シンガポール発のスタートアップ「Dropmysite」の技術をロリポップが採用

ここ2、3年、シンガポールでは元気のいいスタートアップ企業が出てきているというけれど、そんな企業の1つ、Dropmysiteが日本のホスティング事業者やキャリアと技術提携をして日本市場へ参入しようとしている。DropmysiteはWebサイトやDB、メールボックスのバックアップをクラウドで提供するサービスだ。2011年にシンガポールで設立されて以来、シンガポールのほか、日本、インド、米国などで71万ユーザーを数えるサービスに成長している。

Dropmysiteが提供するのはWeb・DBのバックアップを行う「Dropmysite」とメールボックスのバックアップを行う「Dropmyemail」の2つ。すでにGMOクラウドと1月に業務資本提携を結んでいて、Dropmyemailのほうは日本市場での提供開始済みだが、これに続き、年末に向けてpaperboy&co.の低価格レンタルサーバのロリポップ!でDropmysiteの採用が決まったことを18日に発表した。

ポイントは使い方が異様に簡単なこと。DropmysiteやDropmyemailのサイト上でアカウントを作成して、サーバのID/パスワードを入力すれば、定期バックアップや世代バックアップをAWS上にAES256で暗号化のうえ保存してくれるというサービスだ。AWSの東京、シンガポール、北米、アイルランド、インドなど6箇所でフェイルオーバーの構成を組んでサービスを提供しているという。Dropmysiteは容量課金なのでドメインを追加していけば、バックアップ対象のサーバはいくつでも追加できる。容量10GB、30GB、60GBで、それぞれ月額166円、416円、750円などとなっている。メールに関しては添付ファイルだけを一覧表示にしたり、形式別にソート表示するなど付加機能もある。

大手企業や技術系スタートアップは違うだろうけれど、いわゆるSMB市場ではサーバ管理は結構やっかいな問題だ。バックアップソリューションは掃いて捨てるるほどあるし、サーバやDBを冗長構成にするだとか、クラウドのストレージに定期的にバックアップを取るスクリプトを書くといったことは、スキルの高い管理者不在の中小企業では難しい。Dropmysiteは、こうした市場をターゲットにしたサービスで、Dropmysiteのカントリーマネージャーを務める篠原豊氏によれば、ロリポップが抱える36万サーバの利用層と重なるため提携に至ったのだという。現在、Dropmysiteとロリポップの統合はほぼ終わっており、年末にかけてロリポップではワンクリックでDropmysiteが利用できるようになるそうだ(メニュー名としてDropmysiteのブランド名は使わないのでOEMのような形態だ)。価格は200〜300円で、ストレージ容量は無制限を予定しているという。

最初からクラウドのサーバやメールサービスを使えばという気もするが、日本ではレンタルサーバが安いため、GmailなどWebメールの普及が進んでいないという事情がある。GoDaddyなど米国のレンタルサーバがメール利用についてはアカウント数に応じた課金をしている一方、日本のレンタルサーバは容量課金だったりする。月額1500円程度のレンタルサーバで事実上無制限のアカウントが使えることから、1アカウント当たり月額300〜800円といったWebメールへの移行が進んでいない。日本の中小企業ではWebサーバもメールサーバも1台で済ませているケースが多く、Dropmysite、Dropmyemailはこうした市場に応えるソリューションという。DropmysiteのCEOであるCharif El-Ansari氏によれば、Dropmysiteは日本でパートナー企業との提携交渉を進めているほか、今はモバイル端末のSMSやバックアップ「Dropmymobile」というサービスの開発を進めているそうだ。


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TechCrunch Japan

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