ソフトバンク本体が出資の独フィンテック企業Wirecardが破産申請、不正会計で債務超過

不正会計が疑われているドイツの決済サービス企業であるWirecard(ワイヤーカード)の信用は完全に失墜した。ドイツ時間6月25日、同社は「切迫した破産と債務超過」のために、ドイツ法人Wirecard AGがミュンヘン地方裁判所に破産手続きを申請すると発表(Wirecardリリース)した。6月30日が支払い期限となっている8億ユーロ(約960億円)と7月1日が期限の5億ユーロ(約600億円)の貸付金について貸し手側との協議がまとまらず、同社は「事業継続能力は保証されない」とする声明も出した(Wirecardリリース)。

同社はまた「暫定破産のもとでの再建を望む」とも述べた。一方で、Wirecard  Bank AGは申請には含まれていない。「BaFin(金融サービス監視当局)はすでにWirecard Bank AGの特別担当を指名した。今後は、Wirecard Bankの全決済の発表プロセスはグループレベルではなく同行内で行われる」。

Wirecardの破綻は、同社の債務返済期限が迫っているという状況に加えて、新型コロナウイルスのパンデミックのために全世界が不況に直面している中でのものだ。パンデミックは多くの産業に連鎖反応を引き起こした。一部の企業は繁盛していても、その他の企業は事業を完全に停止したり、事業を縮小したりしていて、これは決済手数料で稼ぐというビジネスモデルを取っている企業に直接的な影響をもたらす。

ソフトバンクからの出資を受けている上場企業のWirecardは、Wirecard Groupの子会社にも破産手続きを適用すべきか決めかねている。Wirecardはオンラインと店頭での決済サービスをドイツ国外の小売事業者に提供している。直近ではメキシコに子会社(Wirecardリリース)を設立し、そのほか28都市にオフィスを置いている。

上場しているドイツ証券取引所での同社の株価は6月25日、前日の下げに続いて77%近く急落し、時価総額は3億5000万ドル(約375億円)となった。Enron(エンロン)と同じ構図の破綻だ。ソフトバンクが昨年10億ドル(約1070億円)を出資した当時、Wirecardのバリュエーションは190億ドル(約2兆365億円)ほどだった。

破綻のニュースは残念だが驚くものではない。同社監査人のErnst & Youngが21億ドル(約2250億円)もの不明金に気付き、その後、前CEOのMarkus Braun(マークス・ブラウン)氏が詐欺容疑で逮捕されるなど、かなり激動の週となっている。

先週以前から同社に注意を払っていた人なら、ここ数カ月の動きも思い出すかもしれない。KPMGが主導し、4月に公開された別の調査(Wirecardリリース)では「バランスシートを操作したという告発を裏付ける証拠は見つからなかった」と結論づけている。

Wirecardは、大損となっているソフトバンクの数多くの投資案件の1つだ。テックと投資の日本の大企業ソフトバンクは2019年4月にWirecardに10億ドルを投じた(未訳記事)。

トラブル続きのWeWorkやUberを含め、うまくいっていない他の案件と異なり、Wirecardへの投資はビジョンファンドではなく、ソフトバンクグループからのものだった。Uberは、未公開企業だったときにソフトバンクや他の企業から期待されたバリュエーションを上場後も達成できていない。

Wirecardは損失や経営状況をオフセットすることができず、破綻することとなった。同社は数多くの顧客を抱えており、Olympus(オリンパス)、Getty Images(ゲッティ・イメージズ)、 Orange(オレンジ)、KLM(オランダ航空)などが含まれている。

画像クレジット: Christof STACHE/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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