「日本人に最適化したプロダクティビティツールを」 ― BHIがニュースアプリSwingnewsをリリース

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メールアプリのSwingmail、タスク管理アプリのSwingdoなどを展開する日本のBHIは2月16日、新たにニュースアプリのSwingnewsをリリースすると発表した。これまでのアプリと連携してパーソナライズされたニュースを配信できることを武器に、多くの競合が存在するニュースアプリ市場に参入する。また、これまでLINEのみだったボットプラットフォームも拡大し、新たにFacebook Messenger版、Slack版をリリースする。

連携が特徴のSwingアプリ

従来からBHIが提供していたのは、メールアプリのSwingmailとタスク管理アプリのSwingdoだ。

メールアプリのSwingmailでは、メールとTwitterのDM、アプリ経由でかけたFaceTimeなどの通話履歴を全部まとめて見ることができる。他のメールアプリとの違いは、コミュニケーションする相手ごとにアプリ横断的にすべての履歴を管理することができるという点だ。もう1つのSwingdoはタスクと位置情報が自動でひも付けされるタスクアプリで、他のSwingアプリとも連携することが可能だ。Swingmailについては過去にTechCrunch Japanでも紹介している

そしてもう1つ。同社はSwingmailやSwingdoをサポートする立ち位置となるLINEボットのSwingbotもリリースしている。このボットでは、他のSwingアプリと連動させることによって、重要度の高いメールだけをボットが通知する機能や、現在の位置情報をもとに重要度の高いタスクをボットが教えてくれる機能などを利用することができる。BHIはボットを提供するプラットフォームも拡大中で、2月2日にはSlack版の提供を開始。そして近日中にはFacebook Messenger版をリリースするという。

そして、ここまでSwingブランドのアプリを立て続けにリリースしてきたBHIが次に狙うのが、ニュースアプリ市場だ。Swingnewsはキーワード型のニュースアプリで、ユーザーが指定したワードに関連するニュースを配信することでパーソナライズを実現している。

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しかし、TechCrunch Japanの読者であればご存知のように、日本のニュースアプリ市場にはたくさんのプレイヤーがいて、それぞれが凌ぎを削っている。KDDIなどが提供するNewsPassや、AntennaスマートニュースGunosyNewsPicksカメリオなどがその例だ。しかも、これらのアプリがすべて順風満帆というわけではなく、苦戦を強いられているものもある。

そのような市場環境のなか、なぜBHIがニュースアプリなのか。そして、彼らはどのような武器をもってこの市場を戦っていくのだろうか。CEOの日昔靖裕氏に話を聞いた。

「Swingnewsの強みは、これまでのアプリと連携することによって、高度にパーソナライズされた『自分だけの専門誌』をつくれることです。例えば、Swingdoとの連携で取得したスケジュールデータを利用すれば、『翌週に北海道旅行を予定しているユーザーには、現地のニュースを集中的に届ける』ことが可能になります」。

これまでのSwingアプリは、他のアプリと連携してはじめてその真価を発揮するように設計されている。今回リリースするSwingnewsもその例外ではないということだ。

目指すはYahoo Japanのような統合プラットフォーム

ところで、Swing〇〇というように統一されたアプリ名や、Swingアカウントと呼ばれる単一アカウントですべてのサービスを利用できるあたりを考えると、BHIが目指すのは、アメリカ発祥の企業でありながら「Yahoo!BB」など日本独自のサービスを展開するYahoo Japanのような企業なのだろうかと感じる。

日昔氏はその点について、「プロダクティビティツールは米国大手が強いが、日本人に最適化する形が作れると思っているし、BHIはそこを目指している。日本の大手が提供するいくつかのツールは、GoogleやMicrosoftとは異なり、日本の生活管理に適していると感じるし、実際に支持されている」と語る。

