日目のスタートアップ88社(8)

米国時間3月19日は、Y Combinatorが開催した、2019年冬クラスの2日間のDemo Day後半だった。1日目は85以上のスタートアップがステージに上がりピッチを行った。2日目も同様に多数のピッチが行われた。

以下に、2日目に発表した全社と、そのプレゼンテーションに対する私たちのメモを紹介する。

Y Combinator 2019年冬クラス、Demo Day 2日目のスタートアップ
・Part 1:パイオニアステージ(1)
・Part 2:パイオニアステージ(2)
・Part 3:パイオニアステージ(3)
・Part 4:パイオニアステージ(4)
・Part 5:ミッションステージ(1)
・Part 6:ミッションステージ(2)
・Part 7:ミッションステージ(3)
・Part 8:ミッションステージ(4)※この記事

ミッションステージ

AllSome
東南アジアのオンライン販売者のための仮想倉庫とフルフィルメントサービス。その仕組は以下のようなものだ。顧客は自らの在庫をAllSomeの倉庫に対して出荷する。そしてAllSomeは品質保証、保管、ラベリング、梱包および出荷を処理する。AllSomeの創業者は、同社の収益性は高いと述べている。

BearBuzz
BearBuzzは、インフルエンサーのための広告マーケットプレイスを構築している。これにより現在の面倒な交渉よりも、はるかに迅速にものごとを進めることができる。彼らは広告フォーマットを標準化しており、画像と音声認識を介してビデオ広告を自動的に検証することができる。チームは、これらのより迅速なコネクションを推進し、広告費用の25%を受け取ることで、より大きな売上を立てることを計画している。

Point
お得な報奨システムと優れたユーザーエクスペリエンスを備えたデビットカードを提供するデジタル銀行。同社は来月、バーチャルなデビットカードと当座預金口座で稼働を始める予定だ。

MyScoot
インドの都会に住むミレニアル世代が同社のプラットフォームを使ってホームイベントを開くことで、友人と出会える支援をしたいと考えている。ユーザーはサービスを検索し、イベントに出席するための支払いを行う。MyScootは、バックグラウンドチェック、ピアレビュー、および彼らが「社会的信頼スコアリングアルゴリズム」と呼んでいるものを通じて、参加者にとって安全なものであり続けるように努力している。彼らのアプリを通して1000以上の予約が行われてきた。ユーザーの60%が最初のイベントのあとでも再び利用している。

Memfault
組み込みハードウェア企業のエンジニア向けツールの開発者は、そのツールはモバイルエンジニア向けのツールと同じくらい優れていると言う。Memfaultは、デプロイ、モニター、そして解析に使用される。これまでのところ、彼らは4社の顧客から、毎月定期的に5500ドルの収益を上げている。

Board
住宅購入者が買いたい家を押さえられるように、全額現金オファーを行う住宅ローン会社。現金購入者は入札で勝つ確率が4倍高く、住宅ローンによる購入者と比較して物件の購入価格をしばしば何十万ドルも安く抑えることができる。彼らは世の中の80%を占める住宅ローンが必要な人々のための現金購入者となることを狙っている。人びとにそうした巨額なローンの承認を与えることで、ローンの2%を請求する。

Portal Entryways
車椅子利用者のためにドアを自動的に開き、通過するまでそれを開いたままにする。既存のアクセシビリティボタンの多くは手の届かない場所にあるか、またはあまりにもドアから遠すぎて役に立たない。Portalは利用者の電話にインストールされたアプリを使って、こうした既存のボタンを制御して(Portalによって変更されたハードウェアである)、実質的にそのボタンを押した効果を得ることができる。大学やショッピングモールのように、ドアがたくさんある公共の場所に最初は焦点を合わせている。TechCrunchでもPortal Entrywaysについて記事を書いている

Blueberry Medical
家庭に即座に医療を提供する、小児遠隔医療会社。コンスタントな連絡、小児科医との24時間365日の対話、自宅での検査キットなどを合計月8ドルで提供する。彼らは有料の消費者向けパイロットプログラムを終了したばかりで、直接患者と会わなくても84%の問題は解決することができたと述べている。彼らはERへの訪問回数を減らすために、保険会社と提携した。

