ソーシャルブックマーキングサービスDeliciousはかなり長期にわたって、Web 2.0運動のシンボルのような存在だった。ブックマークをソーシャルに共有するシンプルなサービスだったが、オープンでコラボレーション的でタグやユーザ生成コンテンツも多く、VCたちにとっても、めぼしい投資先を探すときの情報源の一つだった。
一般公開されてから10年になるが、いまでもdel.icio.usドメインは存続している。オーナーは何度か変わったが、元々のコンセプトはあまり変わっていない。でもこのたび、10歳の誕生日を記念してデザインを一新したので、久しぶりに同サイトを取り上げてみよう。
創業から2年後にYahooが買収して評判になったが、その後はずっと、鳴かず飛ばずの状態が続いた。Yahooが買収したWeb 2.0サービスの多くが、そういう運命をたどった(Flickrもその一つ)が、Deliciousも2010年ごろにはほとんど、過去のものになってしまっていた。
Deliciousはもう、かなり前から、ヒップなプロダクトではなかった。 タクソノミー、フォークソノミーといった独特の用語の、魅力も薄れていた。同社はもはや、成長を忘れたマイナーな存在だった。当時Deliciousが閉鎖したら、怒り狂う常連ユーザも多かったと思われるが、でも大半のWebユーザは閉鎖に気づきもしなかっただろう。
しかしYahooはDeliciousを閉鎖せずに、2011年の4月にAVOSに売った。AVOSはYouTubeのファウンダChad HurleyとSteve Chenが、当時はもっぱらDeliciousの受け皿として作った企業だが、その後はビデオサービスのMixBitや中国語のVineクローンWanpaiを立ち上げた。AVOSはその後黙々とDeliciousの改良を続けたが、トラフィックは回復せず、ソーシャルブックマーキングの人気が再び盛り上がることもなかった。Deliciousの作者Joshua Schachterも2008年にYahooを去り、Deliciousに残っている初期のデベロッパは一人もいないようだ。
今度の新デザインも、大きな効果があるとは思えない。ユーザインタフェイスはすっきりして反応がよくなり、コンテンツの発見にはTwitterを利用した個人化を導入している。ダブルクリックで立ち上がるブックマークエディタも、8年前ならユーザに喜ばれただろう。
しかしそれでもなお、AVOSはDeliciousを支えつづけるようだ。ビジネスモデルらしきものは、依然としてないけど。デザイン改訂の発表声名も、世の中には無視されたが、その中で同社は、Androidアプリと新たなブラウザエクステンションを開発中だ、と言っている。
今ではリンクの共有はもっぱら、TwitterやFacebookの上で行われている。だからDeliciousがこれまでの路線のままで活気を取り戻すことは、難しい。今回の再ローンチに際してチームが作ったMixbitのビデオの中で彼らは、“これは新しいDeliciousの始まりにすぎない”と言っている。AVOSの買収からすでに2年も経っているから、その言葉もなかなか信じがたいが、でもAVOSがDelicious生かしつづけていることは、なぜか、良いことのように思える。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))