アリババクラウドが11年目で初めて黒字化、世界シェア3位に

 記者会見でSun Art Retail Groupの株式29億ドル(約3050億円)について語るAlibabaグループCEOのダニエル・チャン氏(画像クレジット:Vivek Prakash/Bloomberg via Getty Images)

中国のeコマース大手Alibaba(アリババ)のクラウドコンピューティング事業部門であるAlibaba Cloud(アリババクラウド、阿里雲)は現地時間2月2日、直近の四半期(2020年10-12月)に初めて黒字化したと決算報告で発表した。

Alibabaのクラウド部門は2009年以来の事業展開となるが、当四半期ついに、調整後EBITA(利払い・税・減価償却前利益)で黒字を達成した。このマイルストーンは、「スケールメリットの実現」の結果の一部であると同社は述べている。

データベース、ストレージ、ビッグデータ分析、セキュリティ、機械学習からIoTサービスまで、あらゆるものを組み込んだAlibaba Cloudは、ここ数年、中国のクラウドインフラ市場を席巻しており、世界的にもシェアを伸ばし続けている。Gartner(ガートナー)の調査によれば、2019年の時点で同社は9%の世界市場シェアを誇っており、パブリッククラウド企業(IaaSベンダー)としては、Amazon(アマゾン)のAWSとMicrosoft(マイクロソフト)のAzureに次いで世界第3位にランクされた。

新型コロナウイルスは、人々がオフラインでしてきた活動をオンラインに変えるよう強要することで、世界中のクラウドデジタル導入を後押ししてきた。たとえばAlibabaは決算の中で、中国での新型コロナ流行の後、レストランやサービス業界におけるデジタル化の需要は引き続き旺盛であると指摘しているが、この傾向は同社のフードデリバリーやオンデマンドサービスアプリである「Ele.me」にも恩恵をもたらす。同社のクラウド事業の収益は2020年12月の四半期に24億7000万ドル(約2595億円)に増加しており、主に「インターネット業界や小売業、公共部門の顧客からの収益が堅調に伸びた」ことがけん引しているという。

コマースは当四半期もアリババの収益の最大の原動力であり、収益の70%近くを占め、一方クラウドは7%貢献した。

最も迫るAlibaba Cloudのライバルは、Tencent(テンセント)のクラウド事業部門だ。Gartnerによると、2019年の時点で、後者は世界的に2.8%の市場シェアを持っていた。AlibabaのヴァイスプレジデントであるJoe Tsai(ジョー・ツァイ)氏が2020年8月にアナリスト向けの業績発表で指摘したように、中国の(IaaS)業界にはまだ十分な成長の余地がある。

「第三者機関の調査によると、中国のクラウド市場は150億ドル(約1兆6000億円)から200億ドル(約2兆1000億円)の規模になっていくと見られていますが、米国の市場はその8倍程度です。つまり、中国市場はまだかなり早い段階にあるということです」とツァイ氏は述べた。

「中国市場は、デジタル化がどんどん進み、企業のクラウド利用が急速に拡大している環境であり、米国市場の8分の1程度の小さな基盤から成長している過程にあります。こうした過渡期に中国市場に参入しているのは非常に良い立場だと感じています」とも。

Alibaba Cloudを成長させるための重要な戦略は、Alibabaの企業向けチャットアプリ「Dingtalk」へのクラウドの統合であり、同社は、あらゆる業界がクラウドサービスを利用するようにできることを期待している。これは、Alibaba CloudのJianfeng Zhang(張建峰)社長が以前インタビューで示唆したように、Microsoft 365とAzureの関係を彷彿とさせるものだ。

AlibabaのCEOであるDaniel Zhang(ダニエル・チャン)氏は2020年8月の決算説明会で、「当社はただのインフラサービスとしてだけのクラウドを提供したいわけではありません」 と語った。「インフラサービスとして、SaaSサービスとしてだけ提供すると、価格競争は避けられず、クラウドサービスはすべてコモディティビジネスのようなものになってしまいます。現在、Alibabaのクラウドが提供するのは、クラウド+インテリジェンスサービスであり、クラウド+データ活用の力です」。

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(文:Rita Liao、翻訳:TechCrunch Japan)

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