カメラマンなどのプロフェッショナルと依頼者をつなぐマッチング・プラットフォーム「Zehitomo(ゼヒトモ)」。そのプラットフォームを運営するZehitomoは7月26日、500 Startups Japan、Draper Nexus Ventures、アコード・ベンチャーズ、KLab Venture Partners、複数の個人投資家から総額1.5億円を調達したと発表した。
Zehitomoは、カメラマンやパーソナルトレーナーなどのプロフェッショナルと、仕事の依頼者であるユーザーとをマッチングするプラットフォーム。
2016年10月のサービスリリース以降、約6800人のプロがZehitomoに登録し、これまでの提案件数は1万件だ。提案総額は3.5億円以上だという。
同プラットフォームで依頼できるカテゴリーの数は600以上。記念日の撮影やヨガのパーソナルトレーニングなど、その種類は幅広い。依頼者がプラットフォーム上で希望の日時、場所、条件などに回答すると、プロフェッショナルからチャット形式で見積もり提案が届くという仕組みだ。
1つの案件に応募できるプロの数は最大5人までに制限されている。また、マッチングが成立したときの仲介手数料や登録費用、月額料金などもかからない。ではZehitomoがどこで収益を得るのかというと、彼らは見積もりを提案する際、プロに対して課金している。1回あたりの費用は平均500円程度だ。
仲介手数料モデル VS 応募課金モデル
この“応募課金モデル”とも呼べるビジネスモデルは、クラウドソーシングで主流の“仲介手数料モデル”とは対極の位置にある。日本で応募課金モデルを採用しているサービスには、先日TechCrunch Japanでも紹介したミツモアがあるし、同様に個人とプロのマッチング・プラットフォームを手がけるアメリカのユニコーン企業Thumbtackもこのモデルを採用している。
Zehitomo代表のジョーダン・フィッシャー氏は、このモデルの利点について「見積もりの提案に費用かかるため、本気で仕事をとりにくるプロからの提案が集まる。また、応募できるプロの人数に制限をかけることで、マッチングの確率も高まる」と話す。
そうは言っても、応募課金モデルならではの問題もあるように思う。プロがいくら本気でも、「とりあえず依頼しとくか」くらいの気持ちの依頼者ばかりが増えれば、応募費用だけがかさんでしまう。見かけ上は5分の1の確率で選ばれるかもしれないが、蓋をあけてみれば5人いずれのプロも選ばれない、なんてこともあり得る。
見積もり提案≒ターゲット広告
これについてフィッシャー氏に聞いたところ、「Zehitomoの構造上、その問題はたしかに発生してしまう。だが、この見積もり提案を『非常に確度の高いターゲット広告』と考えてほしいと思っている」と答えた。
なるほど、わざわざカテゴリーを選択して依頼をした以上、度合いは違えど、そこには“誕生日の写真を撮ってほしい”などの明確なニーズがある。それに対して直接リーチできる見積もり提案は、たしかに自分の細かなプロフィールが付いたターゲット広告のようなものだ。
もちろんコンバージョンしない例はある。でも、個人事業主であるプロフェッショナルからすれば、ただでさえ少ないリソースを使って効果があるか分からない広告に手を出すよりも、案件の応募にお金を使ってみるのもアリなのかもしれない。
それでもなお、この“コンバージョン率”を上げるための施策は必要なわけだが、フィッシャー氏は、「そのために重要なのはプロ側の教育だ。しっかりとプロフィール欄を埋めて、自分をアピールした方がマッチング率もあがる」と語る。
Zehitomoはプラットフォームに「プロフィール欄を埋める」などの各種タスクを用意した。それらのタスクをクリアするごとに、応募費用に充てられるサービス上の通貨をプレゼントするという施策を実施している。
“The Biggest Startup You Never Heard Of.”
2015年9月、Zehitomoと同じ応募課金モデルを採用するThumbtackは、12.5億ドルのバリュエーションで1億2500万ドルを調達し、ユニコーン企業に仲間入りした。
そのニュースを伝えたForbes誌は、その当時のThumbtackに登録するプロフェッショナルは20万人で、年間の流通総額は10億ドルだと報じている(ThumbtackのWebサイトによれば、現在の登録プロフェッショナル数は25万人)。
しかしForbes誌は、それでもThumbtackは黒字化していないとも報じている。フィッシャー氏によれば、このビジネスで一番コストがかかるのは依頼者の集客なのだとか。Thumbtackも、その集客のために多額の投資をしているのではないかと彼は考えている。
「Thumbtackに欠けているのはブランド力だと思う。本国のアメリカでも、一般のユーザーに広くその名前が知られているわけではない。ユーザーが誰かに仕事を依頼したいとき、彼らの頭にThumbtackの名前が浮かぶわけではなく、Googleで先頭に表示されるのがThumbtackだからユーザーはそれを選ぶ。『The Biggest Startup You’ve Never Heard Of』なんです」とフィッシャー氏は語る。
今回1.5億円を調達したZehitomoは、その資金をサービスのさらなる開発に充てるという。また、サービスの基礎を固めたあとは、ブランド構築にフォーカスしていきたいとフィッシャー氏は話す。この種のサービスが苦労する集客の問題が解決できるかどうかも、このブランド力を構築できるかにかかっているだろう。
中列、右から3番目がZehitomo代表のジョーダン・フィッシャー氏