物流・輸送のRyderが自動運転トラックEmbarkと物流ネットワークを構築

サプライチェーンとフリートマネジメントのソリューション企業であるRyder(ライダー)が、またしても自動運転トラックによる物流企業と提携することになった。同社は現地時間9月16日、自動運転トラックを開発するEmbark(エンバーク)が所有・運営する、最大100カ所の中継地点の全国ネットワーク立ち上げを支援する計画を発表した。

Ryderが公にしている自動運転トラック企業との提携としては3番目となる。最近では、Waymo Viaの自動運転トラック事業の規模拡大を支援するため、車両のメンテナンスと管理の標準化を支援する計画を発表した。また、TuSimpleと共同で、自社施設をTuSimpleのターミナルとして活用している

「私たちは最先端を走っており、自動運転車が将来の物流において果たす非常に重要な役割をを深く理解し始めたところです。したがって、できるだけ早い段階で参入し、その技術で市場を支配しつつある企業と仕事を始めたいと思っています」とRyderの新製品イノベーション担当EVPであるKaren Jones(カレン・ジョーンズ)氏はTechCrunchに語った。

同社はKodiak、Aurora、Plusといった他の自動運転車の企業と協議はしているものの、ジョーンズ氏によれば、取引の予定はないと述べた。同氏によると、同社は、既存の提携によって得られるさまざまな事例から学び、成長するとともに、同社が早く市場に進出するため、複製可能な中継ハブモデルを構築したいと考えている。

「この技術を前進させるにあたり、どのようにメンテナンスを行い、サービスを提供し、運用するかについて、わからないことが未だに多くあります」とジョーンズ氏は話す。「Ryderは、メンテナンスのための広大な施設を保有しており、さらにサプライチェーンやロジスティクスのビジネスも展開しているため、提携相手として当然に適していると思います。私たちは、こうした施設がどのように機能するのか、また、大きな施設への配送のために車両を出し入れする際にどれほど複雑になるのかを熟知している本物のオペレーターです」。

Embarkとの提携の一環として、Ryderはヤードオペレーション、メンテナンス、フリートマネジメントを提供する。また、Embarkが戦略的に配置している中継地点のネットワークについても助言する。中継地点では、ドライバーレスの長距離トラックからドライバーが運転するトラックに貨物を移し、ファーストマイルとラストマイルの配送を行う。

「Ryderは、Embarkがそうした施設で何が必要かを理解する支援を行い、建設や用地探索を担うEmbarkのサードパーティーパートナーと協力しています」とジョーンズ氏はいう。まずは、カリフォルニア州、アリゾナ州、テキサス州、ジョージア州、テネシー州、フロリダ州の主要な貨物市場にある施設を選び、2024年の商業展開に向け、来年早々にもEmbarkがオペレーションを開始する予定だ。

画像クレジット:Embark

自動運転車企業がサンベルト地域をオペレーション開始の地に選ぶのは、雪やみぞれなどの悪天候をほぼ考慮に入れる必要がなく、テストに最適な環境だからだ。だが、EmbarkとRyderは今後5年間で、不動産事業者のネットワークと協力して、Embarkの中継地点を国内に100カ所開設することを目指している。

Embarkは現在、HPやバドワイザーのメーカーであるAB inBevなどの企業の他、Knight Swift Transportation、Werner Enterprisesなど「米国のトップ25のトラック輸送会社」の貨物を輸送していると、CEOのAlex Rodrigues(アレックス・ロドリゲス)氏は話す。同社は最近、SPACを利用した上場計画を発表した

ロドリゲス氏によると、Embarkの現在の貨物輸送会社との提携は、試験的なものか、将来立ち上げる小規模なものだという。同社は現在、16台のトラックを保有しており、ハイウェイを走行する際には、万一に備えて人間のセーフティーオペレーターを運転席に配置している。通常は、自動運転車が未知の事態に遭遇しても、オペレーターが交代する必要はない。

ハイウェイでの運行は、中継ハブのネットワークをオフハイウェイに構築することを意味する。これは、規模拡大に多くの資本と時間を要するものの、不可欠だと言えるものだ。それに比べてTuSimpleは、Embarkのように新しいターミナルを建設するのではなく、既存のRyderの拠点を利用し、TuSimpleのターミナルとして使えるように改修した。Waymo Viaも独自のハブを構築している。Ryderの車両メンテナンス、検査、ロードサイド・アシスタンスは、Waymoの自動運転トラック運送部門がこれらの拠点を拡張し、車両の稼働率と信頼性を最大化するのに役立つ。

Ryderは、このようにさまざまなケースで自社の多様な能力を提供しながら、物流にとどまらない、自動運転分野における自社の可能性を探っている。ジョーンズ氏は、いつか顧客に代わり自動運転車を運行することが意味をなすのであれば、自動運転車の運行を行う可能性もあると話した。また、ファーストマイルとラストマイルの配送サービスにも力を入れると語った。

「Ryderは、自動運転車分野の進化に合わせ、さまざまな役割を果たすことができます。しかし、この分野への最初の一歩は、サービスを提供し、技術やハブを運営するために必要なことを理解することです」とジョーンズ氏は述べた。

