「既存プレイヤーをひっくり返す」オンライン学習塾のアオイゼミが1.2億円調達

中高校生向けオンライン学習塾「アオイゼミ」を運営する葵が4日、ジャフコから1億2000万円の第三者割当増資を実施した。オンライン学習塾は教室のテナント代を抑えることで、生徒の教育コストを下げられるのが特徴。一般の学習塾もネット化を進めれば良さそうだが、オンライン学習塾の月額料金は高くても数千円程度。その倍以上の授業料を取る学習塾からしてみれば、既存の事業をカニバリズムで破壊してしまうことになりかねないのでアクセルを踏み込めないのだと、葵代表取締役の石井貴基氏は話す。7月に福岡で開かれたイベント「B Dash Camp」で「既存プレイヤーを一気にひっくり返したい」と意気込んでいたのが印象的だった。

アオイゼミは一般の学習塾のような教室ではなく、都内にある小さなスタジオで毎週月曜日から木曜にかけてライブ授業を配信している。中学生向けには日替わりで数学、社会、理科、英語の授業があり、金曜日は特別授業や再配信を行っている(国語は不定期)。会員登録をすれば、PCやスマホアプリから無料でライブ授業を受講でき、現在は3000人以上のユーザーがリアルタイムで視聴している。

有料会員になれば、過去に配信された3000件以上の授業がいつでも見られるほか、授業後の講師への個別質問が可能となる。月額料金は1教科2000円、2教科3500円、3教科4500円、4教科5000円。プレミアム会員には、成績が上がらなかった場合に全額返金するプログラムも用意している。

講師は社会を担当する石井氏のほか、有名予備校で教えた経験がある専属スタッフや現役大学生が担当。学習塾や通信教育でよくある「第一志望合格率」は86.3%を謳っている。今回調達した資金では、高校生向けの教材コンテンツを増やすとともに、システム開発を強化するためにエンジニア採用に注力する。9月上旬には、生徒の学習時間を把握できる保護者向けのアプリをリリースする予定だ。

生徒の心が折れないコミュニティを育成する


オンライン学習はやる気が続くかどうかが懸念されるところでもあるが、アオイゼミはユーザーが自主的に参加したくなる仕組みづくりで継続率を上げようとしている。例えば、ライブ授業中にはコメント欄を通じて講師にリアルタイムに質問できるほか、「なるほど!」や「わからないー」といった感情を表すスタンプが飛び交う。動画プレイヤーにテキストが表示されないニコニコ動画のような感じのインターフェイスは「みんなで勉強している一体感」を生み出し、生徒のやる気を刺激するのだという。

生徒同士が交流するSNSでは、勉強だけでなく遊びや恋愛に関する話題も投稿されるが、「学校の放課後感があっても構わない」と石井氏。「またアオイゼミでみんなと一緒に勉強しようか」と思ってもらうためのコミュニティ育成を重視しているのだという。「勉強だけが目的だと、どうしても途中で心が折れてしまいがち。この辺は実際の学習塾のマネジメントと変わりません」。志望校ベースのSNSでは生徒同士が励まし合ったり、切磋琢磨していて、実際に継続率向上につながっているそうだ。

既存のプレイヤーをひっくり返したいうアオイゼミだが、オンライン学習塾の競合も少なくない。例えば、リクルートの大学受験生向けサービス「受験サプリ」は、無料で大学入試の過去問をダウンロードしたり、大学入試センター試験の模擬テストを受けられる。月額980円を払えば大手予備校講師による動画を視聴可能で、無料ユーザーを含めて累計利用者は108万人に上る。教育専門出版社の旺文社は月額980円で600本以上の動画授業が見放題の「大学受験まなぞう」、個人情報の大量漏えいが話題となっているベネッセもライブ授業サービスを手がけているほか、現役大学生のボランティアが講師を務め、誰でも無料で授業を受けられる「manavee(マナビー)」などもある。


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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。