米宇宙軍からBlue Origin、ULA、Rocket Lab、SpaceXの4社が次世代ロケット開発に関わる契約を獲得

2019年12月に空軍から軍種としてスピンアウトした米国宇宙軍は、次世代ロケットエンジンの試験や上段の改良に関するプロジェクトに向けて、次の契約を勝ち取った企業を発表した。

この契約は、宇宙軍の宇宙システム司令部が管理する「Space Enterprise Consortium(SpEC、スペース・エンタープライズ・コンソーシアム)」プログラムによって選定された企業に付与されるものだ。SpECは、米国防総省と宇宙産業の連携を促進し、約600社の参加企業が契約を競い合っている。今回の契約は総額8750万ドル(約97億5000万円)で、以下の4社のロケット打ち上げ企業が獲得した。

  • Blue Origin(ブルーオリジン)は、大型ロケット「New Glenn(ニューグレン)」上段用の極低温流体管理技術開発のために2430万ドル(約27億円)を獲得
  • United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)は、新型「Vulcan Centaur(バルカン・ケンタウルス)」2段式大型ロケットのアップリンク・コマンド&コントロールのために2430万ドルを獲得
  • Rocket Lab(ロケットラボ)は、同社史上最高額となる2430万ドルの契約を獲得。この資金は、同社の次期中型ロケット「Neutron(ニュートロン)」の上段の開発に充てられる
  • SpaceX(スペースX)は「Raptor(ラプター)」ロケットエンジンの燃焼安定性分析および試験のために1440万ドル(約16億円)を獲得

SpaceXとULAは、宇宙軍の国家安全保障宇宙打ち上げプログラムのもと、米国政府のための打ち上げ業者としてすでに選定されている。Rocket LabとBlue Originの両社は、2024年に次回の打ち上げ契約を競うことになるだろう。今回の契約は、両社が入札に向けて準備を進めていることを窺わせるものだ。なお、Blue OriginとNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)は、2020年にSpaceXとULAに敗れている。

今回の契約獲得について、Rocket LabのPeter Beck(ピーター・ベック)CEOは、Neutronロケットに対する「信頼の証」であると声明で述べている。「私たちはElectron(エレクトロン)で信頼のおける打ち上げシステムを構築してきましたが、ニュートロンでも同じことを行い、より打ち上げ能力の大きな新型ロケットで、引き続き自由な宇宙へのアクセスを提供して参ります」。

画像クレジット:Aubrey Gemignani/NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新型コロナウイルスの影響から液体酸素が不足、ロケット打ち上げ延期の原因に

新型コロナウイルス流行の余波は、宇宙飛行というおそらく最も似つかわしくない場所にまで及んでいる。米国時間8月27日、NASAは新型コロナウイルスの影響による液体酸素(LOX)の不足を理由に、9月の衛星打ち上げを延期するという予想外の措置を取ったが、今後も打ち上げの延期は続くかもしれない。

酸素の需要はデルタ変異株で高まる一方だ。多くの都市で入院やICUへの入室率が、新型コロナウイルス流行開始時の状態にまで戻ってしまった。酸素は人工呼吸器に使われるだけではない。宇宙産業では、LOXをロケット推進剤の酸化剤として使用しており、液体水素など他のガスと組み合わせて使用されることが多い(打ち上げ時に大量の蒸気が発生するのは、水素が酸素と反応して水になるためだ)。

Boeing(ボーイング)とLockheed Martin(ロッキード・マーチン)の合弁会社であるUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)とNASAは、Landsat 9(ランドサット9号)衛星の打ち上げ日を9月23日に変更すると発表した。

LOX不足の影響を受ける可能性のある打上げ会社はULAだけではない。SpaceX(スペースX)のGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)社長は、先週開催されたSpace Symposium(スペース・シンポジウム)のパネルディスカッションで「2021年は打ち上げ用の液体酸素が不足するため、実際に影響を受けることになるでしょう」と述べ「もちろん、病院で必要な酸素が確実に手に入れられるようにすることが大事です。しかし、どなたか余分に液体酸素をお持ちの方はメールでご連絡ください」と続けた。

SpaceXの創業者でCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、数日後にTwitter(ツイッター)でLOX不足について「リスクではあるが、まだ制限要因ではない」と発言した。

