「Amazon Pay」がQRコード決済参入で戦国時代に突入か。NIPPON PAYとタッグを組み、狙うは小規模店舗

eng-logo-2015アマゾンジャパン(Amazon.co.jp)は本日(2018年8月29日)、同社の決済サービス「Amazon Pay」において、QRコードを用いた実店舗での決済対応開始を発表しました。

LINEの「LINE Pay」、NTTドコモの「d払い」、ソフトバンクとYahoo!の「PayPay」など、有名企業の新規参入が相次ぎ、注目を集めているQRコード決済。”黒船”となるAmazon Payは、「利便性」と「決済手数料0%」を武器に激戦の市場へ切り込みます。

Amazon PayのQRコード決済は、全国の数十店舗の小売店からスタート。小売店向けサービスを手がける「NIPPON PAY」の加盟店から、順次拡大していく見込みです。

AmazonショッピングアプリでQRコードを表示

「Amazon Pay」は、Amazonアカウントに登録された支払い情報を利用する決済サービスです。これまでは、Amazon以外のショッピングサイトやWebサービスの決済手段として提供されてきました。

今回発表されたAmazon PayでのQRコード決済は、Amazonアカウントの支払い情報を使って、実店舗での支払いができるというもの。アプリでQRコードを表示して、店舗側の端末に読み込ませると支払いが完了します。

最大の売りはAmazonらしく「購入の手間を省く」という点。支払い用のQRコードは、Amazon公式の「Amazonショッピングアプリ」から表示できます。

(すでにAmazonをヘビーに使っている人であれば)余計なアプリの追加も、面倒な支払い情報の設定をする必要もなく、街中でのキャッシュレス決済ができるようになります。

決済はAmazonアカウントに登録したクレジットカードの情報を用いて行われます。Amazonアカウントに登録できるものであれば、デビットカードなども利用可能ですが、Amazonポイントは利用不可。決済履歴はAmazonのサービス上で確認できるほか、決済時にプッシュ通知が届くとのことです。

決済用のタブレット端末で金額を入力後、購入者のQRコードを読み取れば決済完了

NIPPON PAYとタッグ、狙いは小規模店舗

Amazon Payの加盟店向けサービスを提供するのは、NIPPON PAYというベンチャー企業。同社はタブレット端末を活用した小売り店舗向けサービスを手がけています。

アマゾンジャパン Amazon Pay 事業本部 本部長の井野川拓也氏(左)と、NIPPON PAY 代表取締役社長兼CEOの高木純氏

決済用端末となるNIPPON PAYのタブレットは、店舗向けに無料でレンタルされます。決済サービスや免税手続きのサポート、通訳といったサービスがこのタブレットで利用可能となっています。

決済手段では、各種クレジットカードブランドのほか、WeChat Payを初めとした中国の3大QRコード決済、NTTドコモの「d払い」、メタップスの「Pring」といったQR決済サービスに対応しており、「Amazon Pay」のQRコード決済が今回このラインナップに加わる形です。

NIPPON PAYが加盟店に無料でレンタル提供している決済用タブレット「NIPPON Tablet」(右)

加盟店は「NIPPON Tablet」を使い、キャッシュレス決済やインバウンド向けサービスなどの提供が可能となります

QRコード決済においては新参となるAmazon Payですが、「決済手数料0%」キャンペーンで導入拡大を狙います。このキャンペーンは2020年末まで加盟店の決済手数料が無料となるというものです。

このキャンペーンでは、本来加盟店が支払う必要があるAmazon Payの決済手数料(決済金額の3.5%)を、NIPPON PAYが肩代わりして負担する形で実施。NIPPON PAYにとっては、「Amazon Pay」を目玉サービスとして、加盟店の導入を促し、その他のサービスで収益を得る狙いがあります。

NIPPON PAYが狙うのは、未だに現金決済にしか対応していない、POSレジ未導入の個人商店。タブレットの無料レンタルを強みとして、全国120万店舗以上あるとされる店舗の開拓を狙います。

NIPPON PAYのターゲットは、未だ現金決済が主流の小規模店舗とのこと

ちなみにNIPPON PAYのタブレットは、2018年8月時点では全国の1万4851店舗に導入済み。2018年度末には5万6000店舗まで導入拡大予定とのことです。全国の地方自治体などとの実証実験を通して、商店街での導入を進められています。

Amazon Payのサービスを導入するかはNIPPON Payの加盟店の選択次第ですが、浸透していくのは間違いないでしょう。

地方自治体や早稲田大学との実証実験を行うなど、商店街全体のキャッシュレス化も進めているといいます

実は「日本発」 Amazon Pay店舗決済

世界中で多くのサービスを展開するAmazonですが、実店舗でのAmazon Pay支払いサービスは、米国の直営店などでしか提供されていません。小売店舗向けの決済サービスかつ、期間限定でないものとしては、今回が初めてだといいます。

PC、スマートフォン、スマートスピーカーで展開するAmazonだが、直営店舗以外での実店舗決済サービスは初めて

今後のAmazon Payの展開で気になるのは、コンビニなど、大規模なチェーン店での対応。
この点について、アマゾンジャパンでAmazon Payの責任者を務める井野川拓也氏は、「コンビニでの展開はPOSレジ対応などの開発の必要もある。「NIPPON Pay以外の販売パートナーとの提携もあり得る」としつつも、まずはNIPPON Payとの販売で導入実績を重ねたい」と様子見の姿勢を示しました。

Amazon Payのオンライン決済は2015年から日本で展開され、すでに数千社に導入されています

日本のQRコード決済市場の盛り上がりが”黒船”Amazonを動かしたことで、「キャッシュレス戦争」も過熱の様相を呈してきました。今後もソフトバンク&ヤフーの「PayPay」や、ゆうちょ銀行の「ゆうちょ Pay」など、多くのサービスの参入が見込まれています。

筆者も一消費者として、決済の手軽さやポイント還元といったキャッシュレス決済のメリットを享受しています。決済サービス間での競争はもちろん歓迎ですが、これだけ増えてくると決済手段を選ぶのも一苦労となりそう。手間を省くためのキャッシュレス決済で、利用する店ごとにいくつものアプリを用意する手間も本末転倒に思えます。このあたりでサービス間の相互利用などの動きも広がりも期待したいところです。

Engadget 日本版からの転載。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。