この話を聞くと、僕はふと母親のことを思い出した。50代前半の母親は、あまりITリテラシーが高い方ではないのだが、それでもパソコンを開くと必ずYahoo Japanのトップページに行ってニュースなどを眺めている。トップページで新しい「Eメール(彼女の発音に従えば、えーめーる)」がないかチェックもしている。あくまで一個人の例でしかないことは重々承知のうえで言うと、彼女にとってのパーソナルな統合プラットフォームがそこにはある。

日昔氏によれば、BHIが今年目指すのも、その統合プラットフォームだという。「今年は、統合プラットフォームのWeb版を目指している。旧来型のメールやタスク、ニュースを新しいまとめ方で一覧で見れるイメージ」と日昔氏は話す。「ラップトップ、モバイル、Botなど、それぞれに表示する内容の量やまとめ方、通知のタイミングを最適化することで生活管理はまだまだ進化できる」。

SwingmailやSwingdoは、どちらかと言えばフリーランスなどのユーザーに利用されることを意識してつくられたアプリだった。しかし、同社はSwingbotのリリースによってLINEをよく使う主婦層をユーザーとして獲得。同社がこれまでに獲得した15万のSwingアカウントのうち、主婦ユーザーの割合は半分だそうだ。LINEボットと「友だち」になったユーザーは約1万人だという。

もしかすると、日本のスタートアップであるBHIが広範なユーザーに使われる統合プラットフォームを実現する土壌はできつつあるのかもしれない。

2013年創業のBHIには現在10名のチームがいる。創業計画をまとめた日昔氏は、2012年にサムライインキュベートから430万円の出資を受けた。また、昨年10月にはMVNOのmineoが展開するmeneoメールとの連携を発表。日昔氏は今後もMVNO各社との連携を進めていきたいと語っている。

SwingmailはメールもFacebookメッセージも一緒に扱えて、最小限の情報だけに絞るiOSアプリ

今日、日本のスタートアップであるBHIがローンチした「Swingmail」は、メールとFacebookメッセージ、TwitterのDM、アプリ経由でFaceTimeなどでかけた電話履歴を、全部まとめて見れるiOSアプリだ。コミュニケーションする相手単位でアプリ横断的に見ることができ、「メールしといたから!」とメッセするような矛盾と混乱から、われわれを救ってくれるかもしれない。

Swingmailはこれまで2013年12月に実験的バージョンをリリースし、その後もオーストラリア、北欧、英国、カナダ、そして2015年1月には北米市場向けとしてテストローンチをしてきたが、今回新バージョンとなる3.0で日本での提供を開始してマスターローンチをした形という。

最近、GoogleがGmailのモバイル向け再発明としてInboxをリリースしたり、Dropboxが買収したことで話題となったMailboxなど、メールのユーザー体験を再発明しようという動きが出てきている。背景にはプッシュ通知によるノーティフィケーションであれ、メールの新着であれ、われわれはもはや洪水のようなメッセージにさらされていることがある。これを解決しようというのがSwingmailだ。

従来のアプリとの違いは、すでに書いたように同一人物である限り、アプリを問わずに1つのスレッドにまとめてくれることが1つ。これについてはYahoo.comのメールやLinkedInのメッセージなど、APIで利用可能なところは今後も対応していくといい、こういうクロスプラットフォーム対応ができるのが、Googleのような大手企業との違いだという。GoogleのInboxがGoogle+に対応しても驚かないけど、LinkedInやFaceTimeに対応したら、だいぶ驚くよね、ということだ。Swingmailではメッセージに対する返事も、右や左にスワイプすることで、電話(音声)による返信なのかテキストなのかを選ぶことができる。

BHIを創業し、2013年4月には大和企業投資株式会社に対して第三者割当を実施(金額は非公開)するなど着々と準備を進めてきた日昔靖裕さんによれば、徹底したい設計哲学は「less is more」で、メッセージのインボックスに届くのは、すでにメッセージのやり取りをしたことがある知人からのものに限るという。何らかの理由でトヨタの社長からあなたのところにメールが来ても、今のところSwingmailのインボックスには届かない。「将来的には、重要人物ならばやり取りしていなくても届くように機械学習していくものを作っていきたい」(日昔氏)のだそう。Swingmailを入れてTwitterやFacebook、Gmailのノーティフィケーションをスマホでオフにしてしまえば、必要なもの以外で気が散ることがなくなる、というのが1つの運用形態だという。

