アクセシブルなソフトウェアデザインのためのハブ「Stark」がMacアプリのベータ版を開始

Stark(スターク)は現地時間9月28日、Macアプリ「Stark」のプライベートベータ版を立ち上げた。プロジェクトに関わる誰もが簡単にコラボできるようにする一方で、プロダクトをより包括的なものにするためのアクセシビリティの規則遵守を簡素化するものだ。企業はデザインファイルをStarkのツールにアップロードすると、Starkがアクセシビリティの問題を特定し、変更を提案する。

Starkは、作品をアクセスしやすく包括的なものにするデザイナー向けの簡単なソリューションがないことにCat Noone(キャット・ヌーン)氏と同氏のチームが気づいた2017年に創業された。いまや50万人超が、Adobe XD、Figma、Sketch、Google Chromeのようなアプリ向けのStarkの統合されたプラグインを使った。これは、ビジュアル素材を視覚障害者のためのアクセシビリティ基準に合うよう、チェックしたり提案したりする。

「まずプラグインで始めました。あなたのプロダクトで起こっている問題を表面化することで意識を高めるすばらしい方法であり続けています」とヌーン氏はTechCrunchに語った。「しかしプラグインは大規模に、あるいは誰もがプロダクトに関われるようにする方法でアクセシビリティの問題を解決しません」。

ただ、ヌーン氏はMacアプリ用のStarkが多くのデザインファイルにある抜本的な問題を簡単に解決できるようにすることで「アクセシビリティを高める」と話す。例えばTwitterのようなアプリがフォントを変更すると(つい最近変更し、アクセスしやすいデザインにおけるカスタマイゼーションの必要性について議論を呼んだ)、デザイナーはアプリ内の何百ものスクリーンの書体を根気強く変更しなければならない。しかしStarkはこのプロセスをかなり迅速化する。

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Starkに表示される可能性のあるアクセシビリティに関する警告メッセージ(画像クレジット:Stark)

「Starkがしようとしているのは、問題が起こったときに、あなたが提案された変更を受け入れ、デザインファイルを開き、変更し、そのまま進めてシンクさせるということです」とヌーン氏はいう。「ですので、その時点で1つのスクリーンだけでなく、全デザインシステム、あらゆるスクリーンで並行して表示されます。それはすごいことです。というのも、あなたのデザイン開発時間を短縮するからです。そして我々の目標は、これがなぜ修正されたのかあなたに教えながら、規則遵守にかかる時間を抑制することです」。

Starkがシードで150万ドル(約1億6800万円)を調達した2020年以来、プロダクトは消費者レベル、企業レベルどちらでも機能するアクセスしやすいデザインのGrammarlyだとヌーン氏はいう。Starkはまだ黒字になっていないが、同社の既存顧客にはMicrosoft、Pfizer、Instagram、ESPNなどがいる。加えて、Starkはアクセスしやすいデザインや、ヌーン氏いわくインターネット上で最大だというアクセシビリティリソースに興味がある人のSlackでのコミュニティもホストしている。同社はユーザーがプロダクトを試してSlackに参加できる限定無料プランを提供しているが、既存の一連のツールを利用するには年60ドル(約6700円)かかる。一元化された請求書へのアクセスや複数メンバーによる管理を加えるカスタムプランの見積もりを依頼することもできる。

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StarkのMacウェブサイトのスクリーンショット(画像クレジット:Stark)

アクセシビリティはテック企業にとって重要なものだ。というのも、障がいを持つ人が自社のプロダクトを使えなければ、巨大な顧客ベースを失うからだ。しかし包括的であることが十分な動機付けでなくても(ため息)、お金はそうだろう。

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「特にこのところ、パンデミックによって多くの企業がデジタルの活用を増やしました。プロダクトをすべての潜在ユーザーにとってアクセスしやすいものにしていないテック企業がマーケットから排除され、思いがけない大きな機会を逃すようになっています」とヌーン氏は述べた。しかしStarkは古いデザインファイルをアクセシビリティ基準に沿うものに変えるのを簡単にしている。「Macアプリ向けのStarkは、あなたがコンサルタントを10人も20人も雇わなくてもいいようにします。なぜなら、プロダクトを構築している個人は教育を受けていて、そばに使えるツールがあるからです」。

差し当たり、Macアプリ向けStarkのプライベートベータ版はSketchで使えるが、ほどなくFigmaやAdobe XDのような他の人気デザインツールでも使えるようになる、とヌーン氏は話す。その後、プロジェクト管理ツールを統合することで、ユーザーはアプリ内でタスクを他の人に割り当てることができるようになる。プライベートベータ版を試したい人はウェブサイトでアクセスをStarkにリクエストできる。ベータ版は無料だが、正式展開するときには料金プランが発表される。

「かなり意見を主張するコミュニティとともにこれを構築する余裕がありました」とヌーン氏は話した。「プライベートベータ版ですが、エンジニアやデザイナーにとってもかなりメリットのあるものです」。

Starkのチームは8カ国からリモートで働く17人だ。

「チームのメンバーは世界中に散らばっています。多くの言語、さまざまな肌の色、さまざまなバックグランドを持っています。我々自身のとらえ方、世界を誘導する方法はそれぞれの中にある包括性であり、かなりマジックのようなものだと考えています」とヌーン氏は語った。StarkがVRやARのような新手のテクノロジーに受け入れられることを同氏は願っている。その一方で、文化によってアクセシビリティが異なるという問題も解決して欲しいと思っている。例えば英語で書体を読みやすくすることはアラビア語やタイ語で書くことに必ずしも当てはまるとは限らない。「我々は構築したプロダクトを反映する存在であり、思うにそれが口でいうだけでなく行動で示すことを極めて簡単にしています。というのも、我々は毎日共同で暮らしているからです」。

画像クレジット:Stark

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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