アマゾンがインドのスタートアップに投資する272億円規模のベンチャーファンドを発表

Amazon(アマゾン)はインド時間4月15日、主要な海外市場であるインドの中小企業(SMB)のデジタル化に焦点を当てた、同国のスタートアップや起業家に投資する2億5000万ドル(約272億円)のベンチャーファンドを発表した。

今回の発表は、これまでインド事業に65億ドル(約7062億円)以上を投資してきた米国のeコマース巨人が、政府当局や、同社がサービスを提供していると称する中小企業からの批判に直面している中でのことだ。

「Amazon Smbhav Venture Fund」と名づけられたこの新しいベンチャーファンドを通じて、Amazonは中小企業のオンライン化、オンライン販売、業務の自動化とデジタル化、そして世界中の顧客への拡大を支援することに重点を置いたスタートアップに投資したいと述べている。同社は、このファンドのライフサイクル(つまり、何年かけて2億5000万ドルを使い切る予定か)については明らかにしなかった。

Amazonの次期CEOであるAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は4月15日に開催されたバーチャルイベントで「中小企業は経済のエンジンであり、生命線です」と述べた。「当社は、中小企業を加速させることに情熱を持っています」とも」。

Amazonは、中小零細企業(MSMEs)向けに売掛債権のオンラインマーケットプレイスを運営する、グルグラム(旧称グルガオン)に本社を置く設立3年目のスタートアップであるM1xchangeに1000万ドル(約10億9000万円)の投資ラウンドを実施したと発表した。M1xchangeは、マーケットプレイスを介して中小企業と銀行やノンバンク金融会社を結びつける企業だ。中小企業は売掛債権(為替手形や請求書)を銀行や金融機関に譲渡することでより有利な金利で融資を受けることができ、これにより、中小企業・小規模事業者の支払いに関する課題を解決することができるという。これは、同社のAmazon Smbhav Venture Fundからの最初の投資となる。

Amazon Smbhav Venture Fundは農業とヘルスケアの2つの分野にも重点を置いているが、中小企業との接点があれば、他業種のテックスタートアップも視野に入れていくとのこと。

アグリテック分野ではAmazonは、テクノロジーを活用してアグリインプットを農家によりアクセシブルにしたり、農家にクレジットや保険を提供したり、食品の無駄を減らしたり、消費者に届ける農産物の品質を向上させるインドのスタートアップに投資することを検討している。ヘルスケア分野では、医療機関が遠隔医療、電子診断、AIによる治療提案を活用できるように支援するスタートアップに投資するとしている。

今回の発表は、インドに拠点を置く中小企業に焦点を当てた、Amazonが毎年4日間にわたって開催するSmbhav(ヒンディー語で「できる、可能」を意味する)イベントで行われた。またAmazonはこのバーチャルイベントで、2025年までにインドの北東地域の8つの州から5万人の職人、織工、中小企業をオンライン化し、同地域からの茶、スパイス、蜂蜜などの主要商品の輸出を促進するための取り組みである「Spotlight North East」を発表した。

2020年の第1回Smbhavイベントで、Amazonは10億ドル(約1087億円)を投じて中小企業1千万社のデジタル化を支援することを発表した。同社は2021年4月初め、2020年1月以降、インドで30万人の雇用を創出し、30億ドル(約3260億円)相当のインド製商品の輸出を可能にしたと発表した。

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同社によると、5万以上のオフライン小売業者や近隣店舗(現地ではキラナと呼ばれる)がAmazonマーケットプレイスを利用しており、約25万の新規出品者もプラットフォームに参加したという。同社は15日「Local Shops on Amazon」プログラムを通じて、2025年までに100万のオフライン小売業者・近隣店舗のオンボーディングを目指していると述べた。

2020年には、Amazonの創業者兼CEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が参加した最初のSmbhavイベントからそれほど遠くない場所で、何万人もの抗議者が通りをデモ行進し、Amazonは自分たちをつぶすために不公正な行為を行っている、と主張して懸念を表明した。

今回も同様の抗議活動が行われ、商人たちはAsmbhav(ヒンディー語で「不可能」の意)と名づけられたイベントで政府の介入を求めた。こちらから、彼らのストーリーを一部見ることができる。これはインドでの論争に巻き込まれないように長い間苦労してきたAmazonにとって、継続的な課題だ。

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2021年2月には、米国のeコマースグループである同社がインドの一部の販売者を優遇し、それらの販売者との関係を公に偽り、インドの外資規制を回避するために利用しているとの報道を受け、何千万もの実店舗を代表する有力なインドの業者団体が、インド政府にAmazonの国内事業禁止を要請した。

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全インド商業連合(The Confederation of All India Traders、CAIT)は、ロイター通信の記事で明らかになったことを受けて、インド政府にAmazonに対する深刻な措置を取るよう「要求」した。「CAITは長年にわたり、AmazonがインドのFDI(外国直接投資)規制を回避し、不公正で非倫理的な取引を行っていると主張してきました」とCAITは述べていた。

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、そしてMicrosoft(マイクロソフト)を含む複数の国際的なテクノロジー大手が、近年、インドのスタートアップ企業に投資している。Amazonも、配車スタートアップのShuttlや、消費者ブランドのMyGlammなど、多くの企業を支援している。2021月3月、同社はリテール決済スタートアップであるPerpuleを約2000万ドル(約21億7000万円)で買収した。

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カテゴリー:VC / エンジェル
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画像クレジット:Pradeep Gaur/Mint / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

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