今年のSXSWで注目を集めた、日本発の農業ガジェット「SenSprout」がIndiegogoでキャンペーンを開始した。
SenSproutは、センサーを使って土壌に含まれる水分をモニタリングできるガジェット。双葉の形を模していて、根っこに当たる部分には導電性のインクで電子回路を印字。これが土の中に含まれる静電容量を測定する。この数値の変化によって、土壌の水分がわかる仕組みだ。葉っぱにあたる部分にも同様の印字があり、葉に含まれる水分を検知する。
電子回路の印字には、昨年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルで優勝した「AgIC」のプリント技術を採用。家庭用のインクジェットプリンターに、市販されているAgICの銀ナノ粒子インクカートリッジを装着するだけで、専用紙に電子回路を印字できる。(Indiegogoでは印字済みのセンサーがセットになっている)。
もう片方の葉っぱには、土壌と葉っぱに含まれる水分量を表すLEDライトを搭載。水分が足りなければ赤、ちょうどよければ青、多すぎる場合は緑に点灯する。給電は単3電池が1本のみで、約1年使えるという。今後は水分量をBluetooth経由で送信し、PCやスマートフォンでも水分量を確認できるようにするそうだ。
土壌の水分を計測するセンサーは既存製品も存在するが、開発元であるSenSproutの三根一仁社長は、「センサーだけで約40〜50万円、大規模な農地に導入するとなると1000万円ぐらいかかることが珍しくない」と指摘する。
一方、SenSproutは印刷技術を使って電子回路を作れるため、価格は早割で1ロットあたり45ドルと、低コストで製作できるメリットがあるのだという。
三根氏はスタートアップ支援を手がけるインスプラウトの社長でもあり、SenSproutには彼とともにネット家電ベンチャーのCerevoを立ち上げたメンバーが名を連ねる。
例えば、東京大学で特任研究員として農業を研究する西岡一洋氏、同じく東大で電子情報学を教える川原圭博准教授。両名が土壌の水分計測に関する基礎技術を研究していて、これをSenSprout社で製品化したかたちだ。
国内のクラウドファンディングではなくIndiegogoに出した理由は、「干ばつ被害が深刻な米国西海岸など、海外需要の高さを見込んだため」と三根氏。主な用途は家庭菜園やハウス栽培を想定しているが、今後は根が深い農作物が植えられた土壌の水分をモニタリングする“プロ仕様”のSenSproutも投入したいという。
「世界の生活用水の7割は農業に使われている。例えば食糧危機になって今よりも2倍の農作物が必要になったとしても、それをまかなえる水がない状況。SenSproutがあれば水の使用をもっと効率化でき、世界の農業を変える可能性がある。」