Maitian.ai
次世代の自動販売機を開発している。それを使うことでホテルのミニバー冷蔵庫の記録が自動的に行われ、平均的な自動販売機よりはより親しみやすいやり方で食品を販売することも可能にする。ユーザーは自分のクレジットカードをスワイプして、自動販売機の扉を開き欲しいものを選ぶ。チームは東南アジアに焦点を当てており、2カ所でローンチを行った。

Emi Labs
人事部の担当者のために、低スキル労働者の採用プロセスを自動化する仮想アシスタントを開発している。このスタートアップはBurger KingとPwCを顧客として抱えているが、その市場規模は24億ドルと見積もられている。AIを使用して採用プロセスをパーソナライズすることで候補者の体験も向上させる。

Latchel
施設管理者のための保守プラットフォームを開発している。保守要求を受け付け、問題を解決するために請負業者を派遣することで施設管理者の時間を解放する。施設管理者に対して1施設あたり1カ月で最大10ドルを課金する。また請負業者が仕事を引き受けた際には10%の紹介料を請求する。

Alpaca
従来のソフトウェアに代わる無料株取引のためのAPIを開発している。創業者たちによれば、Alpacaの手数料なしの株取引APIは、開発者を理解している最初で唯一のブローカーディーラーである。そして顧客はリアルタイムマーケットデータを無料で扱うシステムを開発し取引を行うことができる。

Y Combinatorの2019年冬のDemo Day初日の有望スタートアップ10社

[原文へ]

(翻訳:sako)

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留守中の家をチェックしてくれる、簡単セキュリティシステムのPoint

家を空けている間、家の中のすべてのものについて、盗まれていないと自信を持って言える人はどのくらいいるだろうか。家の中を荒らされても気づかない人も多いのではなかろうか。と、そんな「気づかない人」のためのプロダクトがKickstarterキャンペーン中だ。自信のない人はぜひPointをチェックしてみて欲しい。

Pointは基本的に、大きな音を検知するためのセンサーだ。ガラスが割れる音やドアが開く音を検知することができる。また動きを検知することもできるようになっている。何らかのアクションを検知したらオーナーに通知を送ることができる。通知を見たオーナーは、秘密裏に配置しておいた攻撃ドローンを出撃させることもできるし、あるいは地元の警察に連絡をするというようなアクションをとることができる。

製作したのはNils Mattisson、Fredrik Ahlberg、Marcus LjungbladおよびMartin Lööfだ。もともとはスウェーデン発だが、現在はサンフランシスコを拠点としている。MattissonはAppleのExploratory Design部門で働いていた経験ももつ人物だ。

「こうしたデバイスが欲しいという、自分たちの欲求に基づいて製作しました。外出時にも家内の安全を確認したいと思ったのです。これまではカメラと、難しげなセキュリティシステムを配置するのが一般的でした。しかしそこまでしなくても、効果的な対策を講じることができるはずだと考えたのです」とMattissonは言っている。

ちなみに、デバイスで検知した音は、デバイス内部でのみ用いられ、すなわちクラウドにアップロードされることはないとのこと。ネットワーク経由で送られるのは通知のみであり、検出したデータが送られることはないのだとのことだ。

接続はWiFi経由で行われ、バッテリー持続時間は1年間だ。

「Pointは、目立たず、シンプルであることを心がけました。テクノロジーが周囲の環境にとけこみ、そしてでしゃばらないでいるというのが、将来に向けての方向性であると考えているからです。世の中にはスマートを名乗るデバイスがたくさんありますが、多くは検知したデータをそのままネットワークにフィードするという、スマートとは程遠い振る舞いをするデバイスが多いように見受けます」とMattissonは言っている。そうした中でスマートであろうと心がけるPointは、温度計機能ももち、また外部から内部侵入者に向けて音声を伝えるための機能ももっている。

ホームセキュリティ関係は、まさに旬とでもいうべき状況ではある。ScoutSimplisafeの名前を思い起こす人も多いことだろう。しかしこのPointは69ドルで、Kickstarterキャンペーンはすでに目標額を調達している。あとで追加すべきセンサーというのがあるわけでもない。外見もなかなかクールだ。家の中に貴重な唐代の壺があったにしても、安全に、心配なく過ごせそうな気がする。

