VOYAGE GROUPがフィンテック投資を加速、米SV FRONTIERと組んで新ファンド「SV-FINTECH Fund」を組成

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VOYAGE GROUPは1月24日、米シリコンバレーの独立系ファンド「SV FRONTIER」と共同でフィンテック特化型の投資ファンド「SV-FINTECH Fund(SV-FINTECH1号投資事業有限責任組合)」の立ち上げを発表した。

またアドバイザーにはフィンテック専門の現役弁護士であり個人投資家のトム・ブラウン氏が就任するという。ファンドの運営は、両社が合弁で新設したSV-FINTECH1号有限責任事業組合がジェネラル・パートナー(GP)として行う。フィンテック分野における国内外のスタートアップへの投資(1社あたり1000万〜1500万円程度)だけではなく、リミテッドパートナー(LP)のフィンテック分野への取り組みのサポート、事業開発支援も行っていくとしている。

現在、LPには、金融情報ベンダーのQUICK、IT機器や計測器などのレンタル事業を手がける横河レンタ・リースの参加が決定。今後は追加で5〜10社の出資を募り、最終的には総額20億円規模のファンド組成を目指す。

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なぜ、SV FRONTIERと共同でファンドを立ち上げたのか?

アドプラットフォーム事業、ポイントメディア事業に続く、新たな柱としてインキュベーション事業にも力を入れ始めているVOYAGE GROUP。特にフィンテック領域への動きは積極的で、ポイント交換やBitCoin交換などの自社サービスの運営やフィンテック関連企業への投資、フィンテックに関する研究開発組織「FinTech Lab」の立ち上げも行っている。

今回、SV FRONTIERと共同でファンドを立ち上げた意図について、SV-FINTECH Fundでは次のように語る。

「SV FRONTIERはシリコンバレーでのフィンテック事情に精通しており、投資と事業開発の実績を持っているため、共同でファンドを立ち上げることにしました。また彼らが持つネットワークを活かし、アメリカのフィンテック関連会社に投資を実行していくことで、その知見を日本での投資と事業開発に活かしていけると思っています」

様々な領域でのインキュベーション事業に力を入れている同社。別領域でのファンド組成は考えているかというTechCrunchの質問に対しては、「現時点で他領域でのファンド組成は考えていないが、インターネット領域における事業開発が当社の強みなので、リアルな分野で強みを持っている企業との協業/連携は強化していきたい」と回答した。

出資先企業との事業開発を積極的に展開

国内では、楽天の「Rakuten FinTech Fund(ラクテン フィンテック ファンド)」の立ち上げを皮切りに、SBIインベストメントの「Fintechファンド」、みずほキャピタルのプライベートエクイティファンド「みずほFinTechファンド」など、フィンテックに特化したファンドの組成が目立つようになってきている。そのような状況の中で立ち上がったSV-FINTECH Fund。他ファンドと何か違いはあるのだろうか?

「多くのファンドがフィンテック関連のスタートアップへの投資によるファイナンスリターンがゴールになってしまいがちですが、SV-FINTECH Fundは投資だけでなく、出資先企業との実証実験や共同事業などの事業開発にも積極的に取り組んでいきます。そこが大きく違う点だと思っています」(SV-FINTECH Fund)

同ファンドは2017年夏に、GPとLP限定で米国の最新事例の研究と企業の壁を越えたオープン・イノベーションを加速させる目的とした約3カ月間のフィンテック集中合宿プログラムを実施する予定だという。

ちなみに投資の実行に関しては、国内のフィンテック分野のスタートアップが少ないこともあり、まずは投資先候補の創業支援、出資先企業との実証実験や共同事業を推し進めていくとしている。

VOYAGE GROUPが専業SSP「Kauli」を14.8億円で子会社化

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VOYAGE GROUPは22日、媒体社の広告収益最大化を支援するSSP事業を手がけるKauliの全株式を取得し、14億8100万円で子会社化することを明らかにした。両社のSSPとしての年間配信インプレッション(imp)数を合計すると月間400億impとなり、日本最大級の規模となるという。

Kauliは2009年2月に創業。翌2010年9月、日本初となるSSP「Kauli」をスタートした。VOYAGE GROUPによれば、Kauliの月間imp数は約150億に上る。2015年1月期の売上高は6億6900万円、営業利益は6300万円。

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VOYAGE GROUPは2010年にSSP「Fluct」を開始。現在は6500以上の媒体が導入し、月間imp数は250億。両社を合計すると400億impを超えるという。Kauliを子会社化した理由については、以下の3つの狙いがあると説明する。

1)SSPとしての配信imp数の拡大
2)Fluctの広告配信アルゴリズムの見直しによる配信単価の向上
3)Kauliの媒体社への配信単価の向上

1)については前述のとおりだが、2)に関してはデータマイニングに強みを持つKauliのノウハウを生かすようだ。3)としては、媒体特性に合わせたサイトの改善提案に強みを持つVOYAGE GROUPのノウハウをKauliに還元するそうだ。「国内SSP市場における売上シェアで圧倒的ナンバーワンを目指す」(VOYAGE GROUP)。

ヤフー、ミクシィ、グリーはどうやって構造改革を実現? 当事者が振り返る

PC時代の王者からスマホに舵を切ったヤフー、老舗SNSからゲームで再生を果たしたミクシィ、約1割の従業員を削減してネイティブゲームに注力するグリー――。こうしたネット企業はどのように構造変革を実現したのか。12月3日に京都で開催された「IVS Fall Kyoto 2014」でヤフー執行役員の小澤隆生氏、グリー取締役の山岸広太郎氏、ミクシィ前社長で現在はジョッキンゼー代表取締役の朝倉祐介氏らが「当事者」としての体験談を語った。

