コンビニ市場で存在感を高めたい食品デリバリー事業の英Zappが約231億円調達

2020年にロンドンでスタートしたインスタント食料品配達スタートアップのZapp(ザップ)は、Getir(ゲチル)、GoPuff(ゴーパフ)、Jiffy(ジフィー)、Deliveroo(デリバルー)、その他オンデマンドコンビニ市場のシェアを狙う多くの企業と真っ向勝負するために、かなりの額の資金調達を行った。シリーズBラウンドで2億ドル(約231億1900万円)を調達した同社は、ホームの市場での存在感を高めると同時に、共同創業者で事実上のトップであるJoe Falter(ジョー・ファルター)氏のいう「メガシティ」に進出するために使うとしている。Zappは現在、ロンドンに加え、マンチェスター、ケンブリッジ、ブリストル、アムステルダム、ロッテルダムで事業を展開しており、パリではソフトローンチを実施中である。

Zappによると、このラウンドはLightspeed(ライトスピード)、468 Capital(468キャピタル)、BroadLight Capital(ブロードライト・キャピタル)が共同でリードし、以前の支援者でもあるAtomico(アトミコ)、Burda(ブルダ)、Vorwerk Ventures(ボーワー・ベンチャーズ)も、F1チャンピオンのLewis Hamilton(ルイス・ハミルトン)氏と並んで参加している(したがって「超速」サービスを売りにする会社のブランドとして、かなり適切だと思う)。

しかし、このラウンドについて報じられているのは、それだけではない。PitchBookは、2021年12月にこの投資の第1トランシェがクローズした際「ライバルのGorillas(ゴリラズ)」もその一部であったと述べている。そして先週、Sky Newsは「シンガポールの国営ファンド」も後援者に含まれていると報じた。現地時間1月28日のZappの発表では、どちらも言及されていない。我々は、どちらかが実際に関与しているかどうか確認するよう同社に求めたので、詳細が分かり次第、更新する。

Gorillasは、2021年秋に10億ドル(約1156億円)を調達したドイツのスタートアップ企業で、ライバルのGetir同様、その資金の一部を使って、パリのFrichti(フリッチ)など、他の市場で競合になりそうな企業を買収したり投資したりしている。ここに登場するのには、ありえない名前ではないだろう。また、デリバリー企業はお互いに投資し合ってきたこれまでの流れがあり、ひょっとしたらさらなる統合を前にした最初の動きなのかもしれない。Delivery Hero(デリバリー・ヒーロー)はGorillasを支援し、DoorDash(ドアダッシュ)は同じくドイツのスタートアップ企業Flink(フリンク)に投資している。

Zappは評価額を公表しておらず、これまでに処理した顧客や注文の数についても語っていない。現在、同社は3億ドル(約347億円)を調達している。

スタートアップや既存の食料品メーカーの間で、コンビニエンスストア市場で主要な存在になりたいという意欲は強く、コンビニの食料品部門は、英国だけでも2021年に約430億ポンド(約6兆6580億円)の価値があると推定されているその規模を考えると、複数の勝者が存在する余地もありそうだ。

しかし、この物語がどのように展開されるかについては、まだ多くの疑問が残っている。最終的にどれだけの消費者が、どれだけの期間、これらのサービスを利用するのだろうか?典型的なインスタント食品会社が利益を上げるには、どれだけの顧客が必要なのか?また、1つの都市に何社のデリバリー企業が存在できるのだろうか?

しかし、投資家は、この分野でより興味深い事業を支援することに非常に意欲的である。Zappの今回のラウンドとGorillaの2021年の10億ドル(約1156億円)の資金調達に加えて、Flinkは12月に7億5000万ドル(約867億4600万円)を調達し、インドのZepto(ゼプト)は1億ドル(約115億6600万円)を、Jokr(ジョーカー)は2億6000万ドル(約300億7200万円)を調達し、GoPuffとGetirはともに数十億ドル(数千億円)調達している。

Zappは、顧客サービス、注文を満たすための大規模な流通センターと組み合わさった、戦略的に配置された小規模なダークストア(「ザップストア」)のネットワーク、幅広い商品構成(50種類のアイスクリーム、21ブランドのテキーラ)と同時に、ユーザーが直前に実際に欲しいだろと思われる商品の組み合わせ、卸業者だけでなくブランドと直接つながるサプライチェーンという、これらのバランスがとれた、クイックデリバリーの分野で長く活躍するための方式を発見したと信じている。

これは、例えばGoPuffやFlinkのように、大衆消費者が、毎週大きなバスケットで買い物をするよりも、より頻繁に、より少量のインスタント食料品で買い物をするように説得できると考えているのとは対照的だ。

「私たちは、顧客体験を重視しています。それが、ここでの勝利につながるのです」とファルター氏はインタビューに答えている。彼は、競合他社がユーザーに複数の割引を提供することで、注文を事実上補助することで市場シェアを狙うことを選択したことが「おかしい」と述べた。「私たちはクーポン券や割引商品の提供はしていません」と述べ、すぐさま修正するように「最初の注文は50%オフですが、それ以外何度もクーポン券を提供するということはありません。私たちは、顧客体験、より良い製品を時間通りに届けるサプライチェーン、そして、週1回の買い物を邪魔するというよりも、コンビニ関連の品揃えを信じています」と述べた。

その平均注文額は、Gorillasが1件あたり「15ポンド(約2300円)以下」であるのに対し「20ポンド(約3000円)台半ば」であると彼は言っている(Zappが提示した数字)。また、Zappの注文の3分の2は、利益になっているという。

平均受注額の低い会社については「私が彼らなら、少し不安になるでしょう。持続可能な基盤とは言えません」と述べた。

多くのインスタント食品会社が、新型コロナウイルスのパンデミックが世界を覆ったたときに出現し、その本領を発揮した。このラウンドは、Zappがそれが終わった後の可能性を持っているということを示すための準備をするということだ。

Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)のパートナーであるRytis Vitkauskas(リティス・ヴィトカウスカス)氏は「コンビニエンスストアは、完全にオンライン化される最後の小売セグメントの1つですが、ロックダウン後に本当にその瞬間を迎えようとしています」と声明で述べている。「忙しい日常が戻ってきたとき、人々は迅速なデリバリーで『今を生きる』ことができるようになります。Zappは、この消費者行動を活用するために一から構築され、その結果、並外れた顧客ロイヤリティを獲得しています。私たちは、コンビニ市場のお客様にまったく新しい体験を提供し、長期的な投資を続ける同社の歩みに参加できることをうれしく思います」と述べた。

編集部注:TechCrunchのライターを長く務めたSteve O’Hear(スティーブ・オヒア)氏は、現在Zappに在籍していますが、そのことはこの記事の報じ方に影響を与えるものではない。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

「ダークストア」から食料雑貨を20分以下で届ける英ZappがLightspeedとAtomicoに支援されシリーズA調達

現在ロンドンを中心に、食料雑貨をオンデマンドで注文できる宅配サービス専用店舗(ダークストア)を展開している数多くのスタートアップの1つであるZapp(ザップ)が、大手VCから新たな資金調達を行ったことがTechCrunchの取材で明らかになった。

複数の情報筋によると、シリコンバレーのLightspeedとヨーロッパのAtomico(Skypeの創業者Niklas Zennström〔ニクラス・ゼンストローム〕氏が立ち上げたVC)が、Zappの未発表のシリーズAに投資したという。同じ情報源から、Zappが初期のシードラウンドを含めて総額約1億ドル(約110億7000万円)を調達したことも確認されている。

今回のラウンドにはLightspeedとAtomicoに加え、468 Capital、Burda、さらにはMPGIのCEOであるMato Peric(マト・ペリク)氏、元Amazon UKのCEOであるChristopher North(クリストファー・ノース)氏、WestwingのCEOであるStefan Smalla(ステファン・スマラ)氏などの著名なエンジェルが出資している。ある情報筋によると、ZappのシリーズAは、Atomicoのコンシューマー向け事業パートナーであるSasha Astafyeva(サーシャ・アスタフィエバ)氏が、同VCに加わってから初めて担当した案件だという。

TechCrunchがシリーズAと投資家のリストについて取材を求めたところ、Zappは声明でこう述べた。「当社はお客様に喜んでいただくことに絶え間なく注力しており、通常、資本構造についてはコメントしません。2021年、ロンドンをはじめとする何百万人ものお客様にZappをお届けできることをうれしく思います」。

2020年夏に設立されたZappの創設者は、Jumia(ジュミア)の創設チームの一員としてオンデマンドサービス事業をIPOまで導いたJoe Falter(ジョー・ファルター)氏と、Amazon(アマゾン)のシアトル本社でプロダクトリーダーを務めた後、GoButlerを創設し、Rocket Internetでいくつかのベンチャー企業のスケーリングを手がけたNavid Hadzaad(ナヴィド・ハドザード)氏だ。リーダーシップチームには他にも、Deliveroo、Just Eat、Domino’s(ドミノ・ピザ)、Tescoなどの出身者が名を連ねている。

Zappは独自の小規模なフルフィルメントセンターを設置することで、垂直型の「ダークストア」モデルを展開している。ロンドンには、すでにいくつかの拠点がある。Kensington、Chelsea、Fulham、Notting Hill、Hammersmith、Shepherd’s Bush、Shoreditch、Islington, Angelなどだ。

Zappは、Deliverooのようなギグエコノミーモデルを採用せず、配達要員を直接雇用している。また、持続可能性を重視しており、すべて電気車両を使用している。

オンラインの情報や関係者の話を総合すると、Zappは生鮮食品や食料品よりも米国のgoPuffのような利便性を重視しており、従来の食料品店を駆逐するというよりも、衝動的な購入をターゲットにしているようだ。これは他の多くのダークストアとは対照的だが、複数のプレイヤーが提供する商品は明らかにクロスオーバーしているのも確かだ。

ロンドンではZappの他に、Getir(ゲッティアー)、Gorillas(ゴリラズ)、Jiffy(ジフィー)、Dija(ディジャ)、Weezy(ウィージー)、などのダークストア事業者がしのぎを削っている。また、陣取りが加速する中で、場合によっては大幅なディスカウントを行うなど、調達した多額の資金を投じて展開しているところもある。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Zappロンドン資金調達フードデリバリーダークストア

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Aya Nakazato)