アップルは暗号資産を「検討中」とティム・クックCEOが語る

米国時間11月9日に開催されたNYT Dealbook Conference(ニューヨークタイムズ・ディールブック・カンファレンス)のインタビューで、Apple(アップル)のTim Cook(ティム・クック)CEOは、同社が暗号資産を検討していることを認めたものの、暗号関連の製品を「すぐに」扱う予定はないことを明らかにした。クック氏は、同社が可能性を探っている暗号資産の分野について詳細は言及しなかったが、アップルの事業には同氏が暗号資産の導入を検討しようと思わない分野がいくつかあると述べた。

インタビュアーのAndrew Ross Sorkin(アンドリュー・ロス・ソーキン)氏から、アップルはApple Pay(アップルペイ)や「それ以外で」暗号資産を受け入れることを検討しているかと訊かれたクック氏は、暗号資産について「私たちは何らかの検討はしている」と曖昧に答えた。クック氏は続けて、暗号資産製品について公に話す準備はできていないものの、アップルが暗号資産に投資する意味のない分野は決めていると説明した。

「私には自分がやらないだろうと考えていることはあります。例えば当社のキャッシュバランスです。これを暗号資産に投資することはないでしょう。私が自分の資産を暗号資産に投資しないからというわけではありません。人は暗号資産に触れるためにアップルの株を買うとは思わないからです。もしそうしたいのであれば、直接、暗号資産に投資することができます」と、クック氏は説明した。

クック氏はまた、アップルが自社製品の支払い手段として暗号資産を採用する計画はないとも述べた。

しかし、クック氏は、暗号資産がアップルのレーダーの中にあることを明言し、暗号資産関連で「我々が確実に検討していることは他にある」としながらも、この件に関してアップルに現時点で発表することはないと語った。

Apple Payの競合であるPayPal(ペイパル)、Venmo(ベンモ)、Square Inc.(スクエア)のCash(キャッシュ)アプリは、この数カ月の間にすべて暗号資産の分野に進出している。それなのに、アップルが同様の方針を取るという決断を、少なくとも検討さえしていないとしたら奇妙なことだ。また、クック氏個人は暗号資産への投資に反対しているわけではなく、インタビュアーのソーキン氏に、自身も暗号資産を所有していることを認めている。

「多角化したポートフォリオの一部として所有することは合理的だと思います」と、クック氏は語り、笑いながら「誰かに投資のアドバイスをしているわけではありませんよ」と付け加えた。

同CEOは続けて、暗号資産には以前から興味を持っていたと語った。

また、NFT(非代替性トークン)については興味深いと思っているが、一般の人々が興味を持つような形に展開するには、しばらく時間がかかると思うとも述べている。

このインタビューでは、セキュリティやプライバシーに関するアップルの見解や、Epic Games(エリック・ゲームズ)が現在控訴中の反トラスト法をめぐり法廷で争っているApp Storeのオープン化など、アップルをはじめとするテクノロジー業界の大企業にとって重要なタイムリーな話題についても触れている。

クック氏は、このユーザーの選択肢の問題について率直な意見を述べ、ユーザーは携帯電話を購入する際に、すでに選択権を持っていると指摘。ユーザーがアプリストア以外の環境でアプリをロードしたいのであれば、つまりサイドロードと呼ばれる行為をしたい場合は、それを可能にする別のプラットフォームを選ぶことができると述べた。

「人々はすでにそのような選択肢を持っていると、私は思います……なぜなら、もしサイドロードしたければ、Androidスマートフォンを購入することができるからです」と、クック氏は述べた。「すでに選択肢はあるのです。携帯電話ショップに行って、もしそれが重要であるのなら、Androidフォンを買えばいいのです」。

アップルの見解では、サイドロードはリスクが大きすぎると、クック氏はいう。もちろん、アップルにとっても、App Store(アップストア)やアプリ内課金で得られる数百万ドル(数億円)の収益を失うことになる。

クック氏は、AR技術に対しても一般的な期待を口にしたが、Facebook(フェイスブック)がMeta(メタ)として最近進めているVR計画や、自動車に関わるアップルのプロジェクトの可能性についてはコメントせず、アップルはあまり未来について語らないようにしていると述べた。

さらにクック氏は、アップルの政治に対するスタンスについても詳しく言及。アップルにPAC(政治活動委員会) はないと述べ、同社が中国市場へ参入していることを擁護した。

「我々には企業としてできる限り多くの場所で事業を行う責任があると、私は考えます。なぜなら、ビジネスというのは巨大な触媒だと思うからです」と、クック氏は語った。「私たちは可動橋を跳ね上げるのではなく、橋を架けるべきだと考えています。それがビジネスの鍵だと思います。発言という点では、個人的に発言することもあれば、公に発言することもあり、状況によってさまざまです」。

画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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