【コラム】自分の価値観を自ら立ち上げたスタートアップの社風に織り込むための3つのアドバイス

「模範を示してリードする」というフレーズは聞いたことがあるだろう。しかし「価値観を持ってリードする」というフレーズは聞いたことがあるだろうか?

私は常に私の価値感を指針として用いつつ、模範を示して会社をリードしてきた。しかし、私自身が最初の会社を立ち上げるまでは、それらの価値観を会社に根付かせることの重要性を完全には理解していなかった。

「誠実さ」「個人」「影響力」「革新性」は私の意思決定と社員の行動を日々推進する「4つの価値観」である。これらは単に本社の壁や、リモート社員のマウスパッドに書かれている言葉というだけでなく、社員全員が実際に実行して血の通ったものにすべき価値観である。これらの4つの価値観は過去2年にわたり、私や家族、会社の責任者たちを導いてくれる指針として、ますますその重要性を増している。

多くの企業が「職場に戻る」(仕事は中断したわけではないので「仕事に戻る」ではない)計画を立てているが、私たちは、ただ単に以前の状態に戻るべきではない。そうではなく、価値観を羅針盤として、みなの成功につながる何事かを再設計することをお薦めしたい。こうすることで、社員たちは単にこの厳しい時期を乗り切ることができるだけでなく、職場で十分に能力を発揮できるようになると思うのだ。

私の経験でいうと、価値観でリードするということは、最良のリーダーシップのとり方であり、この目標を達成するためには3つの方法がある。

旧弊な職場のヒエラルキーを排除する

あなたはキャリアのどこかの時点で(卒業直後かもしれないし、卒業から数年後かもしれないし、その中間かもしれない)、下位レベルの社員を敬意に欠ける態度で扱うのが「あたりまえ」の会社を経験したのではないだろうか。「下積み」を是とするようなこうしたタイプの会社は、これらの下位レベルの社員に単調な辛い仕事をあてがう傾向が高く、結局彼らは燃え尽きて会社を離れてしまう。

あるいは、彼らがなんとかマネージメントレベルのポジションに這い上がることができた場合、彼らは新しく入ってきた社員を低く見ているためにこのサイクルが続き、健全な文化は損なわれていくことになる。

これは正しいやり方とはいえないだろう。

リーダーとして、職場に受容性、サポート、協調性、チームワークを望むなら、あなたは、今すぐにも前例を示すべきだ。つまり、職階に付随するヒエラルキーを除去し、 役職に関係なく功績に基づいて社員を評価する会社であることを明確にするのである。会社全体があなたの価値観に基づき、使命を実現するために団結する1つのチームである。このような社風を確立して全員が会社の行く末に責任を持つようになれば、誰も他の社員を粗末に扱うことはなくなるだろう。

象牙の塔的な考えにとらわれないようにしよう

私は働くようになってすぐ、可能な限りオフィスを誰かと共有するようにした。オフィスは、家具や窓からの景色も含め、人々から見栄えのよいすてきな空間と思われないものにするよう心がけた。現在はCEOであるが、社員の中には私のオフィスをクローゼットと呼ぶものもいる。しかし、仕事を成し遂げるには十分なオフィスである。

このような単純なシグナルは強力なメッセージとなる。そして、シグナルは一貫していなければならない。リムジンに乗らず、安い車を借りる。ファーストクラスに乗らずエコノミークラスに乗る。ささいなことに聞こえるかも知れないが、CEOが遭遇する最大の落とし穴の1つは、象牙の塔的考え方に陥ることだ。

経験を通して社員を知るための努力をしよう。「現場に足を運ぶマネージメント」戦略を実行しよう。一日中オフィスに座っているのを避け、部屋から出て社員の様子を見て回ろう。彼らの机に立ち寄り、話しかけよう。ランチは休憩室で取り、新人研修にも顔を出そう。

まだ物理的にオフィスに戻っていない場合はどうすればよいだろう?その場合は、SlackチャンネルやZoomミーティングを行おう。私は社員のベービーシャワー(赤ちゃん出産前の前祝パーティー)に、Zoomで突撃をしかけたことがある。参加者のお祝いの言葉に耳を傾けることができ、私にとっても彼らにとってもよい一日になった。職場にいて、そこを人間味のある空間にしよう。こうした努力は必ず報われるものだ。

職場慣行に配慮し一貫性を保つ

社風は会社のトップによる影響が大きい。あなたが思い描く社風は、あなたが社員に実行するようにと要求する慣習を彼らが納得して受け入れる場合にのみ、実現するものだ。より重要なのは、これらの取り組みや慣行を自ら全力で行わなければ、堅実な文化を育むことができないということだ。

例えば、私の会社 SailPointでは2020年、Free2Focusと呼ばれる新たな取り組みを行った。これは、1週間に2度、Free2Focusの時間帯に会議を、数時間を入れないようすることで、Zoom疲れを防ぐだけでなく、散歩するなり、子どもの勉強を助けるなり、カメラを少しの時間切るなり、個人にあった方法で一息ついてもらうための取り組みである。

1週間のうち一息つける時間を社員に取って欲しいと思うなら、私自身も同じことをする必要があると私は気づいた、つまり、Free2Focusの時間帯にはミーティングを入れず、1日中メールを送り続けるのをやめ、社員が必要な休憩を取っているからといって批判するのをやめるということである。私はほとんどの場合、社員が自分の時間に自分なりのやり方で仕事を達成していると信じている。こうして信用すれば、社員の業績は確実に上がるのだ。

CEOであるということは、ビジョン、製品、アイディアを築く以上のことが求められる。それは、士気や尊厳を損なうことのなく相互の目標を達成するために、価値観を持って人々を導くということである。仕事に付随するさまざまなことに気を取られるのは簡単なことだが、自分自身と自らの価値観を全社に浸透させる努力をしなければ、結局自分のためにならないし、会社のためにもならない。

これは一夜にして成し遂げられることではない。しかし、最も小さなことが、最も大きな影響力を持つものであることも多いということを覚えておこう。あなたがリーダーなら、模範を示してリードしよう。これこそ、年月を経ても長続きするチームを構築する唯一の方法なのである。

編集部注:本稿の執筆者Mark McClain(マーク・マクレーン)氏はクラウド・エンタープライズ・セキュリティのリーダーであるSailPointの創業者兼CEO。

画像クレジット:Getty Images under a Dimitri Otis license.

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(文:Mark McClain、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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