あらゆる面で初代を上回りニッチを貫くreMarkable 2

数年前に突然現れたreMarkableは、筆者がそれまで長い間探し求めていたものだった。ただ、デバイス自体は実にすばらしかったのだが、問題がいくつかあり、目玉が飛び出るほど高価だった。初代のreMarkableをベースに作られたreMarkable 2の本体はより美しくスリム化されており、いくつかの重要な新機能が追加されているが、意図的なもの、そうでないものを含め多くの制約はそのまま残されており、それがreMarkable 2をあらためて特殊なデバイスにしている。また今回はコストも大幅に抑えられている。

reMarkableは、PDF、スケッチ、走り書きのメモなど、白と黒(およびグレー)のコンテンツを利用、作成するためのタブレットを目指しており、フル装備のタブレットやラップトップに搭載されているような余分な機能や複雑な機能は一切ない。筆者自身も実際に使ってみたが、確かに、目を通して注釈を付けなければならない大量のコンテンツがあるときにreMarkableを使うと集中力が上がった。また、簡単なメモ取りや、D&Dゲームでのメッセージのやりとり、木工プロジェクトのスケッチなど、他の用途でも便利に使えた。

rM2(本記事ではreMarkable 2をこう呼ぶことにする)は、あらゆる面で間違いなく改善されている。薄さ、速さ、バッテリー効率を含め、rM2のあらゆる機能を以前より向上させ、さらに価格も600ドル(約6万3000円)から400ドル(約4万2000円)に下げるなんてことを、どのように実現できたのだろうか。筆者は正直なところ少し面食らっている。普通ならどこか妥協せざるを得ないはずだ。しかし、今回は違う。

具体的には、rM2で大きく改善された点は以下の通りだ。

  • 一段と薄くなった(初代も6.7mmと薄かったが、さらに4.7mmの薄さに改善。ちなみにiPadの薄さは約6mm)
  • 一段と速くなった。デュアルコアARM CPUを搭載(主に節電が目的)
  • RAMが倍増した(512MBから1ギガバイトに増加)
  • 表示応答速度が21msに半減した(LCD並みの速度)
  • バッテリー持続時間が3倍以上に伸びた(スタンバイ状態では、数日どころか数週間、いや数か月持続可能)
  • スタイラスの一方の端が消しゴムとして使えるようになった。これは便利だ。

新しいデバイス(左)と初代。画像クレジット:reMarkable

 

 

まずは新しいデザインを見てみよう。正直なところ、最初はあまり納得できなかった。初代のソフト感がある白いプラスチックケースはより有機的に感じられたのだが、最新モデルでは左右非対称のクロームがガジェット感を出している。

しかし、目的と対象がはっきりしているこの新しいデバイスを、筆者はだんだん好きになってきた。もちろん今のデザインが左利きより右利きの人に向いているというのもある。初代の3つの巨大なボタンは、その機能を考えると少し大きすぎるのではないかと筆者は感じていた。また、rM2にホームボタンが欲しいと、ときどき思っていたが、新しいジェスチャー(上から下へスワイプ)がそれを解決してくれる。

Image Credits: Devin Coldewey / TechCrunch

クロームストリップ上部の電源ボタンは小さすぎるくらい小さいが、少なくとも誤って押してしまうことはないだろう。USB-C充電ポートは電源ボタンの反対側の底部にある。デバイスを持つときに充電ケーブルが邪魔にならない位置にあるため、使用しながら簡単に充電できる(おそらくその必要はないだろうが)。

本体右側に埋め込まれた強力なマグネットがスタイラスペンをしっかりとホールドするが、そのマグネットは外からは見えない。そして、高級な質感のラバー仕上げが施されたこのスタイラスペンが非常にすばらしいことを付け加えておきたい。新しい消しゴム機能はとても使いやすい。スタイラスペンを探しているなら、間違いなくこれをおすすめする。

