インターネット広告のOLXが運営するベルリン拠点の中古車マーケットプレイスを閉鎖、中南米・アジアに重点

英国の中古車販売ポータル、Cazoo(カズー)は現地時間3月29日、70億ドル(約7693億7000万円)の企業価値で米国のSPAC(特別買収目的会社)と組んで膨大な資金を獲得したが、別の巨大中古車販売会社でもの事業統合が置きている。TechCrunchが情報を入手し確認したところによると、ベルリン拠点の新興市場向け中古車マーケットプレイスを運営するFrontier Car Group(FCG、フロンティア・カー・グループ)のベルリン市内での事業が閉鎖される。その結果100名分の職がベルリンからインドへ移ると同社はいう。

FCGの主要株主であるOLX Group(Naspersのテック部門で現在別会社として上場されているProsus傘下)は、ラテンアメリカおよびアジアでOLX Autosブランドの下で地域密着型の運営に焦点を絞ると語った。FCGの残された事業はOLX Autosに統合される。2021年2月に就任したOLX AutosのCEO Gautam Thakar(ガウタム・タカール)氏は、インドのグルガオン出身だ。

現在、OLX Autosはアルゼンチン、チリ、コロンビア、エクアドル、インド、インドネシア、メキシコ、およびペルーで事業を運営している。同社は他に3つのブランド、パキスタンのCarFirst、ナイジェリアのCars45、および米国のwebuyanycar.comを保有している。

OLXは2019年11月にFrontierに約4億ドル(約439億6000万円)の投資を行ったことで同社の支配権を握った。当時の評価額は7億ドル(約769億3000万円)だった。投資に関する正式な発表はなかったが、Twitterに流れた情報を発見し、Prosusの広報担当者がTechCrunch宛ての声明で詳細を認めた。

「OLX GroupはFCG Germany GmbHのベルリン拠点を数カ月以内に閉鎖することを正式に認めます」と広報担当者は語った。「この事業主体はベルリンにおけるOLX Groupの一部です。ベルリンのその他のOLX Group従業員は今回の閉鎖の影響を受けず事業は継続されます。FCG Germany GmbHの閉鎖は容易な判断ではありませんでした。この決定はラテンアメリカ・アジア市場により焦点を当てるOLX Autosの戦略を反映したものであり、当社は中核となる製品開発事業を、OLX Autosの主要市場であるインドへ移転します。OLX Groupは苦しい状況に置かれる社員たちを手厚く待遇し、義務の範囲を越えて経済支援を行い、新たな職を見つけるための時間と余裕を持てるようにします。影響を受けた従業員が当社の他の事業主体の求人に応じることも推奨しています」。

ベルリン拠点の職がインドに移転するというニュースには約100名が影響を受けている。ヨーロッパに他の事業所はない。FCGのサイトに行くと、自動的にOLXに転送される。

設立場所と本社はベルリンだが、Frontier Car Groupの焦点は常に新興市場に向けられており、それぞれの国の中古車マーケットプレイスモデルを採用してきた。

FrontierのファウンダーであるSujay Tyle(スジェイ・タイル)氏、Peter Lindholm(ピーター・リンドホルム)氏、André Kussmann(アンドレ・クスマン)氏の3人は、CazooのライバルであるAuto1(これもベルリン拠点の中古車マーケットプレイスで2月にドイツで上場を果たし現在の時価総額は約1兆3848億円でCazooの投資家にとっての比較対象)に触発され、このモデルを途上国市場に持っていけばチャンスはもっと大きいと考えた。

「私はAuto1のモデルに魅せられました」とタイル氏が2018年にTechCrunchに話した。タイル氏自身は米国出身の優秀な若者で、Frontierを設立した時は20台前半だった。2020年8月に会社を去り、現在メキシコシティーに住み、そこで新しいeコマース投資会社Meramaを設立している。

Frontierは、Auto1(Sequoia、SoftBankらから数百億円の出資を受けた)の成功のおかげもあり、ベルリン発の優れた新規テックスタートアップの後見人的立場となっていた。

新興市場に重点を置くという戦略は、Naspersの世界進出戦略とつながり、中古車マーケットプレイスに関心のあった3行広告事業者のOLXはFrintierの戦略的投資家となり、当初は少数株主として、最終的には過半数株主となって会社の支配権を得た

OLXがなぜ、Frontierブランドを捨てOLX Autosにこだわったのかははっきりしないが、2020年来OLXは他の市場でもリストラを行っていたようで、インドの不動産および中古品のためのマーケットプレイスを閉鎖した後、現地事業所で250名を解雇していた。

Cazooのように、新型コロナパンデミックの中で大きくビジネスを拡大している会社もあるが、健康危機は多くの経済分野を襲い、特に被害の大きい会社はコスト削減を強いられている。全体的に見て、世界のさまざまな市場で新車の販売は大きな不況に見舞われている。

Prosusの広報担当者は、OLX GroupとOLX Autosともに、当初は新型コロナウイルスの影響を受けたが以降立ち直ったと話した。Prosusは、激動の年にも黒字を維持しているが、利益は減少したと指摘する向きもある(次の決算報告は6月)。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:OLXベルリン中古車販売

画像クレジット:Jason Hawkes / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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