プログラミングをクラウド上で行うことによってその困難性を軽減する、というサービスNitrous.IOが、その‘Pro’バージョンをローンチして本格的に企業ユーザの獲得を目指している。
昨年同社はBessemer Venture Partnersが率いるラウンドにより665万ドルを調達し、その前にはシード資金として100万ドルを獲得している。同社によると、Nitrous.IOの新たなProサービスはNitrous.IOを使って構築した。自分で作ったドッグフードはまず自分が食え、という格言を、より高いレベルで実行したようだ。
いちばん単純に言うとNitrous.IOはクラウド上のIDEだが、その機能は単にコードを保存するだけではない。コードをそこに置くこととプロジェクトの開発を同じ単一の場所で行うため、開発環境のセットアップは10分で終る。何時間も、あるいはまる一日も、かかることはない。また一つのプロジェクトに対するコードの共有とコラボレーションは、最大20万名まで可能だから、そのスケールはGoogle Docsなみだ。
Proバージョンで機能は拡充されたが、特定の要件を満たせば他の組織や企業とのコラボレーションも可能だ。そのためにProの顧客はrootアクセスができ、各人のIDEが独立のインスタンスとなり、カスタマイズによりDockerもサポートできる。コンピューティングのインフラストラクチャも、それぞれ自分だけのものを使用する。
料金はまだ最終決定していないが、Nitrous.IO Proは一人あたり月額14ドル99セントから64ドル99セントまで程度、プラス、カスタム化による費用が加わる。
なお、今後はオンプレミスでの利用にも対応していく予定だ。そのための非公開ベータは、もうすぐ始まる。
CEOのAJ Solimineは曰く、“5年後にはWeb開発のほとんどがクラウドで行われるようになる。Nitrous.IOはそのための初期の製品としてはよく出来ていると思うが、Proは開発環境としてさらに充実している。もう、GitHubのReadmeは要らないね”。
Nitrous.IOに、GitHubと決闘するつもりはない。むしろ、GitHubにないものを補うという見方をしており、今後はGitHubとの統合をよりタイトにしたいそうだ。営業担当VPのJustin Fryは、Nitrous.IOの目的を、大企業の中の点を、つないで線にすることだ、と言う。現に大企業では、Nitrous.IOが複数のチームで使われ、事実上コミュニケーションのメディアになっている例が多い。
Nitrous.IOは学校とその生徒学生、それに、たまにプログラムを作るレベルの人たちも無視していない。それらの人たちは、一日2時間まで無料、というプランを使えるが、彼ら向けのプランは今後もっと多様化するつもりだ。
“教育専用の料金体系を今後作るつもりだ”、とSolimineは述べる。“学校や学生生徒たちにとって無理のない料金にしなければならないが、今はいろんなやり方を検討中だ”。
過去にNitrous.IOは、Chrome用のパッケージアプリケーションを作ったこともある。それを使うと、200ドルのラップトップでもプログラミング用のマシンになる。同社の収益源はあくまでもプロのデベロッパたちだが、同時にこのような、‘プログラミングの民主化’を推進することにも関心があるのだ。
今、同社の社員は18名、オフィスは合衆国とシンガポールにある。CEOの考え方はとても長期的で、今はまだ10%にも満たないオンライン開発が、今後徐々に増えていくことが同社の成長源でもある、と展望している。長期戦のためのお金は、すでに十分、手元にある。