SpaceXのグウィン・ショットウェル社長、COVID-19による液体酸素の不足により、ロケット打ち上げの頻度が減ると語る。

ヴィンセント・ユー

リスクではありますが、まだ制限要因ではありません。

イーロン・マスク

実際に酸素の供給量が少ないだけでなく、新型コロナウイルスによる混乱がサプライチェーンに影響を与え続けているため、出荷の遅れが広まっていることも液体酸素不足を悪化させている。ULAのTory Bruno(トリー・ブルーノ)CEOはTwitterで、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地への窒素輸送を担当している業者が、フロリダ州でLOX配送を支援するために転用されたことを付け加えた。

9月16日の@ulalaunchによるSLC 3の打ち上げ予定時刻に関して、新たな情報はありませんか?

ムーン・トゥ・マーズ

VAFBに液体GN2を輸送しているUSGの業者は、フロリダでCOVIDの影響によるLOXの問題に協力しています。現在そのような状況で作業を続けています。

トリー・ブルーノ

LOX不足の影響を受けているのは、宇宙産業だけではない。NASAが打ち上げ延期を発表する少し前、フロリダ州オーランド市の当局は、住民に節水を呼びかける通知を送った。同市の水道処理にLOXが使われているためだ。

「当然ながら人命救助を優先するため、全国的に液体酸素の需要が非常に高まっており、OUC(オーランド市水道局)への供給が制限されています」と、オーランド市のBuddy Dyer(バディ・ダイアー)市長は、Facebookで述べている。「処理に必要な水の量を直ちに減らさなければ、私たちの水道水の水質に影響が出る可能性があります」。

非営利団体「Center for Global Development(グローバル開発センター)」は、2020年5月の時点で、新型コロナウイルスを、病院への十分な酸素供給に対する「警鐘」と呼んでいた。

画像クレジット:Heather Paul Flickr under a CC BY-ND 2.0 license.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンが同社Project Kuiper衛星群最初の打ち上げで宇宙開発で実績あるULAと契約

Amazon(アマゾン)の衛星コンステレーションであるProject Kuiperが、宇宙への進出に一歩近づいた。アマゾンはUnited Launch Alliance(ULA、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)と、9回のAtlas Vロケットの打ち上げで同社衛星を打ち上げる契約を結んだと発表した。同社は複数の打ち上げ事業者とロケットを使用して3236機のKuiper衛星を低軌道(LEO)に打ち上げる予定だが、ULAはアマゾンが契約を発表した最初の打ち上げ事業者だ。

関連記事:アマゾンのProject Kuiperは3236基の衛星打ち上げに複数企業の参加を期待

ULAのAtlas Vは、これまで85回のミッションを完璧にこなしてきた宇宙開発業界で実績のがあるロケットだ。例えば、NASAの探査車PerseveranceやLockheed Martin(ロッキード・マーティン)のロボット小惑星探査機OSIRIS-RExの打ち上げに使われた。アマゾンとULAは、契約の対象となる打ち上げロケットの総数については詳しく説明しているが、いつ打ち上げが行われるかについてのスケジュールは明らかにしていない。

2020年末のTC Sessions:Spaceで、TechCrunchはアマゾンのデバイス&サービス担当SVPであるDave Limp(デイブ・リンプ)氏に、打ち上げスケジュールについて質問している。その際、リンプ氏はアマゾンがProject Kuiper衛星の「設計段階の中盤」にあると述べていた。これは明らかに、打ち上げに先立つ量産に入るまでまだ作業が残っていることを意味する。

リンプ氏によると、アマゾンがこのコンステレーションを運営するためのFCC(連邦通信委員会)のライセンス期限が迫っており「約6年後までにコンステレーションの半分を打ち上げる」必要がある。これは設計段階が完了し、実際に衛星を製造している段階になった後、積極的な打ち上げスケジュールが必要になることを意味する。

アマゾンはProject Kuiperに多くの資本と時間を投資しており、初期投資額の100億ドル(約1兆1000億円)と現在500人を含むプロジェクトの専任スタッフ、およびグローバル本社のあるレッドモンド近くの専用オフィスと研究開発施設で支援することを約束している。

関連記事:小型衛星群でブロードバンド接続を提供するKuiperプロジェクトにアマゾンが本腰

カテゴリー:宇宙
タグ:AmazonProject KuiperULA

画像クレジット:Amazon / ULA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter