もしあなたがパンデミック直前の2020年2月に起業してスタートアップを立ち上げたのなら、ビジネス上の究極の悪夢を経験していると感じたかもしれない。しかし、もし自分の会社がサプライチェーンビジネスを安定させる役割を果たすものであれば、適切なタイミングで軌道に乗ったかもしれない。マイアミを拠点とするスタートアップSmartHop(スマートホップ)のストーリーも同様だ。同社は複数の州にわたって荷物を運ぶ長距離トラック運転手のルートをより効率的で実入りの良いものにし、運転手の管理の煩わしさを取り除くAIアプリを手がけている。
SmartHopは米国時間2月10日、シリーズAラウンドで1200万ドル(約12億7000万円)を調達し、これまでの資金調達総額が1650万ドル(約17億4000万円)となることを発表した。ラウンドをリードしたのはUnion Square Ventures(ユニオンスマートベンチャーズ)で、これまでにStripe(ストライプ)、Twitter(ツイッター)、Coinbase(コインベース)、Etsy(エッツィー)、MeetUp(ミートアップ)、SkillShare(スキルシェア)、Duolingo(デュオリンゴ)などに投資している。
SmartHopは予測できない部分が多い複雑な問題を解決し、シンプルなソリューションを提供する。市場のギャップを理解するには、長距離トラック運転手が直面する障害を把握する必要がある。Guillermo Garcia(ギレルモ・ガルシア)氏自身も元トラック運転手であり(大学在学中に母国ベネズエラでペットフード配達の運転手をしており、自身のビジネスを500人規模の運送会社に拡大した)、運送業界の抱える課題や複雑さについて熟知している。
SmartHopのCEO兼共同設立者であるギレルモ・ガルシア氏は最初のトラック運送会社を始めた時の経験を「私はカラカスの実家に住んでいて、両親にガレージを空にするよう依頼しました。それが私の最初の配送センターでした」と語った。また、同氏は「トラック市場は株式市場のように動きます」と述べ、それは絶えず変化しており予測不可能だと説明した。
米国トラック協会が2019年に行った調査によると、トラック運送業界は7917億ドル(約841兆円)規模の産業で、米国の貨物運送費の80.4%を占めている。また、トラック運送事業者の91%は中小企業であり、保有台数は6台足らずである。その多くは個人トラック運送業者だ。従来、荷物を受け取るためには、トラック運転手は約1万5000の異なるブローカーのアプリやウェブサイトを探し回らなければならなかった。それは、まったく調整されておらず、非効率的で、自由放任主義的なアプローチであったため、ドライバーは月々の収入を予測することができない他、数々の問題を抱えていた。
SmartHopはこうしたドライバーを支援する。例えばアトランタに住んでいるボブが1台のトラックを所有しているとしよう。個人トラック運送業者である。彼にはシアトルまで運ぶ荷物があり、そこに着くまでは数日かかる。財政的に見て、ボブが途中で他にどのような貨物を引き受けることができるか、または、シアトルを折り返し地点にすべきかを把握せずに出発するのはあまり理に適っていない。もしかしたら、最近はシアトル発の貨物が少なく、シカゴ発の貨物が多くなっているかもしれない。ボブはこうしたことを知る術がない。
SmartHopが登場する前は、ボブはブローカーに電話をかけて取引をする必要があった。こうした仕事のほとんどは移動中に行われるもので、ボブは次の2週間の仕事、ひいては人生の見通しがわからない状態だった。
SmartHopを使うと、ボブは自分のトラックの容量、自分が運転したくない都市などの情報を入力することができ、彼の利益と移動時間を最適化するための荷物を推薦してくれる。自動車の運転中にWazeを使用していると、スターバックスの近くを通りかかった際に立ち寄るかどうかたずねてくれる。承認すれば、あとはWazeが対応してくれる。SmartHopはそのトラック版だ。
「通行料金や橋、交通量が多いため、ニューヨーク市を運転したくないというトラック運転手もいます。そうした運転手は売上にかかわらず、荷物をピックアップしません」とガルシア氏はいう。
しかし、完全に自動化させたければ、SmartHopは自動的に荷物の引き受けを予約します。ですから、運転とトラックの管理だけをしていればいいのです、とガルシア氏は語る。
トラック運転手がSmartHopを使うたびに、運転手の好みを学習し、より良い提案や予約をするようになる。
SmartHopは総売上の3%の手数料を請求する。「私たちのインセンティブは極めて整合性がとれており、ユーザーが収益を上げれば当社も収益を得ますが、ユーザーが休暇を取る日には何も請求しません」とガルシア氏はいう。
Union Square Venturesでマネージングパートナーを務めるRebecca Kaden(レベッカ・ケイデン)氏は「当社はネットワークの構築やアクセスの拡大に技術を活用する事業に注力しています。私たちはギレルモ氏とSmartHopチームと出会えたことを非常にうれしく思っています。同社の事業はまさに私たちがフォーカスしているものだからです。ソフトウェアを活用して、個人トラック運送業者がビジネスを最適化し、圧倒的な数のプレイヤーに対して競合力を持つことを可能にしています」と述べている。
マイアミに拠点を置くロジスティクス企業のRyder(ライダー)も、新しいベンチャー部門RyderVentures(ライダーベンチャーズ)を通じてこのラウンドに参加した。SmartHopは最初の投資先となる。SmartHopのシードラウンドから参加しているEqual Ventures(イコールベンチャーズ)とGreycroft(グレイクロフト)も出資している。
Ryderのバイスプレジデントであり、CMOおよび新製品イノベーションの責任者を務めるKaren Jones(カレン・ジョーンズ)氏は「多くのスタートアップは、優れたテクノロジーを備えていますが、テストする人がいません。実際にソフトウェアを使用しているユーザーがいない場合、そのソフトウェアは十分な効果を発揮できません」と語る。RyderVenturesの投資に先立ち、RyderはSmartHopと提携し、27万5000台の自社トラックで製品をテストしている。
2019年のNew York City Techstarsコホートの一員であった同社では、現在50人のフルタイム従業員と100台のトラックでこの製品を使用している。トラック1台あたり平均月1万ドル(約106万円)から1万5000ドル(約157万円)の収益を上げている。
最新のラウンドで調達した資金は、組み込み金融製品だけでなく製品開発にも向けられる。大企業と異なり、小さなトラック運送会社は燃料や保険の料金を交渉する力を持っていないが、SmartHopの運転者数でそれを変えることができる。さらに、売掛金の収納代行を提供するため、運転者は支払い期限が発行日から45日以内の請求書を発行し、24時間以内にSmartHopから支払いを受けることができる。「私たちは大量のデータを持っているため、よりスマートに、運転手への料金の支払いを代行できるのです」とガルシア氏は語っている。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:SmartHop、物流、資金調達
画像クレジット:SmartHop
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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Dragonfly)