テキスト郵送で有料会員増、ネット学習塾「アオイゼミ」に月額2万7000円の特進クラス

中高生向けのオンライン学習塾「アオイゼミ」が、中学3年生向けの特進クラス「サクラス(SACLASS)」を4月にスタートする。入塾テストに合格した生徒だけを対象に、偏差値65以上の公立高校合格を目指すためのライブ授業を配信する。スマートフォンやPCで使えるアオイゼミと異なり、授業はすべてiPadで配信。専属のチューターが学習管理や相談に応じて、志望校合格を後押しする。


授業は英語と数学の2教科で、アオイゼミで人気の大手学習塾出身の講師が担当。週2日・4講座をリアルタイムに配信し、アーカイブ動画も後日公開する。授業中はリアルタイムに質問を募集し、その場で答える。24時間以内に回答する「質問掲示板」も用意し、サクラスで扱う問題だけでなく、自習中に解けなかった問題にも講師やチューターが回答する。

生徒のバックアップ役となるチューターは東大や早慶、上智などの難関大学の在学生を中心に構成。「やることリスト」を用いて、生徒一人ひとりにあった学習リストを作成する。登録済みのタスクが放置されている場合にはチューターが叱咤激励するなど、家庭教師さながらにマンツーマンで学習を進めていくのだという。

ライブ授業で扱うカリキュラムは、テキスト形式で毎月郵送。ほかにも、老舗出版社「受験研究社」の教材の中から、生徒一人ひとりにあった自習用テキスト・参考書を講師・チューターが選んで届ける。

iPad限定ネット塾の勝算

オンライン学習塾というと、机に座ってPCに向かい、ノートを取りながら勉強するのを想像しがちだが、アオイゼミの受講者の大半はスマホを使っているそうだ。それだけに、なぜ、サクラスはiPadに限定したのか気になるところだ。この点についてサクラスを運営する葵の石井貴基社長は、次のように説明する。

「講義の動画とテキスト、コメントを1画面に表示できる没入感はiPadならでは。生徒と講師・チューターが密なコミュニケーションを取るにも最適なんです。iPadを持っていない生徒は利用できないわけですが、サクラスは入塾料が0円。学習塾の入塾料を考えれば、iPadの購入はネックにならないと思っています。」

「紙」が成長を後押し

石井氏はアオイゼミをスタートした当初から、「既存の学習塾をリプレイスする」と豪語してきたが、サービス開始3年目にして徐々に手応えを感じていると語る。

「これまでは塾に通いつつアオイゼミを使うか、塾に行かずにアオイゼミだけを使うユーザーの2パターンだったんですが、今年に入ってから塾を辞めて、アオイゼミ1本に絞ったという生徒が増えてきました。」

潮目が変わったきっかけは、意外にも「紙」だった。

アオイゼミは昨年12月、有料課金ユーザーに対して、授業のカリキュラムをまとめた冊子を郵送する取り組みをスタート。これまでもカリキュラムはPDFでダウンロード・印刷可能だった。だが、冊子が届くことで“塾っぽさ”が増し、生徒の保護者にもアオイゼミが塾の代わりになると認識され、無料会員から有料会員へ移行するユーザーが増えたのだと石井氏は話す。「これがアオイゼミ流のIoTですよ(笑)」。

実はサービス開始当初からテキスト郵送を考えていたと石井氏は語るが、限られたユーザー数では印刷費が高くつくために二の足を踏んでいた。現在は生徒間の口コミを中心に広がり、アオイゼミの登録ユーザー数は10万人を突破した。「中学生がTwitterで『アオイゼミで勉強だん』みたいにつぶやくんです。そうすると『え? なにアオイゼミって』と友達間で広がっている感じ」。

アオイゼミが生徒の口コミで広がったのに対して、サクラスがターゲットにするのは保護者だ。まずはアオイゼミ会員の成績上位層にアプローチするとともに、Facebook広告で集客するという。

「アオイゼミを3年間やってきて、第1・2志望校の合格率は99%に到達しました。これまでは、いわば『学習塾に追いつけ』というフェイズ。最難関校コースのサクラスは月額2万7000円とネットサービスではかなり高額ですが、通常の学習塾以上のサポート体制と、カリスマ講師のハイレベル授業によって、学習塾を本気で超えていきたいです。」


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。