構造改革の「助っ人」には賞味期限がある

楽天からヤフーへと渡り歩いた小澤氏は、構造改革を成功させるには「トップダウン」が欠かせないと語る。「例えば孫さん。ソフトバンクはもともとソフトウェアの卸売や出版業の会社。ピボットどころかトラベリングですよ」と言い、強烈なトップダウンで変革を進めていくべきと話した。

ヤフーが新体制で宮坂学氏を社長に据えたように、人事制度を変えることも秘訣だという。「気持ちをいくら伝えてもそうそう変わらない。明日から変えるという時に人事を変えるのはロジカル。『自分じゃできない』という時は後継者を自分で指名して変わるのは有効」。

2006年にオリコンのデジタル化を進めるために招へいされた、ボストンコンサルティンググループの平井陽一朗氏は、「助っ人」には賞味期限があると語る。「私のように途中から入った人間は、3カ月くらいで期待された結果が出ないと『おつかれさん』となってしまう。すばやく勝つことが求められている」。

「当時のオリコンでうまくいったのは、着メロに数十人くらい貼り付けていたのを切った。最初に思い切ったことをやると、いなくなってほしくない社員も辞めたりするが、雨降って地が固まる。結果が出るとドライブがかかり、みんなゴキゲンになって連鎖反応が起きてくる。」

ボストンコンサルティンググループの平井陽一朗氏

社内外のアナウンスの難しさ

構造改革はポジティブな面で語られることが多いが、当然ながら「痛み」が伴う局面もある。ヤフーで構造改革に立ち会った小澤氏が頭を悩ませたのは、「PC時代の王者であっても今後は安泰ではない」という意識を、社内外をどのように話すべきかということだった。

「上場企業なので、真正面から『危ない』と話をすると『おいヤフー大丈夫か?』と心配されてしまう。その一方で、従業員には危機感を持ってもらいたい。なぜ構造改革をしなければならないのか。このまま行っても失敗しないかもしれないけれど、今の立ち位置はまずいと。」

ヤフーの小澤隆生氏

この発言には、事業再生の請負人としてミクシィ社長に就任した朝倉氏も強く同意する。「社内には厳しいことを言うが、あんまり外で『再生』と言ったりすると『ミクシィは死んでるのか』と思われてしまう。成長する目線があることを示しつつ、社内にはがんばってやろうと呼びかけるのが大事」。

ミクシィの事業再生が実際どうだったかと聞かれた朝倉氏は、「SNSで大成功してしまったがゆえに方針転換が極めて厳しかった」と振り返った。「戦略はシンプルで、既存事業の採算性をいかに改善するか。新しい事業をどう生み出すか。そのための施策を考え、社名変更すらも考えた」。

ジョッキンゼーの朝倉祐介氏

「古参」からの反発はどうする?

構造改革は、売上や利益が下がってから行うのでは遅すぎる。それでは経営陣はいつ決断すべきなのか。先回りして構造改革のタイミングを図ることが求められるが、これが難しいと小澤氏は語る。「自分たちの事業はうまくいってると思いたいもの。でも、一寸先は闇ですからね」。

実際に構造改革に踏み切ると、時として社内で反発が起こる。それが「古参」の社員だったりすることもあるが、こういったケースではどのように対応すべきか。VOYAGE GROUP社長の宇佐美進典氏は、マクロな動きが見えない人とは、いかに危機感を共有するかが重要だと話す。

「自分が感じるマクロな変化を言語化して共有するべき。現状の前提条件が伝われば、反対者も『じゃあしょうがない』となる。社内で説明する前には、ネガティブなオーラを出す社内のキーマンを先に押さえることも大事。『ネガティブなオーラを出さないでね』と握った上で、全社集会で発表した。」

VOYAGE GROUPの宇佐美進典氏

メディアで叩かれても耐える強さ

ここまでは各社の「成功体験」が語られたが、「あの時こうしていれば」という後悔はなかったのか?

2005年12月にサイバーエージェント(CA)の取締役に就任した経験を持つ宇佐美氏は、同社の組織作りを参考にすべきだったと振り返る。「僕らは事業戦略ばかり考えていたが、CAが力を入れていたのは、いかに良い人材を採用して事業を任せるかということ。熱い組織を作るのはもっと最初からやっていればよかった」。

グリーは事業急成長を背景に2011年以降、グローバルプラットフォームとネイティブアプリシフトに取り組むも失敗。同時にコンプガチャ問題が同時にコンプガチャ問題が起こって業績が悪化した。2013年には従業員の約1割を削減するなど事業再編し、現在は再びネイティブゲームに注力している。山岸氏は当時を振り返って「組織のストレス耐性を作るのが大事」と話す。

「まず、外から言われることに強くなること。メディアで叩かれると社員が傷ついてダメだと思ったりするが、自分たちがやっていることに誇りを持つ強さが必要。もう1つは、人の出入りに強くなること。ほとんどの人が辞めない会社から、多くの人が辞める会社になって僕らも傷ついたが、志やその時にやることに合わなければ、去る人を前向きに送り出せる風土を作らなければ、変革には耐えられない。」

グリーの山岸広太郎氏