テックを駆使して世界規模でのサンゴ礁回復を目指すCoral Vitaが2億円調達

世界中のサンゴ礁の生存が危ぶまれている。そしてサンゴ礁に頼っている何百万という人々、そして何十億ドル(何千億円)という事業も、そうした重要なエコシステムを失うという根本的な悲劇を抱え、危機にさらされている。Coral Vita(コーラルビタ)はサンゴ礁回復のテクニックと、サンゴ礁回復にかかる経済の両方を現代化することを目指していて、同社は本格的に事業を展開すべくシードラウンドで200万ドル(約2億1000万円)を調達した。

筆者は2019年後半にCoral Vitaの創業者Gator Halpern(ゲイター・ハルパーン)氏にSustainable Ocean Alliance’s Accelerator at Sea(未訳記事)で出会い、記事を書いた。当時、オペレーションはずっと小さく、バハマにあるチームのサンゴ養殖場を壊滅させたハリケーン・ドリアンの影響を受けていた。そしてその後起きたパンデミックは当然のことながら、多くの人の計画同様にチームの2020年の計画を台無しにした。

しかし昨年の全体的な混乱にかかわらず、Coral Vitaは大きくなって、そしてさらにより良いスタートアップになって戻ってきた。この分野における新しいグローバルモデルを示そうという意気込みでなんとか事業を開始し、最終的に200万ドルのラウンドをクローズした。

「我々の試験養殖場をただ試験レベルに再建するのではなく、次のレベルへと進めることにしました。サンゴ礁復興経済をジャンプスタートさせる機会だと信じています」と共同創業者でサンゴ礁責任者のSam Teicher(サム・タイシャー)氏は述べた。

現代のサンゴ礁復興がどのようなものなのか把握するために、海岸近くにある水中庭園を想像してほしい。ロープや構造物が浮いていて、そこではサンゴの断片が育っている。そうした断片は採取され、若いサンゴを必要としているエリアに移植される。

画像クレジット:Coral Vita

「しかし問題の規模を考えたとき、水中施設だけに頼ることはできません。世界のサンゴ礁の半分は死んでいて、残り半分の90%も30年以内に死滅すると予想されています」と同氏は話した。

Coral Vitaの計画は、海での養殖から陸上施設へ移行させるというものだ。陸上施設では、よりサンゴの増殖を拡大させ生き残らせることができる。サンゴの成長をスピードアップして生存率を高めるために高度なテクニックを使っている。そうしたテクニックの1つがサンゴ復元に取り組んでいるコミュニティが開発したサンゴのマイクロフラジメンティングだ。この手法ではサンゴをバラバラにする。小さなピースは全体として50倍速く成長できる。陸上で行うことで、サンゴの性質をより生かすことができる。

「我々はきれいな海水をポンプで注ぐタンクを陸上に設置しました。最大の特徴はコンディションを管理できることです」とタイシャー氏は説明した。「40〜50年後のグランド・バハマ島の海岸がどうなっているか考えるとき、そうしたコンディションに対してサンゴが丈夫になっているとシミュレーションできます。正直なところ、海洋ベースの施設の方がコストはずいぶん安いのですが、何百万、何十億という世界中のサンゴを育てる必要があることを考えると、陸上施設はより現実的なものに感じられます。展開規模が大きくなるとコストは下がります。海洋ベースの施設のコストはサンゴ1つあたり30〜40ドル(約3100〜4100円)です。100あるいは1000のタンクを展開するとコストは10ドル(約1030円)に下げられます」

左の写真はバハマの観光当局者(左側)がサム・タイシャー氏の説明を聞いているところ。右の写真はパンデミック前に創業者ゲイター・ハルパーン氏(中央)が話しているところ(画像クレジット:Coral Vita)

現在は、実際に展開している規模だけでなく、収入源も限られている。無尽蔵のプライベートキャッシュの代わりに政府の資金に頼っている。Coral Vitaはサプライと収入を増やして多様化することでそうした状態を変えることを望んでいる。

世界が元に戻り始めたら、再び人々がサンゴ養殖場に来て、孵化や自然の生態を観察するエコツーリズムに頼れるようになることをCoral Vitaは願っている。エコツーリズムは、地元の人を含めた広範におよぶ収入とプロジェクトのバランスをとるのに役立つ(そして同社が拠点を置く小さなコミュニティと同社をつなげる)。

まだ自由ままならない状況ではあるが、同社は機会を利用して「サンゴ受け入れ」キャンペーンを拡大することで遠距離からローカルオペレーションをサポートしている。絶滅寸前の動物や荒廃した森のために活動したことのある人ならそれがどういう仕組みになっているか知っているだろうが、2021年初めまでCoral Vitaは積極的にそのコンセプトを追求してこなかった。

「我々は補助金や支援金なしにこの分野を変革しようとしています。サンゴ礁のエコシステムに頼っている顧客に販売しています」とタイシャー氏は話した。「もしあなたがスキューバダイビングやシュノーケルを楽しむ観光客に頼るホテルの経営者、あるいは海岸近くにある不動産のオーナー、保険会社や政府、開発銀行、クルーズ会社の人間だったら、あなたが頼っているサンゴ礁を回復させるためにCoral Vitaを雇うことができます」。

もちろん、もし政府や産業界がこうした取り組むべきサンゴ礁の問題を体制的に無視してこなければ、商業的に重要なサンゴ礁が優先されるという表面的に報酬目当てのビジネスモデルは必要なものではない。民間資金によるプロジェクトは基本的にはさほど腐敗していないが、この手の回復取り組みは非営利機関と政府機関の領域とみなされる傾向にある。Coral Vitaのアプローチを直接的で政府の仲介を切り離すものと考える人もいるだろう。

これは、適切な保全基金が関係者によって集められれば5年、10年以内ではなく今すぐ始める必要がある世界的に重要な取り組みだ。サンゴ礁の状態が悪化しているいま、一刻を争う事態であり、なすべきことをすばやく大規模展開するのに民間資金が唯一の現実的なオプションだ。加えて、コストが下がれば、プロジェクトの資金集めもしやすくなる。

画像クレジット:Coral Vita

「その上、イノベーションを起こす能力があります」とタイシャー氏は付け加えた。「今回の資金調達で何をしようとしているかというと、取り組みで活用している3Dプリントやロボティクスを含む科学やエンジニアリングの向上です。サンゴ礁回復のためだけでなく保護のためのR&Dプロジェクトも立ち上げます」。

同氏は業界を農業と比較しながら、ロボティクスが現在変革的な効果をもたらしている自動車業界で自動化を押し進めた人物でありGoogle Xの共同創業者でCoral Vitaの初期アドバイザーかつ投資家のTom Chi(トム・チー)氏に言及した。

必要とされるところにサンゴを運ぶのにかかるコストとリードタイムを削減し、大規模展開できる陸上養殖の効果を証明することで世界的に存在感を示すことにつながる。

「適応について、そしてどのように資金をまかなうかを再考する時期にきています」とタイシャー氏は話した。「2カ年計画では他の国々でより多くの養殖場を立ち上げます。究極的には我々はすべての国にサンゴ礁があるようにしたいと考えていて、これまでで最大のサンゴ会社になるでしょう」。

もちろん多くの人と同じように、同氏は回復作業がまずもって不要であることが好ましいと考えている。サンゴ礁を殺すような行動を止めれば、そちらの方が断然役立つ。だが、グローバル規模の多くの問題と同様、そうした行動を止めることは問題解消を意味しない。サンゴ養殖はサンゴ礁回復のために不可欠であり、自然がバランスを取り戻すのをサポートするために、少なくともバランス状態に近づくために、保全行為と資金が必要とされる。

今回の200万ドルのラウンドは環境を専門とするBuilders Collectiveがリードし、Apollo ProjectsのMax Altman(マックス・アルトマン)氏、野球のMax and Erica Scherzer(マックス・シャーザーとエリカ・シャーザー)夫妻が参加した。初期投資家にはSustainable Ocean Alliance、前述のトム・チー氏、Adam Draper(アダム・ドレイパー)氏、イェール大学、Sven and Kristin Lindblad(スヴェン・リンドブラドとクリスティン・リンドブラド)夫妻が名を連ねる。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Coral Vitaサンゴ礁資金調達

画像クレジット:Coral Vita

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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