AWS等と競合するクラウドホスティングのDigitalOceanが、シリーズAで、企業評価額$153Mに対し3720万ドルを調達した。ラウンドの幹事会社はAndreessen Horowitzで、これまでの投資者IA VenturesとCrunchFundも参加した。投資額はAHが圧倒的に大きく、Peter Levineが同社の取締役会に入る。同社のこれまでの資金調達額は一桁少なく320万ドルだった。
DigitalOceanの協同ファウンダでCEOのBen Uretskyは曰く、“うちはインフラプロバイダとして世界第9位だが、IaaSはきわめて資本集約的な業態だ。ユーザは物理マシンの小片を短期間借りてわずかな金額を払うだけだが、その環境を整えるためには巨額な資本を確保して、顧客ニーズをつねに先取りしていかなければならない”。
DigitalOceanもスケーラブルな仮想プライベートサーバを提供するのだが、競合他社に対する差別化要素がいくつかある。その第一は、安いことだ。最小プランの仮想サーバ、愛称droplet(水滴)は、RAM512MB、SSD20GB、帯域1TBでは基本料金月額5ドル+時間料金だ。小さなアプリケーションを実験的に動かしてみるのに、適している。この低料金をいつまで維持できるのか、と聞いたら、Uretskyは簡単明瞭に曰く、“料金を変えるつもりはない”。
もちろん、本格的なWebサービスも十分に動かせる。dropletは55秒で作れて、そのサイズ拡大はワンクリックでできる。大きな‘水滴’でもよいし、複数の‘水滴’を動かしてもよい。今同社のデータセンターはニューヨークとサンフランシスコとアムステルダムとシンガポールにあり、99.99%のアップタイムを約束している。このようにDigitalOceanはユーザに仮想プライベートサーバを提供するので、低レベルのアクセスも可能だ。コロケーションセンターの専用サーバは、管理やアップグレードをユーザがやるのはたいへんだが。
Uretskyによると、“WordPressホスティングのFlywheelはうちのクラウドで構築されて動いているが、今は1000あまりのdropletで構成されている。しかしインテグレーションがとてもタイトだから、Flywheelの顧客はホスティングサービスを使っていることに気づかないだろう”、ということだ。
12月にニューアルバムを出したBeyoncéは、Beyonce.comをDigitalOceanで動かしている。アルバムのローンチ時にも、その仮想サーバ群はびくともしなかった。
“あのときは、最初の24時間で1500万のビジターがあった。彼女は、うちのサービスにとても満足していた”、とUretsky自身も満足げだ。
ホスティングプロバイダとして強敵は多い: Rackspace、Linode、それにある意味ではAmazon EC2やOpenStackも。では、これらのせめぎあいの中で顧客がとくにDigitalOceanを選ぶ理由は何だろう? まず、同社には強力なコミュニティがある。ユーザ同士で、特定のスタックやアプリケーションを動かすためのチュートリアルやチップスを共有している。そのWebサイトは今では、たえず拡張を続ける巨大な知識ベースになっている。そこで解決できない問題は、同社に直接ヘルプを求めればよい。
“DigitalOceanの上に、みんなが協力して大きな共有環境を作っている、と考えればよい。コミュニティのベストプラクティスを、誰もが利用できるのだ”。
できるだけシンプルなサービスにする努力もしている。システム管理のスキルは必要だが、自分の物理サーバを管理するときほどたいへんではない。dropletのセットアップはほんの数クリック、Webコンソール(管理画面)も提供される。プロビジョニングツールを使ってテンプレートの利用や共有もできる。IPv6のサポート、ロードバランシング、ストレージサービス、なども準備中だ。
“今回の資金調達を契機に、初心に戻りたい。それは、Webのインフラストラクチャをできるだけシンプルにして、デベロッパが使いやすいものにすること。そしてそれと同時に、本格的なWebアプリケーションを問題なくサポートできるほど強力であることだ”。
資金の用途はまず、技術者を増員して、顧客数の増大と、顧客サイトの今後の大幅なスケールアップに備えること。顧客数は、2013年の初めにはわずか2000だったが、今ではアクティブカスタマーが11万いる。動かしている物理サーバは5000台。新規の登録顧客は毎日1000近くある。そして、すでに黒字だ。
投資ラウンドの幹事としてAHを選んだ理由は、これからの社会ではデベロッパがますます重要になるということを、同社がどこのVCよりもよく理解していたからだ。一方AHのPeter Levineは、DigitalOceanの昨今の成長が著しいことに感銘をうけた。そして今後のグローバル展開が確実と考え、大きな投資に踏み切った。
DOのコミュニティについてLevineは、“GitHubの取締役もやってるけど、コミュニティの威力はGitHubで十分承知している。ユーザはコミュニティがあることで、勇気づけられるのだ。DOも、コミュニティはすでに相当大きいし、十分なフィードバックもある。新進スタートアップで、すでにこれだけのコミュニティが育っているところは、本当に珍しい”、と言っている。
Levineはデベロッパとしての仕事をもうやってないが、投資する前にDigitalOceanを実際に使ってみて、仮想プライベートサーバdropletのセットアップが、同社の言うとおり超簡単なのに驚いた。
DOのインタフェイスはAWSやOpenStackとは全然違う。DigitalOceanの市場に合うよう特製されている。Uretskyは、“これまでなかったようなIaaSを作ったことを誇りに思っている”、と言う。今の成長が続けば、メジャーの一角にのし上がることも、ほぼ確実だろう。
情報開示: CrunchFundのファウンダMichael ArringtonはTechCrunchのファウンダである。
写真クレジットt: Tristan Schmurr; CC BY 2.0のライセンスによる。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))