画像クレジット:Ryder

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

物流とトラックレンタルの巨人Ryderがベンチャーキャピタル事業を立ち上げ

フロリダを拠点とする海運、物流、トラックレンタル会社のRyder System(ライダーシステム)が5000万ドル(約53億円)のベンチャーキャピタルファンドを立ち上げた。これは戦略的には奇妙な動きのように見えるかもしれないが、実際のところは約3年間の投資活動の集大成だ。

Ryderが独自のベンチャーファンドを創設する動きは、新型コロナウイルスの蔓延をスタートアップ投資を始める機会として利用する米国企業の間でもトレンドとなっている。多くの人が仕事を見つけるのに苦労しているにもかかわらずだ。

同社の幹部によると、これはRyderのような企業にとって不可欠なものだという。同社はかつて、最高でも60億ドル(約6300億円)という「静かで小さな業界」で新しいテクノロジーへの投資を経験してきた。Excelスプレッドシートが最先端の技術だと考えられてきた業界で、(同社のファンド規模は)新しい技術開発を促進する非常に大きな金額だ。

揺るぎない基盤を持つ企業を成り上がり者がバックミラーに捉える前に、技術革新で先を行く必要性を認識しているのはRyder Systemだけではない。

業界分析を提供するGlobal Corporate Venturingのデータによると、2020年上半期に368社がスタートアップ企業に最初の投資を行った。これは20年前の最後の企業投資ブームとその崩壊からの大きな変化だ。その際、テクノロジー業界に最後に投資し始めたのは大企業だったが、資金を最初に引き上げたのも大企業だった。

また、コーポレートベンチャー活動へ初めて取り組む投資家の数は、企業による投資が以前盛り上がった2019年第3四半期に、177社が新たにベンチャーキャピタルに投資を行って以来の急増で、ほぼ2倍となった。

Ryder Systemは、ベンチャーキャピタルのAutotech Venturesおよび企業のイノベーションを支援するアクセラレーターであるPlug and Playとリミテッドパートナーとして協力してきたが、5000万ドル(約53億円)の新ファンドは、ベンチャーに向けた最初の直接投資ビークルとなる。

「私達は取締役会とCEOから、業界が直面するディスラプションに目を向け始め、航海する方法をよりよく理解するための戦略的指示を受けました」。Ryderのエグゼクティブバイスプレジデント兼新製品開発責任者であるKaren Jones(カレン・ジョーンズ)氏は述べた。「誰もがブロックチェーン、自動化、電気自動車、自動運転車、アセットシェアリングの概要についての読みものに目を通していました」。

輸送と物流は歴史的にテクノロジー業界とあまり接点がなかった。だがグローバルにつながったモバイルデバイス、改良され小型化されたセンシング技術、車の自動運転化、顧客からの配達需要の増加により、ジョーンズによると「静かで小さな業界」を一気に対応へと急き立てた。

「我々のこの限られた業界で、利用可能なテクノロジーにより業界に破壊をもたらす絶好の機会が訪れました」とジョーンズは述べた。「そして当社がその破壊に直面するなら、その最前列に立ちたいと思います。それを脅威ではなく機会に変えたいと思います」。

Ryderでは可能な限り柔軟性のある投資構造を構築することに重点が置かれているようだ。

Ryderのベンチャーキャピタルはディールへのコミットメントに上限を設けていない。唯一の確固たるコミットメントは今後5年間で5000万ドル(約53億円)を使うことを目指しているということだ。

ジョーンズ氏によると、同社はラストワンマイル配送、アセットシェアリング、電気自動車、自動運転車、次世代のデータ、分析、機械学習などのテクノロジーに投資する可能性が高いという。しかし、そういった分野にさえ、Ryderは自社(の投資先)を制限したくないと考えている。

「当社は他の考えにも思いを巡らせます。おそらく当社はすべてについて考え抜いたとはいえません」とジョーンズ氏は語った。

ジョーンズ氏とともに働く会社の投資チームには他に4人いる。フリート管理の最高技術責任者であるRich Mohr(リッチ・モール)氏。同社のサプライチェーンビジネスの最高技術責任者であるKendra Philips(ケンドラ・フィリップス)氏。投資家向け広報および企業戦略担当副社長のBob Brunn(ボブ・ブラン)氏。同社の財務責任者を務めるMike Plasencia(マイク・プラセンシア)氏だ。

ジョーンズ氏によると、彼らはCEOとCFOに報告し、さまざまな事業部門の社長と潜在的なポートフォリオ投資について話し合う予定だ。

ポートフォリオ内の企業は、同社にとっての潜在的な戦略的価値と経済的なリターンの可能性の両方で判断されるとジョーンズ氏は説明した。

スタートアップにとってはRyder Systemの5万人の顧客にアクセスする可能性が生まれることを意味する。「(Ryderが)スタートアップの技術をテストしたり証明したりする場を提供できること、(スタートアップが)Ryderの効率性改善をサポートできることは、双方にとって大きなメリットがあります」とジョーンズ氏は述べている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ryder Systemベンチャーキャピタル

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images under a JB Reed license.

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(翻訳:Mizoguchi