地方のニュースは過去20年、散々な状態となっている。インターネットの台頭が新聞やローカルテレビ局による長期にわたるニュースや案内広告の独占を打ち砕き、その一方でFacebook、Nextdoor、Citizenのようなソーシャルネットワークが近所の近況情報で読者の関心をますます集めている。新聞は休刊し、ジャーナリストはごっそりといなくなり、あらゆることがカバーされない「ニュース砂漠」が増えつつある。
と同時に、オンラインメディアで現在、クリエイター革命が進行中だ。特にローカルジャーナリズムにとって適切と思われる斬新な方法では、オーディエンス構築、コミュニティ、そしてサブスクが一体となっている。これらの新しい一連のツールは、空洞の時代を経て最終的にローカルジャーナリズムの再構築を可能にするのだろうか。
Overstory Media Group(省略形は表現力豊かなOMG)は、ソフトウェアツールとビジネスモデルがローカルニュースの方程式を大きく変えたと確信している。カナダのニュースサイトDaily Hiveの元編集長Farhan Mohamed(ファルハーン・モハメド)氏によって共同創業され、現在同氏が率いているOMGは10のローカルニュースブランドを運営し、フルタイム従業員30人を雇用している。同社は持続可能で、あえていうが儲かるアプローチをローカルメディアに提供している。
「子どもだったころ、私は自分の電子メールニュースレターを持っていました」とモハメド氏は回顧した。「私はギャップを目にしました。私の周辺で起こっていることを誰も私に伝えていませんでした」。自力で運営するのがどんなものなのか感触を得るため、同氏はHotmailを通じてニュースレターを出し、やがてローカルジャーナリズムのモダンな世界へと移行した。そして同氏が目にしたのは悲惨なものだった。「ユーザーエクスペリエンスはひどく、ストーリーも最悪でした。普通の人がどうやってこんなことをしているのかさっぱりわかりません」と同氏は話した。
同氏はローカルニュースがコミュニティにとって何を意味するのかという基本とともに初めからやり直すことにチャンスを見出した。「私はニュースやジャーナリズムというより、コミュニティ構築分野の出身です」と語った。読者がこうしたニュース運営の当事者になれる現代のインターネットテクノロジーを使ったモデルがあると感じた。
モハメド氏は最終的にAndrew Wilkinson(アンドリュー・ウィルキンソン)氏とつながった。ウィルキンソン氏は零細のインターネット事業を買収して拡大し、その一方で元々の創業者が手を引けるようにするファンドTiny Capitalを運営している。同氏は、ブリティッシュコロンビア州ビクトリアでの出来事をカバーするCapital Dailyというニュースレター主導型のメディアを創設した。Capital Dailyはかなりの勢いで何万もの購読者を獲得した。数十万人しか住んでいない地域でだ。
モハメド氏とウィルキンソン氏はOMGの設立で力を合わせ、Capital Dailyモデルをより多くの出版媒体に拡大し始めている。2人はテックスタックを中心に据えたPicoを設立した。同社は4月に650万ドル(約7億1000万円)のシードラウンドをクローズしたばかりで、新しいブランドに切り替えるための成長とブランドの筋書きもデザインした。
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それぞれの新しいブランドの目標は、可能な限り早く収支をトントンにすることだ。「我々はブランドを持続可能なものにするのにどれくらいかかるかについてモデルと予測を持っていて、ブランドに合わせてモデルを微調整しています」とモハメド氏は話した。「おそらく持続可能な状態に持っていくのに12カ月ではなく、10カ月、あるいは9カ月かかります」。同氏の目標は野心的だ。2023年までに50のブランドとジャーナリスト250人を獲得したいと考えている。「100のブランドを獲得できるかもしれないとも思っています」。
OMGは筆者が「筋書き」と名づけたものを持っている一方で、あらゆるブランドがまったく同じものにならないことを理解している。各ブランドがどのように構築されるべきか、どのくらいの頻度で新しい記事が配信される必要があるかについての基礎的なストラクチャは持っているが、各ブランドが獲得した新しいオーディエンスのユニークなニーズに応えるという点でフレキシブルでもある。
ジャーナリストにとって、同社のアピールポイントは安定性と成長へのフォーカスだ。「あなたは編集権限を持っていて、すべきことをするだけです」と同氏は話した。コミュニティの構築とグロースマーケティングに関して「我々はあなたをサポートできます。我々は何がうまくいくか、知っています」。おそらくジャーナリストにとって最も価値あることは、同じ道を歩んでいる他の記者のコミュニティであり、記者はコミュニティや購読者ベースを拡大するにつれ似たような問題に直面している。
OMGはこれまでのところカナダのブランドに特化し、バンクーバーやビクトリア、フレイザー・バレー、カルガリーといった都市をカバーしている一方で、同社のモデルをカナダ外に輸出する機会も手にしている。「米国、東南アジア、欧州の人たちとやり取りしました」とモハメド氏は話す。
明らかに現時点で、ローカルニュースの分析には特定の皮肉がともなう。何十年にもわたる不着火、出版帝国遺産の瓦礫の中での過度に楽観的な成功する夢、といったものだ。しかしOMGは仕掛けを持っていて、今回は少し違うかもしれない。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:カナダ、Overstory Media Group、メディア
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(文:Danny Crichton、翻訳:Nariko Mizoguchi)