Image Credits: Devin Coldewey / TechCrunch

背面にはラバー加工された小さな4つの突起がある。これにより、タブレットが無防備にテーブルの上で滑ってしまうことはなく、フォリオケースにもぴったりと収まる。薄く滑らかなデバイスにこのような突起物があると、少なからず邪魔だと感じる。実用的であることはわかっていたのだが、筆者は最初、これを剝がそうとした。

rM2は全体的に非常にスリム化された。初代よりかなり重い(初代の350グラムに対して400グラム。どちらも最軽量のiPadよりも軽い)とは言え、どう考えても軽量である。ベゼルはデバイスを握ったり位置を変えたりしやすい程度の幅はあるが、その幅は広すぎず、デバイスを邪魔することはない。自分だったらベゼルの幅をもう少し狭くできたかもしれないとも思うが、それは筆者自身の個人的なこだわりのせいだ。

誤解しないでいただきたいのだが、筆者は工業デザインには非常にうるさい人間である。ここで挙げた欠点は、例えば、見苦しいiPhone 11と比べれば、はるかにましである。rM2は初代よりも魅力的なデバイスに仕上がっており、デザイン上の優れた選択の数々を見せるにしても、あえて隠すにしても、非常に良い判断をしていると思う。

Image Credits: Devin Coldewey / TechCrunch

ディスプレーは初代と同じで、画素密度とコントラストの面では、現在の電子書籍リーダーのレベルには達していない。KoboとAmazonの電子書籍リーダーは1インチ当たりのピクセル数が300ピクセルであるのに対し、reMarkableはそれを下回る226ピクセルである。これが重要になる場合も、そうでない場合もある。一部のフォントとペンマークには多くのエイリアシングが見られたが、大きなデバイスほど顔から遠ざけて持つ傾向があるため、エイリアシングはほとんど気にならない。

フロントライトはないが、これは意図的な選択だろう。紙の文書を見るときに使用するのと同じ照明下で作業することを想定しているからだ。それでも文書を読んでいるとき、たまに、フロントライトがあったらいいのにと感じたことがあった。

新しく搭載されているバッテリーが非常に長持ちすることは筆者が保証する。デバイスはまだ1週間ほどしか使っていないため、スタンバイ状態で数か月放置したらどうなるか、まだ語ることはできない。しかし初代は頻繁に充電しなければならず、いつもがっかりさせられていたのに比べて、今回のモデルははるかに長時間、充電なしで使えている。

また電源のオンとオフの切り替えも、はるかに速くなった。初代はスリープ状態に入り、少し遅れてからシャットダウンし、起動にしばらく時間がかかった。rM2はスリープ状態から瞬時にオンになり、完全なオフ状態から約20秒で起動する。幸いにも、初代と同じくらいの頻度で電源をオフにする必要も、自動的にオフになることもない。rM2を多くの人にとって実用的なデバイスにするためには、オン/オフやバッテリー寿命の心配を取り除くことが大いに役立つ。

無限に使える便利なリーガルパッドとPDFツール

筆者の字はひどいが、本来はきれいな字を書けるように設計されているrM2。画像クレジット:Devin Coldewey/TechCrunch

 

rM2は、科学論文、法律文書、報告書などのドキュメント全体のリーダーとして、また事実上無限のページを利用できるという大きなメリットを持つスケッチブックやメモ帳として、最も成功している。

読むことに関しては、操作性は初代のデバイスと大差ない。対応しているファイル形式はかなり少なく、PDFが最適である。ページを流し読みしたり、ペンで注釈を付けたり、テキストを強調表示したりできるが、残念ながらテキスト自体をデジタル的に選択/強調表示するのではなく、半透明のレイヤーでテキストをペイントするだけである。

テキスト検索は簡単で、ナビゲーションもわかりやすいが、スワイプではなくタップして次のページに進むオプションが欲しいところだ。変更はreMarkableアプリ内のドキュメントに同期され、変更されたバージョンを簡単にエクスポートできるが、ここでもテキストを直接選択することはできない。

rM2は以前に比べ画面上での書き心地が格段に良く、Eペーパーデバイスの中ですでにベストな選択肢になっている。フルカラーのイラストについては、当然ながらiPad Proの方がrM2より勝っている。しかしrM2の狙いは、他のタブレットが有する機能を満たすことではなく、意図された機能を確実に提供することにある。

