Udemyの幹部たちが、より良いUdemyを作るために退社した理由

Darren Shimkus(ダレン・シムカス)氏は、企業向けの学習ビジネスであるUdemy(ユーデミー)を、5年かけて年間経常収益100万ドル(約1億1500万円)から1億ドル(約115億4000万円)にまで成長させた。だがUdemyが上場する8カ月前、シムカス氏は自分の直感を確かめるためにUdemy Business(ユーデミービジネス)の社長を辞任した。

「教育業界にもたらすことができるイノベーションがあると思ったからです」と彼はいう。「しかし何を考えても、何を見てもそこにはまず自分が出てきてしまって、世界の見方も偏っていました」そこでシムカス氏は、6カ月の間、データ、人材開発、エンジニアリングの責任者たちにインタビューを行い、教育の世界で共有されている重要課題の把握につとめた。「私が気づいたのは、学習プロセスに人間的なつながりを取り戻すことがいかに重要かということでした」と彼はいう。

この結果、皮肉な話だが、シムカス氏はUdemyの元CEOであるDennis Yang(デニス・ヤン)氏とチームを組み、出身母体とはまったく異なるアプローチで、世界最大の企業向け教育会社の設立に再挑戦することになった。

米国時間2月9日、初めて公表されたModal(モーダル)は、企業が既存の従業員に新しいスキルを習得させたり、専門分野を変えたりするために利用できる、グループ型の学習プラットフォームだ。シムカス氏によれば、彼とヤン氏は、Signalfire、Norwest Venture Partners、Learn Capital、Bling Capitalなどから680万ドル(約7億8000万円)の資金を調達することに成功した。

この同社の最初の製品は、スタートアップ企業におけるデータリテラシーの向上に焦点を当てている。そこでは、教育対象の従業員を30人から40人のグループに分けて、非同期のプロジェクトやライブイベントを含む8週間の学習体験をさせる。

カリキュラムについては、Modalは大規模に公開オンライン講座を提供するやりかたではなく、専門家とともにすべての教材を社内で開発している。

「私たちは、外部講師がやってきてプラットフォーム上で何かを提供するようなモデルを採用するつもりはありません」と彼はいう。「私たちが作っているコンテンツはすべて私たちのものです」。最終的には、自然言語処理、Python、データストーリーテリングなどのスキルを教えるプラットフォームになる。

同社は、売上目標、顧客数、顧客名などの情報を開示していない。古典的な企業向けB2B販売モデルで収益を上げる。

ModalのビジョンとUdemyのミッションの重なりは、無視できない。両社とも、人材の流出や教育の遅れを危惧する企業に対し、スキルアップサービスを販売している。シムカス氏は「私たちはUdemyのような巨人の肩の上に立っているのです」と直接的な競争を否定する一方で、彼の認識している同社の人材システムがModalを「かなり有利にしている」とも認めている。

高いレベルで見れば、Modalの製品はシンプルである。スキルアップやスキル再構築をする企業向けの資金調達ラウンドが活発に行われていることを考えると、明らかに世の中では従業員に対するリフレッシュが求められている。ここではEdTechのベテランたちは、人々が情報を理解する方法の未来に向けて、非同期学習ではなく、キュレーションされたグループベース学習というコンセプトに賭けている。

Udemy出身者が、Udemyのプラットフォームからスピンアウトして、グループ型クラスのプラットフォームを構築したのは今回が初めてではない。Udemyの共同創業者であるGagan Biyani(ガガン・ビヤニ)氏は、AltMBA(アルトMBA)の共同創業者であるWes Kao(ウェス・カオ)氏と共同で開発している最新製品Maven(メイブン)のために、3000万ドル(約34億6000万円)以上の資金を調達した。シムカス氏は、Mavenはユーザー生成コンテンツに重点を置いているが、Modalは従業員やHRリーダーのために作りたいと考えているという。

また、シムカス氏とヤン氏がModalを設立した数カ月後に、Udemyは「グループベースの没入型学習体験を提供するオンラインリーダーシップ開発プラットフォーム」であるCorpU(コープ)を買収した。これまでUdemyは、グループ型クラスのプラットフォーム戦略について、詳細を明らかにしていなかった。

一方、シムカス氏は、パンデミック、分散型勤務、リモート・ラーニング、大規模辞職などの現在の状況が、自分のビジョンの進路にどのような影響を与えるかを考えている。

彼は「2年前にはこの会社を作ることはできなかったでしょう」と語る。「人生に求めていること、そして会社に期待していることに対して、人びとが新しい価値を見出したからこそ、今この会社を立ち上げることができたのです」。

画像クレジット:Utamaru Kido / Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:sako)

ベネッセ出資のオンライン学習マーケットプレイスUdemyが最大105億円調達の見込み

オンライン教育は、2020年のテクノロジー業界におけるホットスポットの1つだ。人々はeラーニングツールを利用して、新型コロナウイルスのパンデミックにより閉鎖された学校、閉鎖されたオフィス、ソーシャルディスタンス、以前より増えた自宅での時間などから生じた隙間を埋めている。そしてそれが教育のスタートアップに大きな衝撃を与えた。複数の会社が成長のチャンスを生かすために資金を調達しようとしている。

