カール・ペイ氏のNothingがスマートフォンを開発中

OnePlus(ワンプラス)を共同設立してから7年後、Carl Pei(カール・ペイ)氏は、2020年にこのスマートフォンメーカーを離れ、自身のベンチャー企業を起ち上げた。Nothing(ナッシング)と名づけられたこの会社は、現在までに透明なイヤフォン「Ear (1)」という製品を1つだけ発表している。しかし、この経営者は、自分が名を成した業界への復帰を準備しているようだ。

Nothingは1年以上前からスマートフォンの開発に取り組んでおり、2022年4月までに発表する予定だと、この件について直接知っている関係者が、TechCrunchに語った。ペイ氏は、バルセロナで今週開催された携帯電話関連のイベント「Mobile World Congress(モバイル・ワールド・コングレス)」において、業界の主要経営幹部たちと行った会談の中で、このデバイスの試作品を披露したという。TechCrunchはペイ氏がQualcomm(クアルコム)の最高経営責任者とそのような会談している写真を見た。

この近々登場するデバイスに関する詳細はほとんどわからないが、情報提供者はこの製品が、Nothingの最初の製品と同じデザイン言語と、そこに見られる「透明性という要素」を共有することになると言及している。2021年に発売されたこのイヤフォンは、ロンドンに拠点を置くハードウェアスタートアップの同社によると、1月下旬の時点で40万台を出荷しているという。

ペイ氏は、このイヤフォンを発表する直前の2021年7月、TechCrunchによるインタビューで、同社が複数の異なるデバイスをロードマップに載せていることを明かしていた。「私たちは、多くの製品を開発中です。2022年の初めには、コミュニティクラウドファンディングを実施し、150万ドル(約1億7000万円)をコミュニティに割り当てました。それはあっという間に買われてしまいましたが、私たちはその資金調達ラウンドの一環として、開発中の製品をいくつか紹介するプレゼンテーション資料を用意しました。当社の製品のコードネームはPokémon(ポケモン)から取っているので、このスライドにはたくさんのポケモンが登場します。私たちは複数のカテゴリーを検討していますが、それらが何であるかはまだ発表していません」と、同氏は語った。

ペイ氏は確かに、OnePlusの共同設立者でその原動力としての経歴を持っている。同社初のデバイスは2014年、すでに成熟して飽和状態にあると思えたカテゴリに登場した。それでも、この製品は、フラッグシップ機並みの品質と中級機並みの価格を武器に、米国市場への参入という難業を成し遂げた。2021年、OnePlusはハードウェアチームを、同社の過半数を所有するOppo(オッポ)と合併させた。Oppoは、Vivo(ヴィーヴォ)、Realme(リアルミー)、iQOO(アイクー)といった主要ブランドとともに、BBK(歩歩高電子工業)の傘下にある。

この会談が行われた今回のMWCは、特に地味なイベントとなった。携帯電話業界は、長年の売上低迷と減少に悩まされており、最近は新型コロナウイルスの影響による購買習慣の変化、サプライチェーンの停滞、チップ不足によって、さらに悪化している。スマートフォン市場は、革新を起こすのに適した状況にあるといえるが、携帯電話が目新しいものから何処にでもあるものに成長し、良質の製品が安価に入手できるようになった今、それを実現することは至難の業だ。それでもNothingは、確かに旋風を巻き起こすのに十分な資金を持っている。同社は、GV、Tony Fadell(トニー・ファデル)氏、Casey Neistat(ケイシー・ナイスタット)氏、Kevin Lin(ケヴィン・リン)氏、Steve Huffman(スティーブ・ホフマン)氏など著名な投資家から、7000万ドル(約81億円)以上を調達している。

また、Nothingは同じようにコミュニティによる牽引を重視することで、独自のファン層を築くことにも成功している。ペイ氏が興味を持っているスニーカー市場から明らかに着想を得た、リリーススケジュールやマーケティングキャンペーンの手法も同様だ。しかし、99ドル(約1万1500円)のワイヤレスイヤフォンに興味を持たせることはできても、確立されたスマートフォンの世界でそれを行うことはまったく別の問題である。

長年、携帯電話産業を先導してきたLGやHTCなどの企業は落ち込み、Google(グーグル)のような大手企業でさえ、この業界には計り知れない困難があることがわかってきた。現在はApple(アップル)、Samsung(サムスン)、Xiaomi(シャオミ)などのプレイヤーが世界的な売上を支配しており、BBK傘下の前述のブランドがそれに続いている。先週、新規参入のOnward Mobility(オンワード・モビリティ)は、BlackBerry(ブラックベリー)ブランドを再起動する計画を破棄すると発表した

Essential(エッセンシャル)は、3億ドル(約350億円)もの巨額の資金を調達したにもかかわらず、成功できなかったことで有名だが、Andy Rubin(アンディ・ルービン)氏が設立した同社には、多くの失策や問題が指摘されている。ペイ氏の会社はその後、Essentialブランドを買収したが、これは同社が、この不運なハードウェアメーカーの名前を採用することを検討していた際の動きであったと、ペイ氏は後にTechCrunchに語っている。一方、Essentialの従業員の多くは、自分たちの新しいスマートフォン会社としてOSOM(オーサム)を起ち上げ、2022年中の製品発売を計画している。

なお、今回の報道について、Nothingはコメントを辞退した。

画像クレジット:Steve Jennings / Getty Images

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(文:Manish Singh, Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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