「リッチなハイヤー体験を誰にでも」Uberがついに東京で正式ローンチ、日本上陸のキーマンに勝算を聞く

Uber日本法人の塩濱剛治社長

スマートフォンアプリでハイヤーを配車できる「Uber(ウーバー)」がいよいよ東京で本格的に始動する。昨年11月より「ソフトローンチ」という位置づけで東京・六本木地域を中心に試験運用を行っていたが、3月3日より六本木、渋谷、恵比寿で正式にサービスを開始することが発表された。タクシー業界の黒船とも言われるUber。日本法人を立ち上げた塩濱剛治社長に勝算を聞いた。

Uberは全米都市部やヨーロッパ主要都市、上海やソウル、台北など31カ国81都市でサービスを展開している(3月3日時点)。アプリではハイヤーを配車でき、目的地までの見積もり額、ハイヤーの現在地や到着にかかる時間などを確認することが可能。決済はクレジットカード情報を登録したアプリで行い、降車後は領収書がメールで送られてくる。東京では基本料金が100円、1分ごとに65円、1kmごとに300円がかかる(最低料金は800円)。

日本上陸にあたっては、法規制をクリアするために第2種旅行業の資格を取得。その上で、ハイヤーを保有するタクシー会社と提携し、ハイヤーと運転手を提供してもらっている。Uber自体はハイヤーを持たず、「仲介業者」として配車している。現在の提携先のタクシー会社やハイヤーの台数は「徐々に増えている」(塩濱氏)というが、具体的な数値は明らかにしていない。収益はハイヤー会社と分配するが、その比率も非公表となっている。

Uberは黒塗りのハイヤーとお抱えの運転手といった高級感のあるサービスが特徴。米国での成功の背景には、流しのタクシーが拾いにくかったり、接客態度の悪いドライバーがいたりする環境がある。これに対して、東京は公共交通機関が充実しているし、ドライバーの接客の質も平均して高い。そんな市場で米国ほどの成功が見込めるのか? 塩濱氏は勝算を次のように語る。

「例えば、私が何かの記念日に家族を連れて食事をするとしたら、タクシーを呼ぶよりも、ハイヤーが家の前まで来てくれて、運転手さんがうやうやしくドアを開けてくれるのは、ちょっとリッチな気分で気持ちいい。こうした体験は従来、大企業の役員クラスしかできなかったが、Uberがあれば誰でもそれができる。プレミアムな選択肢を提供したい。今までハイヤーを使っている人というよりも、新たな顧客層を開拓していけると思っている。」

11月以降のソフトローンチでは、IT・ネット業界の起業家や関係者の利用が多く、こぞって数千円分が無料で乗れるプロモコードをFacebookに投稿していた。見方によっては「ネタで乗車しただけ」とも捉えられるかもしれないが、リピート率は半数を超えているのだとか。具体的な数値目標は掲げていないが、今後は主に起業家や企業のエグゼクティブ、海外でUberに慣れている観光客などを対象にアプローチしていきたいとしている。

タクシー業界の黒船とも言われるUber。実際にサービス開始以降は米国でタクシー会社と衝突したり、訴訟沙汰になったりを繰り返してきた経緯もあるが、タクシー業界をディスラプト(破壊)するつもりはないと塩濱氏は語る。「新しいことを始めると拒絶反応は出てくるもの。私達としては、Uberと組むことでタクシー会社のハイヤーと運転手の稼働率を上げませんかと提案している。競合というより協業のスタンス」。

3日に開催された記者発表会では、アメリカ大使館商務部のアンドリュー・ワイレガラ氏が「Uberは黒船ではない」として日本企業にとって良きビジネスパートナーになるとコメント。また、元ソニーCEOで現在はクオンタムリープ代表取締役の出井伸之氏は、「今までの生態系と違うものが来ると違和感を感じる人もいる。iPodが出た時に音楽の権利関係ではどうなんだという声もあったが、ユーザーの立場で便利なものは普及する。Uberも世界的に見てものすごく便利」とUberの船出を後押しした。


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TechCrunch Japan

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