Image Credits: Devin Coldewey / TechCrunch

画面の手触りは初代のreMarkableよりも滑らかになっているが、質感の変更は必ずしも悪いことではない。初代では、そのザラザラした質感のせいで、書いているときに画面を引っかいているようし感じるのがいつも気になっていた。rM2ではそのようなことはないが、触知感がやや劣る。レイテンシーが低くなったことについては、気付くか気付かないかが分かれるところだと思う。初代のreMarkableを含め、筆者がテストした他のどのEペーパーよりもレイテンシーは確かに低くなっている。しかし21ミリ秒のレイテンシーであっても重要であり、書き方や描画の仕方に影響を与える。「紙のように」とはいかないが、これはかなりすごいことだ。

インタビューのときに使用している小さなポケットノートパッドを変えようとは決して思わないが、ミーティングやブレーンストームセッションではrM2を使ってみたいと思う。名前を小さくまとめて書いたり、フローチャートを作ったり、後で調べるためにあれこれメモしたり、上司の顔をいたずら書きしたりできるスペースがとても大きくて使いやすいため、あやうく、もっと会議に参加したいと思ってしまうところだった。思わずそう感じるくらい、本当に使いやすい。

使用しているところを動画で見せると参考になる人もいるとは思うが、実際に操作してみると、その見た目や感覚を感じとるのが動画でも難しいというのが実のところだ。見た目よりもずっと反応が良い。

書いたり描画したりするための頼りになる新機能として、スタイラスの反対側に消しゴムが付いた。消しゴムは自動で機能し、使い心地は本物の消しゴムのようで、ペンメニューにアクセスする手間を省ける。消去するよりも「元に戻す」操作をしたいときがあるが、残念ながら「元に戻す」にはまだメニューを開く必要がある。画面全体がマルチタッチ容量性であることを考えると、2本指で左にスワイプするなどして元に戻したり、何もないスペースで消しゴムをダブルタップしたりできない理由が見つからない。

Image Credits: Devin Coldewey / TechCrunch

手書き認識機能は非常に便利だ。rM2で大量のメモを取る機会はまだないが、混在しているメディアページをコンピューターに転送するときに、いかに時間が短縮されているかがよくわかる。誰かが言ったメールアドレスや名前の入力にそれほど多くの時間を取られることはないが、ボタンを押すだけでコピー&ペーストができるようになるともっと便利だと思う。

確かに転記ミスはあったが、正直なところ、筆者が書く「u」、「n」、「r」、「v」は自分でさえ読み間違えることがある。筆者は引きずるように書く癖があるため、できるだけ低い筆圧でペンを走らせることよりも、表面からペンを持ち上げることに意識を集中する必要があった。

電子書籍リーダーとしては可もなく不可もない

Image Credits: Devin Coldewey / TechCrunch

初代のreMarkableは、電子書籍リーダーやその他の純粋なテキストコンテンツの操作と表示の点では、特に興味を引かれるものではなかった。rM2ではこの点が改善され、非常に便利な新しいタイムシフト機能が追加されているが、まだ競合他社に後れを取っている。

実際のところ、reMarkableは本を読むためのものではない。フルページとして表示されるように作成されたコンテンツ向けにフォーマットされており、それがうまく機能している。独自にテキストの整形を行う必要がある場合は、選択肢が少なくなる。

6つのフォント、1つのフォントにつき6つのサイズ、余白と間隔にそれぞれ3つのオプションがあり、カスタマイズの余地は少ない。書籍の表示に最も向いていそうな2つのテキストサイズは「少し大きすぎる」そして「少し小さすぎる」ように見える一方で、他のサイズは滑稽なほど巨大で、大きな活字の本よりもテキストが大きく表示される。

Image Credits: Devin Coldewey / TechCrunch

筆者がタブレットに読み込んだepubブックのいくつかは、いろいろな点でうまくいかなかった。段落の最初のタブが表示されない、テキスト内のリンクが機能しない、行間が均等でない、段落の一部ではなく大きな空白が表示される、などの問題があった。reMarkableチームは電子書籍のレンダラーとテキストオプションを真剣に検討する必要があり、実際にそうしているが、書く機能や描画機能、そしてもちろん新しいハードウェアへの対応にチームのリソースが費やされてしまったようだ。

