ジェフ・ベゾス(Amazonではない)が2億5000万ドルのキャッシュを投じて名門紙、Washington Postを買収したというショッキングなニュースが飛び込んできた。ベゾスが買収したのはWashington Post本紙だけでなく、いくつかのローカル紙、 Washington Postのウェブサイト、Comprintという印刷会社も含まれる。Post自身の発表はこちら。
ところでベゾスが購入したこの資産の健全度はどの程度なのだろう? まずは公開されている数字を見てみよう。ただし、Washington Postグループで売上の内訳を公表しているのはPost本紙だけだという点に注意する必要がある。
今年の第2四半期に、Postグループの新聞事業部の売上は1億3840万ドルで、対前年同期とほぼ同額だった。つまりベゾスが買った新聞事業は、ありきたりのイメージとは違って、急速に没落しているわけではない。
紙媒体のWashington Postの広告収入は5450万ドルで対前年同期比4%のダウンだが、これもまずは安定した状態だ。Washington PostとSlate.comのオンライン収入は合計で2980万ドル、前年同期比で15%の増加だ。BezosはSlateを買収しなかったのでPost単独での数字はこれより多少下がるだろう。しかしWashington Postの方が圧倒的に大きいので、その差はわずかだろう。
オンラインの広告収入は前年同期比で25%アップしている。ただしオンライン案内広告の収入は7%のダウンだ。これはどういう意味なのだろう? 簡単にいえば、Washington Postのオンライン広告は、部分的なダウンはあるものの全体として順調なペースで成長しているということだ。
紙媒体のからの収入の減少は発行部数の低迷を反映している。2013年上半期の日刊発行部数は前年同期比で7.1%減少して44万7700部だった。
Washington Postが赤字を出しているのか、出しているすればどれほどの額かを推定するのは難しい。主要業務である新聞事業部は2013年の上半期で4930万ドルの赤字を計上している。ただしそのうち3970万ドルは年金経費だ。さらにこの時期には1960万ドルの早期退職、レイオフ関連の費用が計上されている。
こうした年金、早期退職経費を除けば新聞事業は単体としては黒字である可能性もある。
証券取引委員会への提出書類にはこうある。
購入者は現在のPost従業員の退職後の福祉に関してすべての責任を負う。売却者は以前のPost従業員の退職後の福祉に関してすべての責任を負う。
つまりベゾスは過去の従業員の年金問題を引きずる必要がないわけだ。
非公開企業であるため、Postグループの財務情報には不明な点が多い。そのためベゾスが今回購入した会社のの正確な価値を推計するのは困難だ。しかしPostのデジタル収入が増加傾向にあり、紙媒体の漸減をカバーできる可能性がある。 ごく大まかに言えば、希望のもてる状態といえるだろう。この規模の新聞社に対して、異例に楽観的な評価と思われるかもしれないが、ベゾスが今後ビジネスモデルの舵取りに成功するなら、Postが金食い虫で終わることはないかもしれない。
もうひとつ考慮すべき点は、ベゾスがファウンダー、CEOであり大株主であるAmazonとの関係だ。たとえば、ベゾスはPostの有料購読をAmazon Primeサービスの一環に取り込み、それに対して(比較的少額だろうが)収入の一部を分配するといったことができるだろう。
ちなみにPost紙の運営コストは今後、減少していくはずだ。第2四半期の決算報告によれば紙媒体の経費は第2四半期で17%、上半期で14%で減少している。その主な理由は、発行部数の減少によるものという。なるほど。
トップ画像: Jon S
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)