インドのミレニアル世代に投資の機会を与える「Jar」に投資家が注目

インドでは何億人もの人たちが銀行口座を持っているが、金融商品に投資している人はごくわずかだ。

例えば投資信託や株式に投資しているの人は3000万人に満たない。近年いくつかのスタートアップが、ユーザー、特にミレニアル世代のユーザーが投資しやすくなる環境をつくっているが、それでも数字はあまり変わっていない。

そんな中、あるインドのスタートアップがこの課題に挑戦するソリューションを見つけたと信じてサービスを立ち上げ、すでに良い感触を掴んでいる。

モビリティのスタートアップであるBounceの元ディクター、Nishchay AG(ニシュチェイ・エージー)氏と、Marsplay(マーズプレイ、後にFoxyに売却)の共同ファウンダーであるMisbah Ashraf(ミスバー・アシュラフ)氏は、2021年初めにJar(ジャー)を設立した。

公開から3カ月の社名を冠したAndroidアプリを使って、ユーザーは最低1インドルピー(約1.5円)から貯蓄を始めることができる。

Jarのユーザーは複数の方法で投資が可能で、数秒で始められる。アプリは電子決済のPaytm(ペイティーエム)と組んで定期的支払いを設定できる(PhonePe[フォンペ]のサポートも開発中)。同社はUPI 2.0定期支払いをサポートした最初のスタートアップで、貯蓄額は1日あたり1~500インドルピー(約1.5〜753円)の間で設定できる。

Jarアプリは、ユーザーのテキストメッセージを見て、それぞれの取引に応じて微小な金額を貯蓄する。例えばユーザーがある取引で31ルピー(約46.7円)使うと、Jarアプリは金額を10の位に切り上げて(この場合40)差額の9ルピー(約13.6円)を貯める。ユーザーは自分でアプリを立ち上げて自由な金額を投資することもできる。

ユーザーが一定金額をJarに貯めると、アプリはそれをデジタルゴールド(金)に投資する。

同社が金投資を使うのは、南アジア市場の人々がこの資産クラスに絶大な信頼を置いているためだ。

インドの人々には金に魅せられる独特の気持ちがある。地方の農民から都市の労働階級まで、ほぼすべての人がこの黄色い金属を隠し持ち、結婚式で宝石を誇示する。

インドの世帯には推定2万5000トンの貴金属がしまい込まれており、その価値はこの国の名目GDPの約半分にあたる。インドのこうした金需要によって、この南アジアの国は金の世界最大級の輸入国になっている。

JarのAndroidアプリ(画像クレジット:Jar)

「もし、次の5億人に機関投資を勧めることを考えるなら、市場に存在するその他の手段の有効性について説明することが私たちの責務です」とニシュチェイ氏は言った。

「私たちはお客様が最も信頼している道具を提供します、それが金です」と彼はいう。スタートアップはいずれ他の投資方法もいくつか提供する計画だ。

ファウンダーの2人は数年前、MarsPlayとBounceが何かシナジーを起こせないか両者が探っていたときに出会った。彼らは連絡を取り続け、2020年数多くの会話の中で、どちらも投資についてよく知らなかったことに気づいた。

「点と点が繋がり始めたのはその時でした」とミスバー氏はいい、子ども時代の話を語った。「私はビハール州の小さな町、ビハール・シャリーフの出身です。子ども時代、家族は深刻な借金に苦しんでいて、それは誤った金銭判断と貯蓄のないことが原因でした」と彼は語った。

「2人とも、典型的中流家庭がどんな道をたどるのかを理解しました。この階級の人たちは過去に何の手段をもったこともありませんが、その願望には終わりがありません。このため、一度稼ぐようになった人は、すぐに全部使ってしまいます」とニシュチェイ氏は言った。

「市場には、この人たちがスタートを切るのを手助けする製品が必要です」と彼はいう。

米国市場でAcorn(エイコーン)とStash(スタッシュ)がやっていることに似たそのアイデアは、受け入れられ始めている。アプリはすでに約50万ダウンロードを数える、とファウンダーたちはいう。投資家も注目している。

9月1日水曜日、Jarは450万ドル(約5億円)の資金調達を終え、Arkam Ventures(アーカム・ベンチャーズ)、Trive Capital(トライブ・キャピタル)、WEH Ventures(WEHベンチャーズ)らの著名投資家の他、Kunal Shah(クナル・シャー)氏(CREDのファウンダー)、Shaan Puri(シャーン・プリ)氏(元Twitch)、Ali Moiz(アリ・モイズ)氏(Stonksのファンダー)、Howard Lindzon(ハワード・リンゾン)氏(Social Leverageのファウンダー)、Vivekananda Hallekere(ヴィヴェカナンダ・ハレケー)氏(Bounceのファンダー)、Alvin Tse(アルビン・ツェ)氏(Xiaomi)、およびKunal Khattar(クナル・カッター)氏(AdvantEdgeのマネージング・パートナー)らのエンジェル投資家が参加したことを発表した。

「Jarのビジョンは、健全な財政へのミレニアル世代のニーズを、卓越したプロダクトイノベーションでいかに満たすかという当社の命題と共鳴します。ファイナンシャルプランニングと投資の非常に魅力的な市場において、ユーザーの行動を強く駆り立てるJarの能力に感銘を受けています」とラウンドをリードしたArkam Venturesのマネージングディレクター、Rahul Chandra(ラフール・チャンドラ)氏が声明で語った。

Jarアプリの取引量とAUM(受託資産)は毎月350%のペースで増えている、とニシュチェイ氏はいう。近いうちに提供サービスを増やすつもりだと同氏は述べた。

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画像クレジット:Jar

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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