BHIはSwingmailのほか、コンタクトリストの「Swingbook」、予定管理の「Swingcal」を今後1週置きにリリース予定だが、これらも less is more で設計してるのだとか。Swingbookで表示されるコンタクト先は15人だけ。その15人はコミュニケーション頻度のほかに端末の位置情報も加味していて、ニューヨークにいるときには、その周辺の人々の表示優先度が上がるといった具合だそうだ。「そのときに誰に連絡したいかを当てる」(日昔氏)というのがSwingbookの本質だという。確かに、今のコンタクトアプリは直近にアクセスしたもの順に表示するという素朴なアプローチだけとなっているが、やるべきことはもっとあるのかもしれないと個人的には思う。この時間帯に同僚に電話するわけないだろ、それぐらい分かってよ、ダム・フォン! とか、そういうことだ。

予定管理のカレンダー、Swingcalでは同じイベントに紐づくべき人を予測してグループとしてまとめるような機能を実装しているのだという。コンタクトが15人のみとミニマムにしているのと同じで、Swingcalは1週間先までしか予定を表示せず、予定に人が紐付いているのも特徴。「カレンダー形式をした連絡帳と思ってもらえれば」(日昔氏)という。

SwingmailとSwingbook、Swingcalの3つは相互に連携できるよう設計されているが、個別に利用することもできる。

どういうユーザーがターゲットかと聞いたところ、「ガチガチのスーツの仕事はイメージしてない。どちらかというとフリーランス寄りで、仕事とプライベートが混ざってカオスになっている人がターゲット」と日昔さん。

プロダクティ・ツールは結構ホットなM&A狙い市場

「もともと自主制作で映画やドキュメンタリーを撮影していた」という日昔さんは、どちらかというとITを毛嫌いしていたタイプと自らを語る。ある映画祭での受賞をキッカケに予算が付いてパリに3年住んだり、上海で一般人エキストラを集めて映画を撮ったりしていた。映像制作プロダクションの立ち上げのときは渋谷の電信柱に広告を貼って回ってインディーズのミュージック・ビデオを1本3万円という格安で作っていたりもした。

そんな日昔さんは、海底調査を行う科学調査船「ちきゅう」でドキュメンタリーを撮影していたとき、寄港した沖縄で初めてiPhone 4Sを買った。そして情報過多と分散が起こっていてメッセージのやり取りが「壊れている」と感じたことが起業のキッカケだそう。船上で事業計画を書き、2012年にサムライインキュベートから430万円の出資を受けた。最初は自分1人だけでiOS向け開発フレームワークのTitaniumを勉強しながらiOSアプリを作り始めた。いまはエンジニアとデザイナを中心に非常勤やアルバイトも含めると、チームは13人になっている。

正直ぼくはSwingmailのデモを見た程度なので、どのくらい生産性ツールとしてイケてるのか分からない。ただ、メッセージもコンタクトも予定もミニマムに絞るというアイデアと、そのために機械学習を取り入れるというのは良い狙いに思えるし、UIと同じくらい課題はむしろサーバサイドだというのも説得力を感じる話ではある。

生産性ツールは類似のものが大量に出てきていて、メールだけでもBoxer、CloudMagic、Dispatch、Seed、Evomail、Triageなどさまざまにある。一方で、MicrosoftやAppleといったプラットフォーマーによる買収が頻々と起こっているホットな市場でもある。2014年12月のMicrosoftによるAcompliの2億ドルの買収や、同じくMicrosoftによるSunriseの1億ドルでの買収、2013年3月のDropboxによるMailboxの1億ドルの買収などが大きな成功例だ。

「プロダクティビティツールは国境ない」というBHIには、現在スウェーデン人やイギリス人が社員がいて、日本はもとよりグローバルで定番ポジションを目指すという。