アプリで作れるVisaプリペイドカード「バンドルカード」に後払い式「ポチッと」チャージ機能追加

スマホアプリからチャージ式のVisaプリペイドカードが発行できる「バンドルカード」。4月17日、カンムが提供するこのサービスに、カードへのチャージが後払いでできる「『ポチッと』チャージ」が新機能として追加された。

バンドルカードは、生年月日と電話番号さえアプリに登録すれば、誰でも“最速1分で”ネット決済専用のバーチャルカードが作れるサービスとして2016年7月に発表された。当初はiPhone版のみ、同年冬にAndroid版もリリースされた。クレジットカードと違って先にチャージを行うため、与信審査が不要。10代の学生や主婦、高齢者でもすぐにカードが発行できて、ネットでの買い物に使うことができる。また希望者は、リアル店舗で使えるプラスチックのカードを持つことも可能だ。

クレジットカードの加盟店で使えるプリペイドカードは「au WALLET」(Master)や「ソフトバンクカード」(Visa)、「LINE Payカード」(JCB)などの登場で知られるようになり、利用が広がっている。一方で「チャージが面倒という点がプリペイドタイプのカードの課題だ」とカンム代表取締役の八巻渉氏は言う。

「『1分でカードが作れる』とは言うものの、バンドルカードはチャージをしなければ使うことはできない。コンビニに行かなければチャージできない、という面倒さが、カードの発行や利用のハードルとなっている」(八巻氏)

そのハードルを取り払うために導入されたのが、今回の「ポチッと」チャージだ。バンドルカードアプリで生年月日・電話番号に加えて氏名とメールアドレスを登録することで、1回あたり最大2万円までならその場でチャージが完了。チャージした金額に手数料を加えた額を、後からコンビニやATMなどで払う、後払い方式のチャージサービスである。

「ポチッと」チャージの導入により、バンドルカード新規発行からチャージまでが180秒で完了するようになると八巻氏は話す。

「EC市場の伸びにより、カードでの支払いの機会は増えているが、20代の男性の75%はクレジットカードを持っていない。またクレジットカードを持っていても、あまり使わないという人も多く、日本のクレジットカード利用率は実は半分以下という調査もある。その理由は『使い過ぎが気になる』『セキュリティなど安全性に不安がある』など『クレジットカードは怖い』という認識から来ているものだ」(八巻氏)

八巻氏は「プリペイドタイプのカードなら、使い過ぎの心配がない。また支払いに利用するとアプリでプッシュ通知が来る仕組みにすることで、金額の管理も簡単になるし、他人に使われてもすぐに分かり、キャンセルや利用停止の届け出もすばやくできる」とバンドルカードのメリットを述べる。

さらに「ポチッと」チャージ導入により、シンプルな決済体験の提供と、日常で少し足りないお金のニーズを満たすことによる経済活性化への貢献を実現したい、と八巻氏は言う。

「バンドルカードの20〜34歳までのユーザーに調査を行ったところ、回答者の約6割が『月に自由に使えるお金は3万円以下』、そのうちの4割が『自由に使えるお金が足りていない』と回答している。足りない金額は2万円以下という少額ニーズが大半だ。このことから、2万円以下の足りないお金のニーズを即満たすことに意義があると考えた」(八巻氏)

また日本の最低賃金の平均は848円に上がり、失業率も3%を切る状況となっていることに触れ、八巻氏は「ほとんどの人が1日8時間、3日働けば2万円強のお金を手に入れることができるのが、今の日本の環境。『タイムセールで見つけた服を今買いたい』とか『すぐ売り切れるチケットや限定品を手に入れたい』といったニーズに対して、『ポチッと』チャージで背中を押すことで、お金の流れを健康的にして、経済の活性化に貢献することができると考える」と話している。

「ポチッと」チャージの手数料は、1万円までのチャージで500円、1万1000円から2万円までのチャージで800円。チャージした翌月末までにコンビニやATM、ネットバンキングで支払う必要がある。

「ポチッと」チャージの決済部分を提供するのは、フリークアウト・ホールディングスグループ傘下のリスク保証サービス企業、Gardiaだ。カンムは既に4億円の出資を受けているフリークアウト・ホールディングスと、1月31日に包括的資本・業務提携を締結。その際に業務提携内容のひとつとして「Gardiaによるカンムの事業にともなうリスクの保証」が挙げられていた。

(ちなみに同じ1月31日に経営統合が発表された、オンライン決済サービスのコイニーとオンラインストア運営のストアーズ・ドット・ジェイピー(旧ブラケット)の持株会社ヘイとも、フリークアウト・ホールディングスは資本業務提携を実施。フリークアウト、カンム、ヘイの3者でFinTechサービスに取り組むことを決めている)

Gardiaはカンムから手数料を受け取って、後払いのための与信・決済機能を提供する。バンドルカードでは、これまでにもNTT docomoやソフトバンク、ワイモバイルなどの携帯キャリア決済でチャージする手段を備えているが、これらキャリアと同じ立ち位置にGardiaが新たに加わる形となる。

