スタートアップ製ウェアラブルで新型コロナによる下気道感染症を早期発見する研究

現在の新型コロナウイルス(COVID-19)による危機的状況は、たった1つの試みや対処策で完全に「解決」できるという見込みはほとんどない。そこで、スタートアップのWHOOP(フープ)のフィットネスと健康管理のためのリストバンドなどを対象にした、新しい研究が重要性を増してくる。オーストラリアのセントラル・クイーンズランド大学が主導し、クリーブランド・クリニックが協力する研究では、新型コロナウイルスに感染したと自己判断している数百人のボランティアにWHOOPを装着してもらい、収集したデータから各自の呼吸活動の変化を継続的に監察する計画を立てている。

この研究で使用するデータは、WHOOP Strap 3.0という機器から回収される。このリストバンドには、装着した人の睡眠中の呼吸数から睡眠の質を数値化して示す機能があり、最近のアリゾナ大学の外部研究により、その呼吸数の測定値の正確性が認められている。その研究で、侵襲的手段を除いてはもっとも正確に呼吸数が測れる装置であることが示されたため、今回の研究に携わる人たちは、他の方法によって症状が検知される以前に新型コロナウイルス患者の呼吸活動の異常を知らせる早期警報装置として有効ではないかとの仮説を立てたのだ。

WHOOPは、彼らのハードウェアが報告する呼吸数は、正しいと認められた個々の基準値から外れることがめったにないと話している。そのため、基準値から逸脱するとしたら、極端に気温が高くなったり酸素濃度が変化するといった環境的な原因か、下気道感染症などによる身体的な異常しか考えられない。

新型コロナウイルスは、まさに下気道感染症だ。上気道感染症であるインフルエンザや風邪とは違う。つまり、(比較的簡単に解消できる)環境的原因では説明がつかない下気道の問題による呼吸数の変化と新型コロナウイルスの事例との間には、強力な相互関係があると言える。WHOOPのウェアラブルは数値の偏りを機能不全の兆候として検出するため、本人が呼吸の異常を自覚する前に、基準値と呼吸数との乖離から体の変化を知ることができる。

この研究は、現時点ではまだ仮設の段階でありデータによる裏付けが必要だ。研究チームは、それには6週間ほどかかると話しているが、その調査を開始するアプリには、すでに「新型コロナウイルスに感染したと自己申告した最初の数百人」が集まっているという。目標は、陽性と診断された500人を参加させることだ。またこの他にも、健康や運動をモニターするウェアラブルを新型コロナウイルスの早期発見システムにできないかを探る研究がいくつか進められている。そのひとつに、カリフォルニア大学サンフランシスコ校とOura Ring(オーラ・リング)の共同研究がある。

以前のパンデミックと違い、この新型コロナウイルスの場合は、私たちがデータドリブンのアプローチで問題を解決する方法に慣れてきた時期に発生した。また、自分で数値を測定できる健康器具も数多く普及している。それらが、感染拡大の状況をより正確に評価するための手段となり、ウイルスが人々の間でどのように広がり、あるいは終息していくのか、その傾向を教えてくれるようになるだろう。

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(翻訳:金井哲夫)