2016年、IT業界で話題になったテーマの1つに「チャットボット」がある。LINEやFacebook Messangerでおなじみのチャット型のUIと、人工知能(と人力)による会話を組み合わせることで、ユーザーはまるでリアルに対話しているのと同じように語りながら、目的のアイテムを検索したり購入したりできるなんて話だ。LINEやfacebookなどがAPIを公開したことも、このテーマが注目を集めるきっかけとなった。「ボット」ということで人工知能とセットで語られることも多いが、このチャットUI自体が、短いテキストでやり取りするスマートフォンのコミュニケーションと相性が良く、ユーザーがコミュニケーションを通じて目的にたどり着きやすくなるという話も聞くことも多い。
そんなチャットボット、チャット型のUIを実際の事業に使っている国内スタートアップとして名前が挙がることが多いのが、オンライン不動産仲介サービス「ietty」を展開するiettyだ。同社は2012年2月の設立以降、ユーザーが望む不動産物件の条件をあらかじめ入力しておき、それにマッチする物件をサービス側(人力およびAI)がチャット上で提案、ユーザーとの会話によって部屋決めができるというサービスを展開してきた。当時はそんな言葉すらなかったが、まさに「チャットボット」をセールスに使ったサービスだ。同社によると、現在月間数百人がiettyのチャットUIを通じて賃貸仲介物件を契約しているという。
そんなiettyは1月16日、これまでのノウハウを生かして、チャット型の接客サービスの導入および運用支援ソリューションの提供を開始することを明らかにした。このサービスでは、会話型コマースの導入に向けた自社サービスの調査から、運用プロセスの設計、チャットの導入、運用までをiettyがワンストップで行う。料金は応相談となっているが、数千万円規模のフルパッケージを提案するだけでなく、数百万円で導入検証を行う試験的なプランも想定しているという。
また、今回のソリューション提供に先駆けてiettyの管理システムを強化。今回のソリューション事業でクライアントに提供していくと同時に、不動産業界以外のノウハウも蓄積していき、クラウド型のサービスとして単体で展開することも検討しているという。
「これまで、コールセンター業務を行う会社などがカスタマーサポートのアウトソーシング事業を展開してきたが、我々はチャットを通じてカスタマーサポートではなく、セールスを行うことができる。すでに実績を上げているし、チャットボットが万能ではないことも知っている」(ietty代表取締役社長の小川泰平氏)。「カスタマーサポートにチャットを導入すると、質問には答えるが、営業ができない。我々は営業組織としてのマネジメント体制を作ってきた。会話型サービスの成果が上がっていない、導入したいけど分からない、そういった人達に、まずは小さくPDCAを回すところから提案していく」(ソリューション事業を担当するietty取締役COOの内田孝輔氏)
すでに第1号案件として中古車販売・買取の「ガリバー」を運営するIDOMとの取り組みがスタートしているが、来店アポイントに繋がった登録ユーザーが2週間で倍近くになったという好事例も出ているという。
もちろんiettyでは既存の不動産仲介事業は継続して展開していくとのことだが、ソリューション事業では、将来的カスタマーサポートセンターならぬ、チャットセンターを立ち上げることも計画中だという。その人員確保には、2016年5月に資本業務提携を行った人材会社のプロスとも協力していく。