Gardiaでは、同社の展開する保証サービスにまつわるデータが蓄積される中で、さまざまな傾向を分析し、新しい与信・決済システムの構築につなげることを目指している。「ポチッと」チャージでカンムと連携することで、その流れを加速させたい考えだ。

写真左からカンム取締役COO 竹谷直彦氏、代表取締役社長 八巻渉氏、Gardia代表取締役社長 小山裕氏

カンムは、4月現在で40万強のバンドルカードのダウンロード数を、2018年中に150万に伸ばすことを目指すとしている。

八巻氏は「長期的には、スマホ上のペイメント普及による『お財布2.0』を目指す」と語る。「アメリカの支払いでの現金比率は16.7%。また北京のコンビニでの支払いデータなのでバイアスはあるかもしれないが、中国ではAlipayやWeChat Payなどのスマートペイメントが普及しており、現金比率は11%となっている。一方、日本の現金での支払い比率は51.9%と過半数。まだまだスマートペイメントの伸びしろはある」(八巻氏)

「『お財布2.0』にはスマホ決済、個人間送金、信用保証の3つの領域があるが、カンムではたまったユーザーデータを活用し、信用保証の仕組みを提供していきたい」と八巻氏は将来の展望について述べている。

FinTechスタートアップのカンムがVISAプリペイドカードを発行へ、その意図は?

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CLO(Card Linked Offer)事業を展開するFinTechスタートアップのカンム。同社は7月11日、VISAのプリペイドカード「Vandle」を今夏中にも発行することを明らかにした。クレジットカードの加盟店で利用できるプリペイドカードは、KDDIの「au WALLET」(Master)やLINEの「LINE Pay カード」(JCB)などの登場によってユーザーの認知も高まっている存在。スタートアップがこれを提供する意図はどこにあるのだろうか。

その前にカンムについてご紹介しておこう。同社の設立は2011年。シード期に独立系ベンチャーキャピタルのEast VenturesおよびANRIから、2015年末にアドウェイズ、iSGSインベストメントワークス、フリークアウト、三菱UFJキャピタル、TLMから合計1億2500万円の資金を調達している。

カンム代表取締役社長の八巻渉氏

カンム代表取締役社長の八巻渉氏

カンムでは2013年からは大手クレジットカード会社のクレディセゾンと提携してCLO事業を展開してきた。CLOとは、クレジットカードの利用履歴をもとに、カード会員の属性に最適な各種の割引情報や優待情報を提供するというもの。現在は大手小売店やEC、保険などの領域のクライアントを中心に取り扱い、送客手数料や送客後の成果報酬によって収益を得ている。カンム代表取締役社長の八巻渉氏によると、すでに事業単体で単月黒字化を達成している状況という。

だが一方で課題もある。提携カード会社と直接契約している加盟店以外はCLOを利用できない(ざっくり言うと、カード決済において、イシュアー(カード発行者)とアクワイアラ(加盟店)が異なる場合は、決済に関する情報の一部を確認できないことがあり、最適なオファーを提案できない)ほか、オファーUIをカスタマイズできない(クレジットカードのオンラインサービス上で固定のバナーを提供する程度)という課題があった。これを解決するためには自らが決済情報を把握でき、かつさまざまな形でカード会員にオファーを提案できるプラットフォームを築く必要がある。これがカンムがプリペイドカード発行に至る経緯だ。

Vandleは、あらかじめ金額をチャージしておけば、VISAのカードが使える店舗・インターネット決済どこでも利用可能なプリペイドカードだ。あらかじめチャージする必要があるため、年齢制限や与信審査も必要ない。専用のアプリをインストールし、会員登録さえすればすぐにカード番号をが付与されてECの決済に利用できる。決済情報はリアルタイムに通知されるほか、今日いくら使ったか? 今週いくら使ったか?といったデータをアプリ上で表示する機能も用意する。

「Vandle」のアプリやその上でのCLOイメージ

「Vandle」のアプリの利用イメージ

アプリ上からはバナー広告を一掃。CLOを用いて、ユーザーが興味あるであろう情報だけを提供するという。具体的には、行ったことある店舗の情報が関連付けて表示される、そのカードが店舗のポイントカードの代わりになるといったようなものになるという。

また、Vandleは企業などが独自ブランドでプリペイドカードを発行することも可能となっている。あくまで例だが、出資するiSGSインベストメントワークスの親会社であるアイスタイルが、「@cosmeプリペイドカード」を発行することだって可能なわけだ。さらに言えば、自社サービス上で提供するポイントと、Vandleを通じた独自プリペイドカードを組み合わせることができれば、ネットとリアル両方で利用できる新たなポイントサービスを生み出し、また裏側では様々な決済データをもとに、より精度の高いCLOを実現できる。どこまでの範囲での話かはさておき、カンムではすでに複数の大手企業との提携を進めているところだという。

カンムではまた、今回の発表に合わせて、決済やマーケティング関連の3つの特許も取得している。今後はCLOで培ってきた決済データ解析の強みを活かして、自社で与信モデルを開発。独自のクレジットカードも発行する予定だという。この新しい与信モデルでは、既存の与信方法ではカードを作れなかった層にもクレジット機能を提供していく予定。