ジャガー・ランドローバーがディフェンダーベースの水素燃料電池EVを開発へ

Jaguar Land Rover(JLR、ジャガー・ランドローバー)は、新型SUVであるDefender(ディフェンダー)をベースにした水素燃料電池車の開発を進めており、2022年にはプロトタイプのテストを開始する予定だ。

Project Zeus(プロジェクト・ゼウス)という名のこのプロトタイプ計画は、2036年までにエグゾーストパイプからの排出ガスをゼロにするというJLRの大きな目標の一部だ。またJLRは、2039年までにサプライチェーン、製品、事業全体での炭素排出量をゼロにすることを約束している。

Project Zeusは、英国政府が出資するAdvanced Propulsion Center(英国の低排出技術推進機構)からも一部資金提供を受けている。また、AVL、Delta Motorsport(デルタ・モータースポーツ)、Marelli Automotive Systems(マレリ・オートモーティブ・システム)、UK Battery Industrialization Center(UKバッテリー・インダストリアライゼーション・センター)とも協力して、プロトタイプの開発を進めている。このテストプログラムは、ランドローバーの顧客が期待する性能や能力(牽引やオフロードなど)を満たす水素パワートレインを、どうすれば開発することができるかを技術者が検討できるようにすることを目的としている。

燃料電池は、水素と酸素を組み合わせて、燃焼することなく電気を作ることができる。この水素から発生した電気は、電気モーターの電力として使われる。一部の自動車メーカーや研究者、政策担当者たちは、水素を燃料とするFCEV(燃料電池車)は、短時間で燃料を補給でき、エネルギー密度が高く、寒冷時にも航続距離が短くならないという特徴から、この技術を支持している。この組み合わせが実現するのは、より長い距離を移動できるEV(電気自動車)だ。

FCEVとも呼ばれる燃料電池車は、燃料補給所(水素ステーション)が少ないこともあり、現在はほとんど市場に出回っていない。トヨタのMIRAI(ミライ)はその少ない例の1つだ。

だが国際エネルギー機関(IEA)のデータや自動車メーカーたちの最近の取り組みを見ると、この状況は変わりつつあるのかもしれない。2021年5月、BMWのOliver Zipse(オリバー・ジプシー)会長は、2022年には水素燃料電池を搭載したX5 SUVを少数生産する予定であると述べている。

世界のFCEVの台数は、2019年には前年の約2倍となる2万5210台になったことがIEAの最新データで明らかになった。2019年には落ち込みがあったものの、販売台数では米国がずっとトップで、それに中国、日本、韓国が続いている。

日本は、2025年までに20万台のFCEVを路上で走らせることを目標としており、インフラ面でもリードしている。日本は2019年の時点で113カ所の水素ステーションを設置しており、これは米国の約2倍の数だ。

ジャガー・ランドローバーの水素・燃料電池部門責任者のRalph Clague(ラルフ・クラグ)氏は、声明の中で次のように述べている「私たちは、水素が輸送業界全体の将来のパワートレイン構成において、果たすべき役割を知っています。また、バッテリー式電気自動車とともに、ジャガー・ランドローバーのワールドクラスの車両ラインアップにふさわしい能力と要件を備えた、エグゾーストパイプ排出ゼロのソリューションを提供していきます」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Jaguar Land RoverEV水素燃料電池水素

画像クレジット:Jaguar Land Rover

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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