その最新の動きとして、Udemy(ユーデミー)が最大1億ドル(約105億円)を調達しようとしている。同社はPython(パイソン)の学習やより良い写真の撮影方法、マインドフルネスやビジネスアナリティクスの習得に至るまで、現在65の言語で約13万のビデオベースのコースを用意するマーケットプレイスを提供している。今回のシリーズFラウンドの資金調達で、同社は最大33億2000万ドル(約3490億円)のバリュエーションがつきそうだ。

同社はデラウェア州で資金調達のための書類を提出した。Justin Byers(ジャスティン・バイヤーズ)氏とPrime Unicorn Index(プライム・ユニコーン・インデックス)のチームが最初に気づいた。ラウンドが完了したかどうか、また全額が(または実際にはそれ以上)が調達されたのかどうかははっきりしない。

回答を求められたUdemyは報道を否定しなかったが、現在のところコメントを拒否している。「当社は憶測についてコメントしないという方針です」と広報担当者は電子メールで筆者に述べた。「現時点でコメントはありませんが、何か変化があればご連絡いたします」。

資金調達はUdemyにとって強力な動きになると思われる。同社は2020年初めにシリーズEを終了したばかりだ。5000万ドル(約53億円)のラウンド(ベネッセが出資)で、ポストマネーで20億ドル(約2100億円)以上のバリュエーションとなった。

だがそれは新型コロナが実際に世界を支配する前の2月のことだった。その後、教育分野のスタートアップは今年の春からビジネスが急増した。その結果、新星を支援する良いタイミングだと見る投資家からの注目も急増した。

最近の取引をいくつか見てみよう。Udacity(ユダシティ)は先週、7500万ドル(約78億円)の負債ラウンドを発表し、ついに利益を計上したと述べた。10月にはKahoot(カフート、未訳記事)がソフトバンクから2億1500万ドル(約230億円)を調達するラウンドを発表した。そして9月、Outschool(アウトスクール)が4500万ドル(約47億円)を調達した(そして現在は利益を上げている)。Homer(ホーマー)は戦略的投資家から成る華々しいグループから5000万ドル(約53億円)を調達した(未訳記事)。Unacademy(アンアカデミー)は1億5000万ドル(約160億円)を調達し(未訳記事)、大手のByju’s(ビジュス)はSilver Lake(シルバーレイク)から5億ドル(約530億円)を獲得した

これらは大規模な取引のほんの数例にすぎない。多くの小規模な資金調達があり、新しいエドテックのスタートアップが立ち上げられており、他にも勢いの兆候(未訳記事)が見られる。ちなみにPrime Unicornによると、Duolingo(デュオリンゴ)も資金調達中だ。22億1000万ドル(約2320億円)のバリュエーションで、すべての株式が発行される場合、最大3500万ドル(約36億円)の資金調達となる。TechCrunchはこのニュースを掘り下げているところだ。

Udemyにとって直近の資金調達となった2020年初め、事業部門の社長が筆者にUdemyには5000万人の学生がアラカルト形式でコースを購入しており、また企業の顧客(Adidas、General Mills、トヨタ、Wipro、Pinterest、Lyftなど合計約5000社)はサブスクリプションモデルを使用していると語った。

同社のウェブサイトに掲載されている数字によるとビジネスユーザーは増加して現在7000人を超えており、現在までに合計4億のコースが登録されているようだ。Udemyが現在、多くの資金を使って模索している機会はここに示されているのかもしれない。

しかし、はっきりさせておくと、書類からは最新のラウンドに誰が参加したのか、また資金調達の目的が何なのかは詳述されていない。

2月のラウンド時に書いたように、その時の資金調達はUdemyと提携している日本の教育出版社であるベネッセホールディングスという戦略的投資家1社からのものだった。ベネッセのビジネスには、オンラインと対面の両方に対応する子供向けの教育コンテンツと大人向けの教育コースの開発が含まれている。同社の傘下にあるBerlitz(ベルリッツ)のようなブランド向けの開発もある。Udemyはベネッセのそうしたさまざまな取り組みのためのコンテンツ開発を支援している。

同社の他の投資家にはStripes、Naspers(現在はProsus)、Learn Capital、Insight Partners、Norwest Venture Partnersなどがいる。

Prime Unicorn Indexによると、この最新のシリーズFの条件には「通常の転換権がある他のすべての優先株式に対する均等な残余財産優先分配権、つまり、資金が残っている場合は普通株式に参加しない」が含まれるとある。また、Udemyの直近の1株当たり価格は24.13ドル(約2530円)であり、シリーズEで設定した15.57ドル(約1630円)から上昇した。

詳細がわかり次第続報する。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Udemyベネッセホールディングス資金調達

画像クレジット:DrAfter123

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(翻訳:Mizoguchi