オーセチックス(auxetics)は、エネルギーを与えられると膨らんだり角が飛び出たりせずに、そのエネルギーを内部に保存する素材だ。押したり叩いたりするたびにそのエネルギーを蓄え、それを一定のペースで発散する。しかし歴史的にはこれらの素材には鋭利な角があって、押しすぎると簡単に破損した。そこでロンドンのクイーンメアリー大学とケンブリッジ大学の研究者たちは、オーセチックスもっと丈夫に効率的に利用する方法を発見した。この方法では、エネルギーを保存してそれを機械的に、何千回も放出するシステムを作れる。
クイーンメアリー大学のDr. Stoyan Smoukovはこう語る: “新しい素材設計の輝かしい未来は、それらがデバイスやロボットを置換していくことにある。すべてのスマートな機能を素材に埋め込める。たとえば鷲が獲物をくちばしでつつくときのように、オブジェクトを何度でもつつくことができるし、新たな力を加えることなく万力のように物を保持できる”。
たとえばロボットがこのシステムを使ったら、物を手で握って、それを離すときが来るまで手をずっと閉じていられる。開いて物を下に落とすときまで、手や鉤爪などに力を送り続ける必要がない。
このプロジェクトに参加した学部学生Eesha Khareはこう言う: “高熱など厳しい条件にさらされる素材の大きな問題は、その膨張だ。これからは、熱源との距離によって変わる温度勾配に合わせて、連続的に膨張特性が変わる素材を設計できる。それによって素材は自動的に、何度も繰り返される厳しい変化に対し、自分を自然に調節できる”。
このプロジェクトは3Dプリントを使って、歯のついたアクチュエータをつかむ小さなクリップを作った。エネルギーを放出するためには、物の反対側を引っ張って歯を外す。システムの全体はきわめて単純だが、エネルギーによってその素材が伸びたり膨らんだりせず、むしろそのエネルギーを蓄えるという事実は重要だ。これと同じ技術を使って、弾(たま)が装甲や防具に当たったら、その弾をつかんでしまうことが可能だろう。人も兵器も、より長寿になるね。