不動産代理店の住宅販売案件をGmailのアシスタントで顧客ごとに管理するAmitreeが$7Mを新たに調達

リアルエステートテックのスタートアップAmitreeは、不動産代理店の仕事を楽にして、さらにその結果として、そのお店を利用する住宅購入者の人生をもっと楽にすることをねらっている。同社は、そのためのプロダクトFolioのためにこのほど、700万ドルを調達した。

Amitreeはここまで来るために、長くて奇妙な旅路を経験した。同社が最初に(2013年)ローンチしたのは、住宅購入者の権原移転手続きを一歩々々ガイドする消費者向けのツールだった。そのClosing Timeと名付けたプロダクトは、消費者が家の購入の完了までにやるべきすべてのことを順番に羅列した、トゥドゥリスト(to-do list)のようなものだった。

でも、誰もが知ってるように、人が家を買うサイクルは短くても10年に一度ぐらいだ。だからそのプロダクトは、消費者ビジネスに不可欠なリピーターを獲得できない。そこでAmitreeは振り出しに戻り、不動産代理店をターゲットとするFolioという新しいプロダクトを作った。

AmitreeのCEO Jonathan Aizenは曰く、“消費者が良質な住宅購入経験を得るために何よりも重要なのは、不動産代理店が有能であることだ”。しかし少なくともこれまでは、不動産市場におけるイノベーションといえばもっぱら、代理店とバイヤーの関係をディスラプトすることだった。それに対してAmitreeがねらうのは、不動産代理店の仕事を楽にするツールを作ることだ。

住宅購入者の場合と同じく不動産代理店にも、お客を商談の完結に向けて一歩々々導いていくためのトゥドゥリストがある。ただし住宅購入者と違って代理店は多くの場合、複数の商談を抱えている。顧客ごとの条件や商談の進捗状況などがさまざまに異なる購入案件を、ひとつひとつ正しく進めることは、ものすごく難しい仕事である。

そこでAmitreeのFolioが役に立つ。FolioはGoogle Chromeのエクステンションで、不動産代理店のメールアカウントに接続してスマートアシスタントになり、大量のメールを処理して、彼らが管理しているひとつひとつの商談が今どうなってるかを理解する手助けをする。

このツールは商談ごとにフォルダを作って、代理店のワークフロー管理を助ける。ひとつのフォルダーの中に、そのお客さんとのメールのやり取り、文書のファイル、関係先のコンタクト情報などをすべて入れておく。これにより、お客さんごとに毎回いちいち関連文書を探す手間がなくなる。また、商談の次の段階へ行くためにはどんなリマインダーをメールすべきかも、すぐに分かる。

約1年前に立ち上げたFolioは、不動産業界に根付きつつある。このChromeエクステンションは3万回あまりダウンロードされ、これまでに20万件あまりの商談を管理した。Amitreeの推計では、これはアメリカの不動産商談の総件数の約5%に相当する。

この成長ペースを維持したい同社は、Vertical Venture Partnersがリードするラウンドで710万ドルを調達した。これにはAccel PartnersやSeven Peaks Venturesなど既存の投資家も参加し、同社の総調達額は1300万ドルになった。

Aizenによると、今回得た資金の主な用途は、エンジニアリングとデータサイエンス方面の人材獲得だ。最初の三年半は7名の社員でやってきた同社も、おかげで今ではその倍になっている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

スマートロックを切り口に不動産活用サービスを展開するライナフ、総額3.9億円を資金調達

ライナフ代表取締役の滝沢潔氏

ライナフ代表取締役の滝沢潔氏

スマートロックを利用した不動産活用サービスを提供するライナフは11月4日、三菱地所、DGインキュベーション、西武しんきんキャピタル、他を引受先とする総額3.9億円の資金調達を実施したことを発表した。設立からちょうど2年を迎えたライナフは、今回の調達を元にウェブサービスやハードウェアの開発と、人材採用の強化を図る。

自らも不動産投資を手がけるライナフ代表取締役の滝沢潔氏は、「保有する物件で空き室をいかに減らすかで頭を悩ませたこともある」と言い、そうした経験から、空き室活用を支援するビジネスを検討し始めた。空き室・空きスペースの活用を促すサービスとして真っ先に思い浮かぶのは「AirBnB」や「スペースマーケット」といったマッチングサービスだが、滝沢氏は「大量の物件を抱える不動産の保有者は、実際にはほとんどこうしたサービスには登録していない」という。では、大量の不動産を活用するために必要なソリューションとは何か。滝沢氏が目を付けたのは、空き部屋や空きスペースの無人運用を可能とする、スマートロックだった。

