アップルがようやく開発者向けにスクリーンタイムAPIを公開

2018年に公開されたiOS 12で、Apple(アップル)は独自の内蔵スクリーンタイム追跡ツールと制御機能を導入した。そして独自のスクリーンタイムシステムを実装したサードパーティアプリの取り締りを開始した。同社は彼らの方法がユーザーのプライバシーを危険に晒しているためだと説明した。当時なかったものは何か?デベロッパーがAppleのスクリーンタイムシステムを利用して、独自の体験を作り出すためのスクリーンタイムAPIだ。それがようやく変わった。

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米国時間6月7日に行われたAppleのWorldwide Developer Conferenceで、同社はスクリーンタイムAPIを発表した。デベロッパーがユーザープライバシーを守りながら、ペアレンタルコントロール体験を開発できるフレームワークだ。

iOS SDK(ソフトウェア開発キット)には新しいSwiftフレームワークが3種類追加され、デベロッパーは子どもがデバイス上でできることを親が管理して制限を加えるためのアプリを開発できるようになった。

このAPIを利用するアプリは、アカウントのロック、パスワード変更の禁止、ウェブトラフィックのフィルタリング、利用できるアプリの制限などさまざまな制約を設定できる。こうした設定はAppleのスクリーンタイムシステムですでに可能だが、デベロッパーは自社ブランドの元で独自の体験を提供できるようになり、Appleのシステムが提供する機能を拡張することもできる。

APIを利用するデベロッパーのアプリは、それ自身をロックして親の承諾なしにデバイスから削除できなくすることもできる。

アプリは親の本人認証を行い、そのユーザーが管理しようとしているデバイスが家族のものであることを確認できる。さらに、Appleによると、このシステムはユーザープライバシーを損なうことなく、親が制限したいアプリとウェブサイトを選ぶことができるという(システムはアプリの識別子やウェブサイトのURLの代わりに、解読不能なトークンだけを返すので、サードパーティはユーザーが使ったアプリやウェブ閲覧の詳細などの個人的データをアクセスできない、とAppleはデベロッパーに伝えている。このため、怪しげな会社がスクリーンタイムアプリを作りアプリ利用に関するユーザーデータを収集する、といったことはできない。

サードパーティアプリは、アプリごとあるいは行動のタイプごとに専用のタイムウィンドウを作り、まもなく時間切れになることを子どもに警告できる。時間になると、管理アプリはウェブサイトやアプリへのアクセスをロックし、子どもに宿題の時間であることを伝えたり、デベロッパーの考えるその他の体験を提供する。

一方で、アプリは子どもが宿題や読書や手伝いなどの仕事を終えたらスクリーンタイムをもらえるインセンティブを設定することもできる。

デベロッパーは、一連の機能を利用してAppleの基本的制御機能の上に独自のアイデアを載せることで、Apple自身のスクリーンタイムシステムにない新たな体験をデザインすることもできる。スクリーンタイムの管理がもっと簡単になりニーズに合わせてもっとカスタマイズできるようになるのなら、親は渋々財布の紐を緩めるだろう。

「ファミリー」環境以外にもスクリーンタイムを利用するアプリはある。例えばメンタルヘルスや幸せな生活などだ。

もちろん、デベロッパーたちはスクリーンタイム機能が公開された時からAPIの提供を求めてきたが、Appleは開発の優先順位を上げなかった。しかし、2020年の反トラスト公聴会でライバルのスクリーンタイムアプリを禁止した行為が取り上げられてから事態は変化した。当時Apple CEOのTim Cook(ティム・クック)氏は会社の決定を擁護し、アプリはMDM(モバイル・デバイス・マネージメント)技術を使用しており、それはホームユースではなく大企業の従業員向けデバイスを管理するために作られていると説明し、それがプライバシーリスクになる、と述べた。

関連記事:アップルのクックCEOが他社のスクリーンタイムアプリを排除した理由を米独禁法公聴会で弁明

WWDCでAppleは同APIの仕組みを詳しく解説するセッションを用意しているので、その時のデベロッパー向け情報が公開されれば、詳しいことがわかるはずだ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDC 2021WWDCiOSiOS 15APISDK子どもスクリーンタイムプライバシー独占禁止法

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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