Wikipediaをはじめ、さまざまなプロジェクトを運用している非営利団体であるWikimediaが、インド政府に国の仲介者責任規則の変更案を考え直すよう促している。その変更は大量の企業と5億あまりの人々の情報へのオンラインアクセスに影響を及ぼす。
同団体はインド政府に、仲介者(情報の授受を仲介するサービス)ルールの最新の変更案を公開し、インドではインターネットがどのように統治されるべきかに関し、利害を有する者全員に十分な情報に基づく堅固な議論に参加する機会を与えるべきと求めた。
インドの仲介者ルールに対する政府の改定案は12月に提出され、その後数カ月内に承認されると予想される。その提案によると、インドの電子IT省は仲介者アプリケーション(ユーザー数500万以上のサービス)に、インド国内にオフィスを持ち法律的問題に責任を持ちうる上級役員を置くよう要求できる。
Wikimedia Foundationの法務担当Amanda Keton(アマンダ・ケトン)氏は米国時間12月26日、中間者ルールのインドの改定案は、ユーザーの寄与貢献に依存する公開編集方式で、誰もが新しい記事を書いたり既存の記事を改訂できるWikipediaの事業に深刻な影響を及ぼし、他の団体にも影響が及ぶと述べた。
彼女はまた、そのルールにより非営利のテクノロジー団体に相当量の財務的負担が生じ、またインドのインターネットユーザーの表現の自由を損なうと説明する。Wikimedia Foundationはその懸念を、インドの電子IT省長官であるRavi Shankar Prasad(ラビ・シャンカール・プラサード)氏に伝えた。その書簡を誰もが見られるように、自らのブログにも載せた。
仲介者ルールのインドの最近の変更案はインターネットを地元住民にとってより安全な体験にするために起案され、仲介者は「不法な情報やコンテンツへの公開アクセスを事前に見つけて削除または無効化するための」自動ツールをデプロイしなければならないとしている。
この変更案を懸念する者は多い。今年初めにはMozillaとMicrosoftのGitHub、およびWikimediaの連名書簡により、仲介者に不法コンテンツを事前に排除させるというインド政府の要求は、「(仲介者でなく)不法な活動を行っている悪者を有責とし、企業はそういう行為を知っていたときにのみ責任を負うという、既存の法に盛り込まれた細心の均衡を崩す」と主張した。
このグループはまた、インド政府の案では「インターネットサービスの上の監視の要求が大きく拡張される」と注意を喚起した。GoogleやFacebookなども含まれるインドのいくつかの業界団体も、政府案の大幅な変更を求めている。米国時間12月16日に発行された公開書簡でWikimediaのケトン氏もこれらの懸念を繰り返し、「コンサルテーションに参加した者も一般公衆も、昨年以降はルールの新しい案を目にしていない」と言っている。彼女はまた、最近提案されたルール案で仲介者の定義の範囲が広くなりすぎているのを改めるよう政府に求めている。
インドはWikipediaの5番目に大きな市場であり、先月の訪問者は7億7100万件を超えている。Wikimediaはインド語のWikipediaを拡張するために、人々を招いていろんな事業を行っている。
ケトン氏はインド政府に、オンラインのコミュニケーションに「追跡可能性」を導入する要件を考え直すよう説得した。それがあるとWikipediaの寄与貢献者たちが自由に参加することが困難になるからだ。追跡可能性についてはWhatsAppが、そのような要求に応じたら、どのユーザーも自分のメッセージの暗号化を危険にさらすことになると語った。