原文へ

(翻訳:Maeda, H


店舗にチェックインすればポイントが貯まる「楽天チェック」はO2Oの本命となるか

超音波を利用した来店検知ポイントアプリ「スマポ」を提供するスポットライト。2013年10月に楽天が買収して完全子会社となった同社が、4月2日より楽天と連携した来店ポイントアプリ「楽天チェック」の提供を開始した。

楽天チェックの仕組みはスマポと同様で、超音波を発生させる専用装置を店舗に設置、アプリを立ち上げたスマートフォンのマイクでその超音波を認識すればチェックインが完了。楽天スーパーポイントを獲得できるというもの。ユーザーは楽天IDを登録して、SMSによる認証をすればすぐにサービスを利用できる。なお装置はスマポと兼用できるそうで、スマポと楽天チェックの両方を導入する店舗は、1つの装置を設置すればよいとのこと。

店舗側では、チェックイン時のメッセージやクーポンの提供、ユーザーが帰宅したあとのメッセージ送付などが可能。性別や年齢などを限定してポイントを提供できる。

サービス開始時点で、パルコや時計専門チェーンのザ・クロックハウス、コンビニ・食品販売のポプラをはじめとして31社61ブランド、全国1112店舗の導入が決まっている。2015年までに累計1億人の送客を目指しており、「そこから逆算して数千〜1万店舗に使ってもらいたい」とスポットライト代表取締役の柴田陽氏は語る。

楽天の会員は、現在約9000万人。これは日本のネットユーザーの93%に当たる数字だ。先行する共通ポイントサービスとしてTポイントPontaがあるものの、「ネットユーザーをオフラインに連れてくる」という点で楽天スーパーポイントがどれだけ有効なのかに注目したい。

検知方法の正確さ、スマポと楽天チェックの関係性について

ところで今回の発表で僕は2つの疑問を持った。1つめは、超音波を使った来店検知の正確さについて。そして2つめは、スマポと楽天チェックの関係性についてだ。

まず1つめだが、超音波を使った来店検知の仕組みの元祖である米Shopkickは、実は2014年に入ってから、Bluetooth LEを利用したiBeaconの試験的な導入を開始している。TechCrunchの記事では、コストや導入の手軽さについて触れられているが、同日の会見では「超音波で認識できるのは6〜7割。精度の面で問題があるのではないか」という質問がなされた。

僕は創業期からスポットライトに取材していることもあって、店頭でのデモなども体験しているが、デモなので超音波を発する装置がどこにあるかを知った状態でチェックインをしていた。そのため精度の問題を感じたことはなかった。だが本当に超音波を拾えずにチェックインできないということが起きているのであれば、別に超音波を使う必要などない。

この点について、柴田氏は「正しく使った場合、Wi-FiやBluetooth(iBeacon)と比べて安定している認識」と説明。さらに、超音波方式ににこだわることなく、普及率やコストを考慮して技術を取り入れる考えを示した。

また2つめの疑問である、スマポと楽天チェックの関係について。これについてはスポットライトでは今後も2つのソリューションを並行して提供していくのだという。

僕が個別に柴田氏に聞いたところ、両者は「補完関係にある」のだという。自社で強いポイントを持っている場合、提携各社のポイントに交換できるスマポが有効だ。一方で楽天チェックは楽天スーパーポイントでしか使えないので、「楽天ユーザーを集客する」という集客に関する割り切りが必要になってくる。

セレクトショップをはじめとした「ブランド重視」の企業にとっては、楽天スーパーポイントに縛られることについて、賛否両論があるのだという。そのためにこそスマポがあるわけで、スポットライトとしては選択肢をユーザーに提示できる強みがある。装置が兼用できるため、スマポと楽天チェックを同時に利用するといった店舗もあるようだ。

販促会議の調査によると、店舗で利用できるクーポンや店舗情報を取得できる、いわゆる「O2O」関連アプリの利用率は、2013年には19%だったが、2014年に36%にまで増えているという結果が出ているそうだ。そんな中でいかに簡単にアプリが使えるのか、サービス自体が認識されるのかは課題だ。楽天スーパーポイントは果たしてオフラインでもその影響を発揮できるのだろうか。