スーパーボウルのハーフタイムに行なわれたLady Gagaによるイベント。その時、彼女の後ろでは300機のドローンが歌に合わせて踊っていた。「Shooting Stars」と名付けられたそのドローンは、これまでにもDisney Worldのホリデーショーでも踊りを披露している。光を放つ何百機ものドローンが、きれいに動きを揃えながら自由自在に動きまわる。それらをコントロールするのは、たった1人の人間だ ― または、1台のコンピューターだ。
これは、これまでは個体ごとにコントロールされていたドローンを集団飛行させるという、Intelの最新プロジェクトだ。SF小説「Ender’s Game(邦題:エンダーのゲーム)」の世界が実現したのである。Orson Scott Cardが書いたその本のように、たった1人の人間が集団で飛行するドローンに指示を飛ばし、各機の状態をモニタリングする。しかも、Intelによれば1度に飛行させられるドローンの数には限りがないという。1度に1万機以上のドローンを飛行させることも可能だ。
Shooting Starの背後には、たくさんのプログラムによって構築されたデスクトップソフトウェアの存在がある。ドローンが飛行するルートは事前にプログラムされており、各機がそれぞれ与えられた役割をこなす。ドローンがお互いに掛け声を送るわけでも、衝突を未然に防ぐためのセンサーが搭載されているわけでもない。このソフトウェアがドローン同士の衝突を防いでいるのだ。
ドローン本体はとてもシンプルな作りになっている。重さはバレーボール1個分ほどしかない。胴体部分にはStyrofoam製の部品が使われており、4つのプロペラは金属製のゲージによって保護されている。このドローンは15分以内に組み立てできるように設計されていて、Intelはこのドローンをドイツの工場で組み立てている。本体にはネジが使われていないため、ドライバー無しで組み立てることが可能だ。そして、ドローンの下部には複数色を発光するLEDが装着されている。そして、このLEDが空に絵を描くのだ。
IntelはこのプロジェクトをDisney Worldで最初に披露した。そして私は昨年の12月、第1回目のショーが行なわれる前に、Intelによる集団飛行デモを見学することができた。スーパーボウルでの演技と同じように、Disney Worldのショーもしっかりとした出来映えだった。しかし、このショーの本当にすばらしい部分はテレビカメラには収まっていない。それは、ドローンがまるで蛍のようにローンチパッドから飛び出す場面だ。
1つのローンチパッドには複数のドローンが1インチ間隔で並べられている。ローンチパッドにはドローンのLED部分を収納できるくぼみがあり、Shooting Starはそれに沿うように並べられる。また、このくぼみはドローンの充電用コネクターにもなっている。そして、ドローンがそこから一斉に飛び立つのだ。無数のローンチパッドから1機、また1機と飛び立っていく。発射と発射の間には短い間隔があけられていて、ドローンはその間隔を利用してそれぞれのポジションにつく。
Disneyのショーでは、Intelは実際に使用される機体数の2倍のドローンを用意しており、彼らが持ち込んだローンチパッドには合計で600機のドローンが格納されていた。そして、ソフトウェアが機体ごとのコンディションを判断し、状態が良い機体が空へと飛び立っていくのだ。
Intelはこのプロジェクトを2年前に開始している。2015年後半、同社はオーストリアのArs Electronica Futurelabとパートナーシップを締結し、そこに所属するアーティストやテクノロジー・リサーチャーの協力のもと、100機のドローンを集団飛行させることに成功した。その当時は、合計4つの別々の飛行場から発進した100機ドローンを、4人のパイロットが操縦していた。そして2016年も終盤に差し掛かったころ、Disney Wolrdでの第一回目のショーの前に、Intelは500機のドローンによる集団飛行デモを披露したのだ。
Intelが思い描くのは、集団で飛行するドローンが与えられたタスクをこなす世界だ。Disney Worldのショーで使われたものと同じ技術を利用すれば、複数のドローンで行方不明者を捜索したり、設備の点検や商品の検査をしたりすることが可能だ。IntelのRealSenseプラットフォームのようなソフトウェアを搭載したドローンが、群れをなして飛行機や貯水タワーの点検をしている様子を想像してみてほしい。もしくは、それらの無数のドローンがLEDを利用して空に巨大なスクリーンを描く様子を。でも、今のところ彼らに与えられているのはバックダンサーという役割だけだ。
IntelとDisneyが空に絵を描く
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