妊活・不妊治療領域D2C「MEDERI」がTLMやエンジェル投資家から3000万円の資金調達

MEDERI ubu メデリ ウブ

自宅でできるもっとも身近な妊娠準備をコンセプトにプロダクトを展開するMEDERI(メデリ)は7月31日、第三者割当増資として3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はリード投資家のTLM、個人投資家複数名。調達した資金は、主にプロダクトの拡充、プロモーション活動に用いる。

MEDERIは2020年3月にウーマンウェルネスブランド「Ubu」(ウブ)をローンチ。20〜30代の女性へ妊娠・出産・不妊治療に関する「正しい知識」の伝達や、自分と向き合う時間の確保、マインドセットの実現をサポートしている。

第1弾プロダクトであるサプリメントとコーチングの定期ボックス「Ubu Supplement」は、クラウドファンディングにて先行会員募集プロジェクトを実施。公開24時間で目標金額200万円を達成し、終了時点で150名以上の方からの支援があった。

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また2020年7月30日、公式ECサイトにて感染症や妊娠と重要な関わりがあることがわかっている膣内フローラのチェックキット「Ubu Check kit」について、100名限定で先行予約販売を開始した(9月上旬配送予定)。

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2020年3月3日、CAMPFIREで新ウーマンウェルネスブランド「Ubu」(ウブ)の先行販売がスタートした。プロダクト第一弾として、妊娠を希望する女性向けのサプリメントとコーチングの定期ボックスを販売する。

Ubuの製造・販売元のMEDERIを立ち上げたのは、女性向けメディア「4MEEE」「4yuuu!」を運営する4MEEEで代表を務めていた坂梨亜里咲氏。自身が不妊治療をした経験から「自分だからこそできる事業をしたい」という思いで2019年に設立された。

「自分には何も秀でたものはない」と思い悩んでいた子会社社長を経て、新たに女性のヘルスケア事業をはじめるに至るまでの経緯を聞いた。

坂梨亜里咲:1990年生まれ。明治大学卒業後にECコンサルティング会社でマーケティング及びECオペレーションを担当する。2014年から4MEEE株式会社に参画。2018年、同社代表取締役に就任。2019年12月末に任期満了に伴い退任し、MEDERI株式会社を設立。
Twitter:aricherababy
note:arisa_s

妊娠できないかもしれない……、不妊治療を経て30歳を機に独立を決意

4MEEEでは女性向けメディアの編集者から始まり、編集長、COOを経てCEOまで登りつめた。順調にステップアップしていく中でやりがいを感じていた矢先、他社にバイアウト。子会社社長になってしばらくして、4MEEEが運営するメディア「4MEEE」は20代向け、「4yuuu!」はママ向けということもあり、ターゲット層と自分のいる世界が異なることに違和感を覚えはじめていたという。

「このままでいいのだろうか、と将来の方向性を模索しているとき、プライベートでも悩みがあったことに気づいたんです。結婚をした26歳後半にブライダルチェックを受けたら、自分が妊娠しづらい体調であることが発覚しました。結婚をしたら妊娠、出産を経て子育てをしながら仕事もする、そういう未来が当たり前だと思っていたのでとてもショックでした」。

「妊娠するための治療をはじめて3年経った去年。30代になり自分の人生を見つめ直したとき『今の自分だからこそできる事業をやりたい』と思い、子会社社長を退職して、妊娠・出産をテーマにした事業を始めようと決めました」。

社長の座を退いてゼロイチで起業することに戸惑いや不安はなかったのだろうか。

「悩んだけれど、やらないという選択肢はありませんでした。自分に秀でたものは昔から何もありません。ただ、行動力と突破力だけには自信があって。小さい頃から問題も一番はやく解かないと気が済まない子どもだったくらい(笑)。今回もそう。早く行動に移したかったので、すぐにその旨を会社に伝えました。2019年に7月に事業を着想し、退職する2019年12月までは社長業をしながら起業準備も並行して行っていました」。

過去の実績を評価され、金融機関から希望金額を調達

もともと女性向けのメディアの制作をしていたこともあり、メンバーや識者はすぐに集まった。

「サプリの開発は人脈をたどって出会った医師や薬学博士に依頼しました。共通の知人の紹介という信頼関係もあったので快く受けてくれました。また、かつて一緒に仕事をしていたスタッフも副業やフリーランスという働き方で関わってもらっています。メディア事業は多くのスタッフや識者が関わっていてコネクションも強いので、新規事業をするときに人材を集めやすかったです。ただ、資金調達はなかなか納得できる着地点が見つかりませんでした」。

資金調達先として最初に連絡をしたのはエンジェル投資家。しかしフェムテックという女性特有の領域のため、男性の多いエンジェル投資家には事業理念やサービスのビジョンを抵抗なく理解してもらうことが難しかった。そして次にアプローチしたのは日本政策金融公庫。

今後の事業計画だけでなく、前職の社長時代の実績や自身の取材記事が多いことなどの社会的信頼も検討材料となり、希望していた満額を融資してもらうことができた。

「近頃では満額融資を得られる事業はなかなかないと各所から聞いていたので、借りられても希望金額の半額くらいかな、と思っていたので嬉しい誤算でした。希望額を融資していただけたおかげでプロダクト制作に集中することができたため、『本当にいいものをつくれる』という自信につながりました」。

初期ユーザーはクラウドファンディングで獲得

3月3日にCAMPFIREでクラウドファンディングをスタート。借入による資金の確保はできていたため、当初はクラウドファンディングをする予定ではなかったという。

「マーケターに施策を相談したら、今まであまりないプロダクトだからマーケティングのKPIを立てづらいと言われてしまいました。厳密に言うと数字を立てられなくはないのですが、プロダクト開発の背景やターゲットユーザーの性質上、数字ではなく、『思い』を優先にしたマーケティングをしたほうがいいのでは?とアドバイスをもらいました。そこで、共感してもらえる人に届きやすいクラウドファンディングを実施することにしました」。

クラウドファンディングは初日で目標金額の200万円に到達。「正直、こんなに早く達成するとは思いませんでした。130人以上の方から支援があり確実に需要があるのだと実感しています」。

今後はプロダクトのバリエーションを増やす予定。店舗展開も検討しており、多面的に女性のウェルネスをサポートしていく。