新しいChrome拡張機能を使用してWebから集めた記事を表示するときには、同じ問題は発生しない。これらの記事は書式に一貫性があり、雑誌のページのように読むことができて快適だ。2列表示のオプションやページのコード変換方法をカスタマイズする他の手段があればいいのだが、今のところないようだ。しかし筆者は、この点に関してreMarkableに合格点をあげたいと思う。これは開発中の新しい機能であり、かなりうまく動作しているからだ。

残念ながら、Pocket、Simplenote、Evernoteや同じような他の一般的なサービスと統合する見込みはない。良くも悪くも、reMarkableは単独で進むことを選んだのだ。実際、企業としてのreMarkableはデバイスを複雑にしすぎたり、他のものと統合しすぎたりすることを警戒している。なぜなら、余計なものを取り除くことを企業理念としているからだ。このアプローチにより統一された操作性が得られる。しかし、reMarkableが自ら競合する他社製品と同等の優れた機能を提供できなければ、痛手を受けることになる。

Image Credits: Devin Coldewey / TechCrunch

筆者が抱えている深刻な不満の1つは、1つのアカウントで一度に1つのデバイスしかアクティブにできないということだ。そしてこれは、reMarkableの既存顧客を間違いなく困らせる問題だと思う。つまりすでに初代reMarkableを購入している場合、reMarkable 2をセットアップするには、原則的に初代を無効にする必要があるということだ。

これは大きな問題であり、reMarkableがチャンスを逃すことにもつながる。まず、古くからの顧客を実質的に裏切ることは少し残酷だ。おそらく解決策は見つかるだろうが、古いデバイスをアカウントから削除しなければならないという純然たる事実に問題がある。なぜなら、デバイスを2台使用できれば、絶対に便利だからだ。1台は職場、1台は自宅で使用して、2台を同期したり、アカウントをパートナーと共有して文書や手書き文字をやりとりしたりすることを想像してほしい。

この件についてreMarkableに問い合わせたところ、現時点では技術上の制約があるが、複数デバイスのサポートは現在計画中のようである。しかし現在rM2の購入を計画している人にとって、初代のデバイスを使えなくなること、少なくとも同じようには使えなくなること(つまり壊れているわけでもなく単にアカウントと同期しないということ)は、重要な検討事項になる。

希望と夢(そしてハック)

すでに述べたように、reMarkable 2の魅力は、どんな機能を備えているかではなく、何ができるかにある。reMarkableはここ数年、エコシステムがサポートする機能を大幅に拡大し、パフォーマンスを向上させ、ユーザーの要求に応えてきた。reMarkableのチームは熱心で率直なコミュニティを持っているため、筆者が感じる不満のほとんどはすでにチームが知るところとなっており、機能の修正や追加が計画されている。

このような有望なハードウェアを活用するための新しい方法をまとめている健全なハッカーコミュニティもある。もちろん慎重にやらなければ、ハードウェアを不能にしてしまう可能性があるため注意が必要だ。reMarkableが、その基本的な考えからRSSリーダーをデバイスに組み込みたくないのであれば、おそらく誰かがRSSリーダーを作るだろう。筆者はこのデバイスを、慎重に調整されたプラットフォームとしてではなく、汎用のグレースケールコンピューターとして試すことを楽しみにしている。

以前のreMarkableは非常に興味深いデバイスだったが、ローンチ時に広く推奨するのはやや難しかった。しかしここ数年でreMarkableは実績を積み上げ、デバイスの機能も向上して、その地位は強固なものになった。今回のアップグレード版はあらゆる面で強化され、価格も3分の1になったため、以前よりもはるかに自信を持って人にすすめられる。ペーパーレスの世界の探求に興味のある人、集中力を高めたい人、これがかっこいいと思う人は、reMarkable 2をぜひお試しいただきたい。

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カテゴリー:ハードウェア

タグ:ガジェット レビュー タブレット

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(翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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