Watsonみたいにクイズにめっぽう強いQA Engineを開発したStudio Ousiaが1.5億円を追加調達

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Studio Ousiaが今日、Samsung Venture Investmentから1.5億円の資金を調達したことを発表した。Studio Ousiaは2016年4月にTechCrunch Japanでも取り上げたことがあるが、自然言語処理を得意とするスタートアップ企業だ。テキスト中に「ソフトバンク」という固有名詞があったときにそれが企業名なのか、野球チームのことを指しているかを区別するという「キーワード抽出」(アカデミックな世界ではエンティティ・リンキングと呼ぶそうだ)の技術や、質問応答システムの「QA Engine」などを開発している。

Studio OusiaのQA Engineは、従来からあるBM25やTF-IDFといった情報検索手法に加えて、最近ディープラーニングの文脈で注目されているCNN(Convolutional Neural Networks)を使っている。与えられた自然言語による質問文に対して、正解となる回答を予測できる。

2016年6月に開催されたNAACL(North American Chapter of the Association for Computational Linguistics)主催の歴史、文学、科学、芸術などの知識を問うクイズ・コンテストでは85問中64問に正答して優勝。2位の22問正解に対して大きく差を付けたといい、Ousiaによれば、この差は開発済みのキーワード抽出技術を使った成果でもあるという。

以下のNAACLのコンテストの様子を伝える動画で、Ousiaの技術概要の説明と、3人のクイズの得意なアメリカ人学生とOusiaのクイズ対決がみられる。IBMのWatsonが人気クイズ番組の歴代チャンピオンに勝ったときの映像を彷彿とさせる白熱具合だ。ちなみに2011年にIBM Watsonがクイズチャンピオンを負かしたときは2880個のプロセッサと16TBのメモリを搭載したモンスターマシンを使っていたが、Ousiaは学習時にGPUを使った以外は「普通のサーバー」でQA Engine動かしているそうだから、隔世の感がある。

ちなみにこのNAACLの大会で2位になったシステムですら、かつて人間のクイズチャンピオンとしてIBM Watsonに負けたという意味での「歴史的チャンピオン」となったケン・ジェニングスを打ち負かしているそうだから、なんだかもうクイズに関しては全く人間の出る幕は全くない感じだね。

Ousiaでは、このQA Engineは企業のコールセンターの回答支援システムや、人材マッチング、チャットボットに応用できる要素技術として、APIサービスとして提供していく予定という。すでに2017年1月にはチャットサポートの自動応答でクラウド会計のfreeeとの協業を発表している。Studio Ousiaは2007年創業で、これまでエヌアイディ、ニッセイ・キャピタルなどから累計2億円を調達している。

Linkify SDKを使うとモバイルの検索がらくちん&すっきり(東京のStudio Ousia発)

モバイルでWebを検索しようとすると、一つのウィンドウで複数のアプリやタブを操作するから、相当めんどっちくなる(私はスマートフォンとタブレットをお手玉しながらアプリの使用とWeb閲覧を同時にやることが多い)。そこで、日本のスタートアップStudio Ousiaは、LinkifyというSDKでモバイル上の検索のかったるさを減らそうとする。

Linkifyは、今ユーザ登録するとiOSバージョンの非公開ベータを使える(Android用のSDKはもうすぐ出るし、ほかのモバイルプラットホーム用も今開発中)。テキストの多いアプリで使うよう設計されているので、ニュースリーダーFlipboardのようなものに適している。機械学習のアルゴリズムを使ってキーワードを見つけ、それらをリンクに変える。そしてそのリンクをクリックすると、検索エンジンの検索結果やWikipediaなどの当該ページのウィンドウがポップアップする。だから、新しいタブを開いたり、ブラウザにリダイレクトされたり、ほかのアプリへ行ったり、などなどがまったくない。

このようにユーザ体験が良くなるだけでなく、Linkifyはデベロッパを二つの点で助ける。まず、自分が作ったアプリのユーザ滞留時間が長くなる(検索でほかのところへ行かされないから)。第二に、検索結果に文脈広告を入れられるので、Google Ad Senseによるマネタイジングが可能だ。このSDKの重要機能の一つが、Studio Ousiaが開発した機械学習アルゴリズムで、それがキーワードを見つけて妥当なリンクを生成する。つまりデベロッパのコーディングにおいて言葉を一つ一つ見つける必要がなく、Linkifyが適切な用語にリンクを張ってユーザのクリックを誘う。そしてユーザが検索結果の中に文脈広告を見つければ、さらにめでたしだ。

協同ファウンダのIkuya Yamadaは次のように言う: “まずキーワードを見つけるのが今でも難しい。Japan(日本)のようなあまり役に立たないキーワードも見つけてしまうが、でもユーザの役に立つのはKyoto(京都)のような特定性のあるキーワードなのだ。それを避けるために、似たような語句でも両者を区別できる方法を工夫した”。

東京のStudio OusiaがLinkifyを開発したのは、モバイルの検索が今後儲かる市場だからだ。調査会社Bia/Kelseyの推計では、2015年にモバイルの検索件数がデスクトップのそれを抜く。Yamadaは曰く、同社の目標は“モバイルでWebを閲覧する体験を向上させること”だ。それには、タッチ画面のデバイスも含まれるし、Semantic Webがサポートする拡張現実(AR)も同社の視野にある。

Studio Ousiaはまだ、Linkifyのマネタイズの方法を模索中だ。たとえばそれは、同社のSDKを使うアプリが得る広告収入の分有になるかもしれない。同社はこれまで、約1億円の資金を、Nissay CapitalとSeed Technology Capital Partnersから調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))