Opaperの創業者であるJoan McIntosh(ジョアン・マッキントッシュ)氏は、大学院在学中にオンラインベーカリーを経営していた。「朝3時、4時に起きて業務用のキッチンに行き、家々を回ってパンを届けたり食料品店に納めたりしていました」。大学院修了後はハイテクの道へ進んだ。データと機械学習プラットフォームのシニアプロダクトマネージャーとしてStreetlight Dataで、次にLacuna Technologiesでキャリアを重ねた。インドネシアで生まれ育った同氏は、東南アジアでソーシャルコマースが台頭したり、InstagramやWhatsAppなどのソーシャルメディアを使って人々が販売をしたりする様子を目にした。そして何年も前に自分がオンラインベーカリーを経営していた頃と変わらずに、何もかも手作業で運営されていることに驚いた。
「すべて、私がやっていた頃と同じです。何年もテック業界で働いた後だけに、当惑しました。なぜ誰もプロセスを改善しないのだろう?なぜ今もこんなにも手作業なんだろう?なぜ支払いをした後で、その証明として銀行振込のスクリーンショットなどを送信するんだろう?」とマッキントッシュ氏は語る。
Streetlight DataとLacunaに在職していた頃、マッキントッシュ氏は価格の最適化、物流とサプライチェーン、そして同氏が「物事を適切な方法で、適切なスピードで、適切なペースで運んでいくためのあれこれ」と説明するプロダクトに携わっていた。そしてソーシャルコマースの販売者にも同じ利便性を提供するためにOpaperを創業した。ソーシャルコマースの販売者がオンラインストアを開設できるMinimum Viable Product(実用最小限の製品)を作った後、同氏はユーザーのオンボーディングを開始し、シードラウンドで予定を超える100万ドル(約1億1500万円)を調達した。
投資したのはPrecursor Ventures、Ratio Ventures、OnDeck、そしてエンジェル投資家で、エンジェル投資家にはGFT VenturesマネージングパートナーのJay Eum(ジェイ・ウム)氏、Bill.com最高エクスペリエンス責任者のBora Chung(ボラ・チャン)氏、Googleに買収されたTenorの創業者で現在はGoogle幹部のFrank Nawabi(フランク・ナワビ)氏が名を連ねる。その後、1年経たずに27人のフルリモートチームとなった。
現在、OpaperはAndroidとiOSの両方で利用でき、公開後わずか4カ月で約100都市、1万9000の販売者に利用されている。
ターゲットとしているのは、たいてい1人か2人で運営していて現時点での販売額が2000〜5000ドル(約23万〜58万円)程度、これを成長させたいがWhatsAppで問い合わせに答えたり注文を取ったりするのに忙しくて成長できずにいる小規模事業者だ。マッキントッシュ氏は次のように語る。「小規模事業者には、商品に集中したりオフラインストアの開設やフランチャイズについて考えたりする時間が必要です。我々は最近、そのような顧客にさらに力を入れています。すでに3店舗を構えている人たちではありません。事業を始め、どうすれば成長できるかと苦闘している人たちです」。
Opaperは特定の分野に的を絞っているわけではないが、同氏によれば利用している事業者の多くは食品や飲料関係で、他社デリバリーアプリの高額な手数料を嫌う事業者もいる。販売者が購入者に対して提示できるように13社の配送業者と提携し、決済に関しては電子ウォレットや銀行振込にも対応している。
購入者にとっては、販売者と何度もメッセージをやり取りして購入したい製品を選んだり決済と配送の方法を調整したりする必要がなくなる。その代わりに、販売者のプロフィールに書かれているOpaperのリンク先に飛べば、他のオンラインストアと同様に商品を買い物カゴに追加できる。しかしOpaperは単にソーシャルメディアで商品を注文しやすくするものではない。販売者が「D2Cのエクスペリエンスを自分のものに」できるのだとマッキントッシュ氏はいう。
Opaperを利用することで販売者は購入者のデータを追跡できるため、これを利用してリエンゲージメントやリターゲティングができる。ソーシャルコマースでの販売の多くが予約注文であるため、今後は販売者向けにサプライチェーンや在庫管理のツールも構築していく予定だ。同氏は「私はベーカリーのオーナーだった頃、クーポンやポイントでリターゲットするために購入者ごとの購入金額を知りたいと思っていました。それは(他社の)マーケットプレイスでは容易に知ることができないのです」と述べた。
画像クレジット:Opaper
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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)