脱炭素で注目が集まるエネルギー貯蔵スタートアップをVolta Energy Technologiesが支援

エネルギーおよびエネルギー貯蔵素材の最大手数社の支援で、エネルギー系企業への投資とアドバイザリーサービスを提供するVolta Energy Technologies(ボルタ・エナジー・テクノロジーズ)は、1億5000万ドル(約158億5000万円)を目標とした投資ファンドをおよそ9000万ドル(約95億円)でクローズしたことが、同グループの計画に詳しい人たちの話でわかった。

このベンチャー投資ビークルは、これでEquinor(エクイノール)、Albermarle(アルベマール)、Epsilon(イプシロン)、Hanon Systems(ハンソン・システムズ)の4社からすでに約束されている1億8000万ドル(約190億1000万円)のコミットメントを補うこととなった。しかもそれは、これまでになくエネルギー貯蔵技術への関心が高まった時期とうまく重なった。

内燃機関と炭化水素燃料からの移行が本格的に始まると、各企業は、大量の電気自動車(EV)と、いまだ開発段階にある再生可能エネルギーの大量貯蔵に欠かせないコスト削減とバッテリー技術の性能向上を、こぞって追求するようになった。

「資本市場は、脱炭素に巨大な投資機会を見込んでいました」と話すのは、Voltaの創設者で最高責任者のJeff Chamberlain(ジェフ・チェンバレン)氏。

同社は、2012年、オバマ政権下の米エネルギー省トップとチェンバレン氏が話し合いを始めたときに出たアイデアから誕生した。それは、チェンバレン氏がアルゴンヌ国立研究所在籍中に米国政府のバッテリー研究コンソーシアムに参加し、米国屈指の研究所となるJCESR(エネルギー貯蔵研究共同センター)の開設を率いた際の経験が、Volta Energyへと進化した。そこでチェンバレン氏は、民間セクターの投資パートナーに向けて、国立研究所の最先端の研究を活用して民間企業が最高のテクノロジーを生み出すと売り込んだ。

チェンバレン氏によれば、官民双方の研究機関からのVoltaへの支援は強力なかたちで続いたという。トランプ政権下においてさえ、Voltaの主導力はますます力を増し、化学、電気、石油ガス、そして産業熱利用の各業界の大手企業から1億8000万ドルという長期投資につながるファンドへの出資を引き出すことができたと、同氏は話す。

同社の計画に詳しい人たちの話では、1億5000万ドルを目標とし、2億2500万ドル(約237億7000万円)を上限とするこの新規投資ファンドは、現在の投資ビークルを補い、バッテリー業界に大きな資金の流れを作ることで同社の火力をさらに高めるという。

チェンバレン氏は制限があることを理由に、この投資の具体的な内容や条件の説明は避けたが、同社にはバッテリーとエネルギー貯蔵に関連する技術に投資すること、そして「電気自動車の普及と太陽光発電や風力発電の普及を可能にする」と語った。

最初のクリーンテックブームの際に、Voltaの頭脳を支える人たちは、大量の善意の資金がお粗末なアイデアに注ぎ込まれ、商業的成功を見ることなく消えていった様子を目の当たりにしたとチェンバレン氏はいう。Voltaは、エネルギー貯蔵分野で研究者たちが取り組んでいる本物の投資機会に関する教育を投資家たちに施し、そうした企業に資金を投入することを目的に創設された。

「投資家たちがゴミ焼却炉に資金を投げ込んでいると、私たちは感じていました。それが脱炭素へ悪影響を及ぼしかねないとも気づいていました」とチェンバレン氏。「私たちの全体的な目的は、膨大な個人資産の投資先をを各人に指南し、燃え続けるゴミ焼却炉への資金投入を止めさせることにありました」。

このミッションは、バッテリー市場にさらに多くの資金が流入するようになって、さらに重要性を増してきたとチェンバレン氏はいう。

EV業界でのNikola(ニコラ)のPOに端を発したSPAC騒動は、QuantumScape(クアンタムスケープ)のバッテリー関連SPACへ繋がり、その他もろもろのEV関連のOPを招き、やがてはあらゆる方面で、EV充電およびバッテリー関連企業への投資額が吊り上げられた。

チェンバレン氏はVoltaのミッションを、バッテリーと電力管理のサプライチェーン全般にわたる市場への参入を待つ、もっとも優れた新生の技術に資金提供し、生産を確実に軌道にのせ、伸び続ける需要を満たす準備の手助けをすることだと考えている。

「エネルギー貯蔵エコシステムと、その底流にある技術的な課題を深く理解していない投資家は、明らかに不利な立場にあります」と、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元幹部であり、Voltaの初期の投資家でもあるRandy Rochman(ランディー・ロックマン)氏は声明の中で述べている。「Voltaの知識がなければエネルギー貯蔵の世界では何も起こり得ないと、私は非常に明確に理解しました。エネルギー貯蔵への投資機会を特定し落とし穴を避ける上で、彼らに勝るチームはありません」。

Voltaからの新しい資金は、すでにいくつもの新しいエネルギー貯蔵法と実現技術の支援に向けられている。そこには以下の企業が含まれる。急速充電が求められる場所に適応する、プルシアンブルーを応用した高出力で火災の危険性がないナトリウムイオンバッテリーを開発するNatron(ネイトロン)、使われていない電灯線を利用して電力を分配することで、再生可能電力の統合を最適化し、電力網でのエネルギー貯蔵を可能にするハードウェアを開発するSmart Wires(スマート・ワイヤーズ)、移動体と電力網の両方に使える全固体リチウムバッテリーを製造するIonic Materials(アイオニック・マテリアルズ)。同社のプラットフォーム技術も、5Gモバイルや充電可能なアルカリ電池といった他の成長市場にも革新をもたらす可能性がある。

関連記事:EVが制度面で追い風を受ける中、バッテリー会社が最新のSPACターゲットに

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Volta Energy Technologiesエネルギー貯蔵再生可能エネルギー資金調達電気自動車

画像クレジット:NeedPix under a Public domain license.

原文へ](文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)