韓国の大手テック企業であるLG Electronics(LGエレクトロニクス)は、かつて携帯電話分野でトップシェアを誇っていたが、現在は同事業を縮小している。同社は、次世代の自動車向けハードウェアおよびサービスという新分野への意欲の表れとして、イスラエルの自動車用サイバーセキュリティ専門企業であるCybellum(サイベラム)を買収すると発表した。Cybellumは「デジタルツイン」と呼ばれる手法を用いて、コネクテッドカーのサービスやハードウェアの脆弱性を検出・評価する。
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LGによると、この買収は複数の部分からなっている。
まず、1億4000万ドル(約154億円)でCybellumの株式の64%を取得する。次に2000万ドル(約22億円)をSAFE(Simple Agreement for Future Equity)ノートの形で「第4四半期の取引プロセスの終了時に」拠出する。残りの株式は「近い将来」(日付の指定なし)に取得する予定で、これは最終的なバリエーションと投資が確定する時でもある。
現在のところ、バリエーションが一定であれば、この取引の総額は約2億4000万ドル(約264億円)になると見込まれる(市場やCybellumの業績が影響する可能性もある)。
LGは、自動車関連のスタートアップへの投資家としての実績を積み重ねているが、今回の買収は、イスラエル(Cybellumはテルアビブ拠点)での初の買収となる。この取引は、LGがハードウェアだけでなく、自動車業界にソフトウェアソリューションを提供することに興味を持っていることを示している。
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「自動車業界においてソフトウェアが重要な役割を果たしていることは周知の事実であり、それにともなって効果的なサイバーセキュリティ・ソリューションが必要とされています」とLG Electronicsのビークル・コンポーネント・ソリューションズ・カンパニーのKim Jin-yong(キム・ジンヨン)博士は語る「今回の取引は、LGのサイバーセキュリティの強固な基盤を一層強化するものであり、コネクテッドカーの時代に向けてさらに準備を進めるものです」。LGは以前からこの分野に注目していた。
この取引は、Blumberg Capital、Target Global、RSBG Ventures(ドイツの業界大手RAGのベンチャー部門)など、Cybellumの投資家にとても良いリターンとなる。Cybellumはこの取引に先立ち、1400万ドル(約15億4000万円)強を調達していた。
Cybellumは、イスラエル国防軍のサイバーセキュリティ部門のOBであるSlava Bronfman(スラヴァ・ブロンフマン)氏とMichael Engstler(マイケル・エングストラー)氏の2人が2016年に創業した。同社は長年にわたり、ジャガーランドローバーや日産自動車など、同社の技術を利用する大物顧客を数多く獲得しており、提携先にはハーマン、豊田通商、PTCなどが名を連ねている。
ブロンフマン氏は電子メールによるインタビューで、当面はこれらの企業との協力関係を継続し、独立した事業体として運営していく方針を明らかにした。
Cybellumの技術とそのLGによる買収は、コネクテッドカーとサイバーセキュリティの世界におけるいくつかの重要な傾向を示している。
コネクテッドカーは、悪意のあるハッカーにとって新たな攻撃対象だ。しかも、自動車に搭載されている複数の部品や、自動車という大きなエコシステムの中で動いている多数のOEMや自動車関連の会社を考えると、攻撃対象として非常に複雑だ。自動車がより賢く、よりつながりやすく、最終的にはより自律的に進化していけば、その複雑さは増していく一方だ。
大きな課題の1つは、これらすべてに共通するサイバーセキュリティへのアプローチを開発することだった。LGは、この市場での既存のプレイヤーとして、その地位をさらに高めたいと考えており、自社の将来のビジネスと、業界の幅広いサービスニーズに対応するための投資を行っている。
Cybellumのアプローチは、システムの「デジタルツイン」を作り出すことだ。これは、エンタープライズITやヘルスケアの世界でも採用されている手法で、脅威を特定・評価すべく全体像を把握するためにモニタリングを行う。個々のコンポーネントの断片化を解消する方法の1つであり、車のシステムに負担をかけずにリアルタイムでイベントを監視することができる。
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「これは何よりもまず、セキュリティへの投資です」とブロンフマン氏はいう。「Cybellumはサイバーセキュリティの会社です。LGは大手自動車サプライヤーの1つとして、現在のコネクテッドビークルの時代や、自動運転車への移行に不可欠な要素であることを理解しているため、サイバーセキュリティを優先しています」。
LGは現在、Cybellumの提携先ではないが、ブロンフマン氏は、両社の最初の統合は2022年に実現する可能性が高いと述べた。
画像クレジット:Joan Cros/NurPhoto / Getty Images
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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi)