テイラー効果と呼ぶべきだろうか? 著名アーティストが音楽ストリーミングの現状を厳しく批判する事態が続いている。Prince はSpotify、Rdio、Deezerから楽曲を引き上げることに決めた。この記事を書いている時点ではDeezerではまだストリーミングが配信されているが、われわれの取材に対して「Princeから配信停止の通告を受けており、停止の手続き中だ」と確認した。
ただしGoogle Music All AccessとTidalではストリーミングが続いている。これはハイレゾのストリーミング・サービスで、今年3月にラッパーのJay-ZとSoftbank他の投資家によって買収された。
どうやらPrinceは無料の音楽ストリーミングから楽曲を引き上げることにしたようだ。
SpotifyはPrinceのアーティスト・ページに「Princeのレコード・レーベルはすべてのストリーミング・サービスに対してカタログの削除を求めてきた。われわれはこの要請に従う。できるだけ早い時期にPrinceの楽曲のストリーミングが再開できることを願っている」と書き込んだ。Rdioもわれわれの取材に対して「要請にしたがって楽曲を削除した」と確認した(RdioのPrinceのページは空白)。
Googleにも取材したが、「現在までにそのような通告は受けていないのでストリーミングを継続中だ」という。
われわれの問い合わせに対してTidalからは回答がない(Princeからもコメントはない)。
一方、Apple MusicはBeatlesと並んでPrinceは始めから参加していない。
TwitterでPrinceをフォローしていたファンはこういう事態になることを予期していたようだ。
6月26日にPrinceはテイラー・スウィフトは新しいPrinceだというThe Daily Beastの記事をリツイートしていた。この記事はテイラーに先立ってPrinceがメジャー・レーベルを始めとする音楽産業に対して抗議する活動を続けていることを詳しく報じた。Spotifyなどのストリーミング・サービスがアーティストに対してアンフェアであるというPrinceのコメントが記事に引用されたが、Prince自身がその部分をリツイートした。
「レコード・レーベルはSpotifyの20%の大株主だ。音楽ストリーミングというのはレーベルにとっては楽曲のセールスを補完する二重取りであるのに対して、アーティストに対する支払は1ドルの売上に対して数セントという現状を1ドルに対して1セントの何分の1に引き下げるという改悪となっている」とPrinceは批判している。 Spotifyはアーティストに対する支払額を定期的に発表しているが、全員が満足しているわけではないようだ。
Princeのワーナー・ミュージックに対する以前の戦いはThe Daily Beastの記事にも詳しく報じられているが、Princeは単なる金銭的条件以上に、アーティストは作品が聴き手に届けられるプロセス全体に強い権限を持つべきだと主張し、活動してきた。Princeは司法省がデジタル音楽のライセンスに関する条項を見直しているBillboardの記事もリツイートしている。
Prince他のデジタル・サービスにおけるアーティストの権利も強く主張している。昨年11月にPrinceはTwitterとFacebookのアカウントを停止し、YouTubeから公式トラックの大部分を引き上げた。〔現在はTwitterに復帰している〕この点から考えると、Google Music All Accessには単に取り下げ通告が届くのが遅れているだけではないかと思う。
これまでもPrinceは海賊版サービスや海賊版を拡散するユーザーに対して厳しい態度を取ってきた。2014年1月には、コンサートを録音した海賊版に対するリンクを公開した22人のファンに対しそれぞれ100万ドルの損害賠償訴訟を起こしている。2010年にはデジタル音楽産業を手厳しく批判するインタビューがイギリスのDaily Mirrorに掲載された(一読の価値あり)。
【後略】
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)