NinjaLock

サムターン錠に装着されたNinjaLock。

ライナフでは、サムターン錠の上からかぶせることで、アプリをインストールしたスマホやタブレットとBluetoothで通信して錠の開閉ができるスマートロック「NinjaLock」を開発。2015年6月には量産品をヨドバシカメラで販売開始した。2016年8月には、建物入口のオートロックの自動ドアに設置することで、遠隔開錠やアプリでの開錠が可能なIoT製品「NinjaEntrance」もリリースしている。

だが、ライナフの収益の本命は、スマートロックなどのIoTハードウェアではない。「IoT製品単体での収益化は、製品を動かすために稼働し続けるサーバーのランニングコストを考えると難しい。ウェブサービスとの組み合わせ、不動産活用のためのサービスとのワンパッケージ化によって、ハードの利用料としてではなくサービスの利用料としてなら、ある程度の金額を払ってもらえるようになり、ビジネスとして成り立つ」(滝沢氏)。

スマート内覧の鍵操作画面

スマート内覧の操作画面。

2016年2月、前回のライナフの調達発表の際、同時に発表された「スマート内覧」は、NinjaLockを利用した不動産流通を促すためのサービスパッケージのひとつ。物件の内覧希望者がウェブで内覧日時を予約しておけば、スマホや携帯電話で物件の開錠ができるため、不動産管理会社や仲介業者が同行することなく“セルフ内覧”が可能なサービスだ。室内のタブレットとスマートロックがBluetoothで通信しており、訪れた人はスマホのブラウザ経由か、音声通話の自動ガイダンスに従ってプッシュトーンで開錠する。音声通話による開錠は、仲介業者の間でまだまだスマホが普及していないことに配慮したものという。室内のタブレットのアプリは、訪問者に物件の詳しい情報を提供するほか、管理会社から室内を確認するために写真を撮影したり、訪問者が管理会社に質問をするための通話や仮申し込みにも利用できる。累計導入室数は100室を超え、2016年度のグッドデザイン賞をソフトウェア・サービス・システムの分野で受賞した。「室内タブレットには今後1年以内に、AIコンシェルジュも搭載していく」と滝沢氏は言う。

室内タブレットに表示されるウェルカム画面

スマート内覧の室内タブレットに表示されるウェルカム画面。

訪問した物件の情報もタブレットで確認できる

訪問した物件の情報も室内タブレットで確認できる。

また、住友不動産ベルサールと共同で開発し、2016年7月にリリースされた「スマート会議室」は、やはりNinjaLockを活用した、無人で貸会議室の運営が可能なシステム。スマート内覧と同様、部屋と日時を選んでウェブで予約し、予定日時になったら部屋をスマホなどで開錠して利用する。こちらは、そのまま決済まで完了できる。引き合いも増えているそうで、今年度内に導入100室突破を予定。今後、清掃手配や仕出し弁当の注文、備品レンタルなど、関連する付加価値の高いサービスを提供していくという。

スマート会議室の操作画面

スマート会議室の操作画面。

「空き室・空きスペース活用の場面は不動産流通の場面より利用頻度も高く、今後目を向けていきたいジャンル」という滝沢氏。賃貸物件としての空き室についても、内覧などがない時間帯に時間貸しができるように、とスマート内覧とスマート会議室が融合したサービスも目論んでいるそうだ。

「不動産を活用するためのテクノロジー」「不動産を活用するためのサービス」と何度となく口にした滝沢氏は、「物件オーナーやユーザー、業界それぞれの目線で見て、売れると分かっているものができたから増資した。これで営業や広告、マーケティングを強化すれば絶対に伸びる」と自信を持つ。「不動産の分野はIT化が進んでいなかった。FinTechが盛り上がって、そろそろ一段落しそうな金融の分野よりかなり遅れてはいるが、投資を考えたときに二大資産として挙がるのは、金融と不動産。FinTechと違って不動産テック(Real Estate Tech)はRTechだかReTechだか、まだ名前も定まっていないような状況だけれども、不動産テック業界は必ず盛り上がると思っている。もっと盛り上げていきたいし、新しいベンチャーもどんどん出てきてほしい」(滝沢氏)