ソニーがヤフーとタッグ、新規事業から生まれた製品を販売する「First Flight」

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業績面では2014年度純損益1259億円の赤字決算から、2015年度純利益1400億円の黒字へと転換の見通しが立ったと発表しているソニー。本業の業績回復に向けて動いている一方で、この1年、積極的な新規事業開拓を行っているのはご存じだろうか?

同社は2014年4月に平井一夫社長直轄のプロジェクトとして「Sony Seed Acceleration Program(SAP)」と銘打った新規事業創出プログラムをスタート。すでに電子ペーパーを使った腕時計「FES WATCH」やスマート電子工作キット「MESH」といったプロダクトを世に送り出している。

そんな新規事業創出プログラム発のプロダクトを紹介し、クラウドファンディングやECを展開するサイト「First Flight」が7月1日にオープンした。サービスの立ち上げにはヤフーが協力。ヤフーが2014年に実施した企業内起業家育成制度「スター育成プログラム」から生まれた新会社のリッチラボがサイトの開発、運営を担当した。

サイトでは、SAPから生まれたプロジェクトについて、プロダクトのアイデアを紹介・提案し、サポーター(支援するユーザー)から応援メッセージやフィードバックをもらう「ティザー」、期間内に一定数以上のサポーターの支持を集めてティザーで紹介・共創したプロダクトを商品化する「クラウドファンディング」、商品化されたプロダクトを広く販売する「Eコマース」の3つの機能を提供する。なおEコマースの機能はYahoo!ショッピング内の「First Flight」にて行う。

サイトローンチ時点には、MESHやFES WATCHを販売するほか、1台で家電ごとに機能を切り替えられるリモコン「HUIS」のクラウドファンディングを実施している。

SAPから生まれた「MESH」

SAPから生まれた「MESH」

1年で400件の企画が集まったソニーの新規事業プロジェクト

「SAPをやって分かったのは、ソニーの中に新しいことをやりたい人がいて、やりたいプロダクトがあるということ」——SAPを統括するソニー 新規事業創出部 担当課長の小田島伸至氏はこう語る。

SAPへの応募はプログラム開始から1年間で400件を超えた。応募されたプロジェクトは「オーディション」と呼ぶ審査に合格すれば、プロジェクトに合わせた予算が用意され、3カ月間そのプロジェクトに専念できる。そして3カ月後に改めて事業継続のジャッジを受けるのだという。製品は既存事業でなければオーケー。ソニーの社員がチームに1人いれば、社外からメンバーを募ってもいい。向上についても、SAP向けの開発リソースを確保できる体制だという。

クラウドファンディングをやって分かった「課題」

すでに世の中に出るようなプロダクトが生まれているが、課題もあった。FES WATCHとMESHはクラウドファンディング(FES WATCHはMAKUAKE、MESHはIndiegogo)を通じて告知・販売されていたが、クラウドファンディングでサクセス(支持・購入者が集まること)して、サポーターには商品が届いても、クラウドファンディングサイトでは、基本的にプロジェクトごとに期間を限定しているため、サクセス後の継続的な情報発信やコミュニケーション、製品のアップデートなどは難しい。

実はこの課題、別の場所でも聞いたことがある。クラウドファンディングを通じての初期のマーケティングや支援者集め、初期ロットの販売はとても大切だ。しかし一般的なその次のステップに向けた機能がなく、また別の「売り場」が必要になる。せっかくできたサポーターとのコミュニケーションだって途絶えてしまう。イベント開催などを前提とした「売り切り」のプロジェクトもあるのでそのプロジェクトの性質次第という話ではあるが。

もちろんソニーには既存の販売チャネルがある。だが小田島氏いわく「『大きいモノをたくさん売る』ものであり、小ロットで売るパスがなかった。そうなると売れるか売れないか分からないのに大量生産をする、ということになる。大きな金額がかかるし、それ以上に販売できるのが1、2年先になってしまう」とのこと。SAPが動き出す中でそんな課題が見えてきた。

スター育成プログラムでヤフーと接点

そういった動きと並行して、ソニーではスター育成プログラムなどを通じてヤフーとコミュニーケーションを取るようになっていた。リッチラボ代表取締役社長の鈴木辰顕氏も「プログラムの中でもハード、ソフトの面でソニーと何かできないかと話していた」と振り返る。「やる気があるエンジニアがいるのにプロダクトを出せない。また外の人に目利きをしてもらいたい。さらにハードウェアでも、ソフトウェアのようにベータを出して開発するということをしたかった」(小田島氏)「モノを作って売ることはヤフーとしても興味があった。それを決済や金融寄りの立場から何かできないかと検討していた」(ヤフー決済金融カンパニープロデュース本部プロジェクトマネージャーの真鍋拓也氏)

そんな経緯もあって、First Flightではリッチラボがサイト開発を担当(決済にはヤフーのFastPayを使っているそうだ)することとなった。IDから決済、販売、物流についてはヤフーのプラットフォームを活用。ソニー銀行もプロジェクトに参加し、決済まわりの調整に尽力した。

First Flightでは今後も継続的にSAP発のプロダクトを掲載する予定だ。「First FlightはSAPで訓練を終えた『見習いパイロット』がクラウドファンディングを使って初めて飛び立つ場。ここからさまざまなプロダクトが世に出て行けばいい」(小田島氏)

First Flightのプロジェクトメンバー。後列左からソニー銀行の中路宏志氏、ソニーの小田島伸至氏、ヤフーの真鍋拓也氏、リッチラボの鈴木辰顕氏、前列は開発を務めたリッチラボのメンバー

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TechCrunch Japan

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