デジタル法廷・調停プラットフォームのImmediationが、米国や欧州への事業拡大を目指す

新型コロナウイルスの影響を受け、法曹界では主にビデオ会議と電子メールを組み合わせたリモートワークでの対処を余儀なくされた。メルボルンで設立されたImmediation(イメディエーション)という会社は、デジタル法廷と調停ツールを用いた専用ソリューションを提供しており、オーストラリアの連邦裁判所やニュージーランドの政府機関で採用されている。今回、360万豪ドル(約3億500万円)の資金を調達した同社は、米国や欧州市場に向けて事業の拡大を図っている。投資家には、Thorney Investment Group(ソーニー・インベストメント・グループ)や、同社の創業者で会長のAlex Waislitz(アレックス・ワイスリッツ)氏などが名を連ねている。

2017年に設立され、2019年にサービスを開始したImmediationのユーザーには、オーストラリアの連邦裁判所、ビクトリア州民事行政裁判所(VCAT)、ニュージーランドの法務省、Sport New Zealand(スポーツ・ニュージーランド)Domain Name Commission NZ(ドメインネーム・コミッションNZ)などの機関が含まれている。同スタートアップによると、過去12カ月の間に、収益は前年比6倍、ユーザー数は2000%と、急成長を遂げているという。Immediationは現在、5カ国に約40名の従業員と、100名以上の調停者や仲裁者を擁している。今回の資金調達により、Immediationの調達額は1000万豪ドル(約8億5000万円)に達した。

オーストラリアとニュージーランドに加えて、Immediationは東南アジアの市場にもユーザーを抱えている。今後12カ月間は、米国と欧州の市場での成長に注力する予定だ。

Immediationを調停プラットフォーム(現在は法律事務所、法廷、解決機関のサポートも行っている)として起ち上げる以前に、創業者でマネージングディレクターを務めるLaura Keily(ラウラ・ケイリー)氏は、20年間にわたって企業弁護士や法廷弁護士として働いていた。彼女がオンラインの調停プラットフォームを作ろうと思ったのは「人々が司法に有効にアクセスできず、締め出されているのを目の当たりにしたから」だという。「法制度は複雑で、時間と費用がかかります。古いルールやプロセスに支配される旧態依然としたシステムで、拡張性がなく、非効率的です」と、ケイリー氏はTechCrunchにメールで語っている。

Immediationのクライアントの多くは、同社のプラットフォームを利用する前には、調停センターや裁判所で対面式のミーティングを行うという以外の選択肢はなかった。Immediationがそのプラットフォームを公開したのは、新型コロナウイルスの感染流行が発生する数カ月前、2019年9月のことだった。

「新型コロナウイルスの発生はターニングポイントとなりました」と、ケイリー氏はいう。「各業界が一夜にしてオンラインへの移行を余儀なくされる中、私たちのチームは迅速に方向転換して、法律業界の急を要する懸念に対処し、シームレスなオンライン移行のための青写真を提供したのです」。

2020年の間に、Immediationのユーザー数は2200%も増加した。その中には、数百の法科大学院が参加する初のオンライン開催となったWillem C. Vis International Commercial Arbitration Moot(ウィレム.C 模擬国際商事仲裁大会)の5日間にわたる500人規模の審理も含まれる。

Immediation創業者でマネージングディレクターのラウラ・ケイリー氏

Immediationは、物理的な法廷、調停施設、弁護士事務所のクライアントフロア、紛争解決環境を再現するために、弁護士によって作られたとケイリー氏はいう。そのツールには、審理の記録、文書の共有と管理、契約書の共同作成と締結、手続き中の弁護士とクライアント間の機密通信、当事者ごとに設定される安全な個室などの機能が含まれている。司法書士や調停委員は、個室内の参加者を管理できるため、必要に応じて関係者を移動させたり、退出させたりすることができる。

弁護士とクライアントの間の機密性を維持することは不可欠だ。Immediationは、安全なチャットルームとパーティールームを構築しており「関係者以外は誰もそのメッセージを見ることも、パーティールームに入ることもできないように設計されているので、クライアントと弁護士のチームは、訴訟手続きが本格化しても、自分たちのチーム間で完全に機密なコミュニケーションをとることができます」と、ケイリー氏は語っている。

Immediationは今回、Auctus Investment Group(アクタス・インベストメント・グループ)およびTamara Credit Partners(タマラ・クレジット・パートナーズ)の会長であるChristine Christian(クリスティーン・クリスチャン)氏を新しい会長に、Rachael Neumann(レイチェル・ノイマン)氏とGreg Wildisen(ウィルディーセン)氏を取締役に任命したことも発表した。同社はまた、Afterpay(アフターペイ)の会長であるElena Rubin(エレナ・ルビン)氏と、Rampersand VC(ランパサンド)の設立パートナーであるJim Cassidy(ジム・キャシディ)氏を諮問委員会に加えた。

画像クレジット:ARMMY PICCA / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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